魔法学校防衛戦(前編)
色々含んだ前哨戦
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魔法学校から山一つ超えた先。
とある村に三人連れの一つのPTがあった。
一人は長剣を背中に携えた剣士。
一人は神官服を身に着けた僧侶。
一人は普段着を着た見るからに普通の一般人。
しかし、周囲に放つ雰囲気は恐ろしく希薄なものであり、よほど注意して見ていないと
すぐに見失ってしまいそうな、そんな雰囲気の三人組みである。
「・・・ん?あらら、シューク君とチロさんが学校を出たみたいだね」
一般人風の旅人が言う。
「え?・・・あら、ほんと。先制攻撃でもかけるのかしら?」
剣士が答える。
「これは、時間稼ぎと思われますね。しるくぅさん達が動いていないみたいですから」
僧侶が意見を述べる。
剣士の名は蒼き殺戮。この世界最強の剣士にしてただ一人、Sword Masterの称号を名乗ることを許された人物である。
僧侶の名は晋の字。Star Light Forcesの唯一の生き残りにしてKnight of Priestと呼ばれしもの。
そして、一般人にしか見えないこの人物こそ、HiPriestessと呼ばれた伝説の僧侶、遥風である。
「なるほど、フィリアさんも大胆な策を考えるものですね」
「いや、どっちかというとこれはしるくぅさんでしょう」
「だね。フィリアさんじゃ、思いついても実行は無理でしょう。最悪シューク君を失うし・・・
ちょっと心配だな〜水晶で見てみよっか」
空中に何かの魔方陣を描いたと思った次の瞬間には机と三人分のいす、それにお茶のセットと水晶玉が現れていた。
「さて、久しぶりに使うからうまく写れば良いけどね〜」
次第に水晶に映し出された光景・・・そこにはシュークと敵の将軍アロンが対峙している姿が映し出されたのだった。
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「ふふ、そうか、お前も守るものを見つけたのか。あの時の子供が、立派になったものだ」
闇の騎士アロンが頼もしそうに、そして、懐かしいものを見るように目の前の騎士を見つめる。
アロンの視線の先にいる騎士はしっかりと剣を、盾を握り締め自分の背後にいる人物を守っていた。
「なぜ僕のことを知っている?」
「ふふふ、知っている。私は君の事を知っているとも。なぜなら・・・ふ、無駄話が過ぎたな。さあ!行くぞ少年!!守りに徹しているだけでは私を倒すことはできんぞ!」
アロンの重い一撃をかろうじて盾で防ぐ。
彼がアロンの一撃を防いでいるのではなく、防ぎやすいような一撃をわざと放っているだけであった。
アロンはまだ遊んでいる。その事を彼も認識してはいる。
「く、重い」
それでも、必死にその攻撃を防ぐ騎士。
「はっはっは。さあどうする少年!」
「・・・お待たせシューク。いくよ!ブリザード!」
騎士の後ろで詠唱が完了した魔法が展開する。
広域範囲魔法「ブリザード」である。
周囲の敵を一気に殲滅することが出来る水系の上位魔法である。
「ははは。涼しい風が吹いておるわ!私に魔法は効かん!」
「承知の上さ、狙いは・・・貴方じゃない!」
戦場の中心に立つアロンにはまったく効果を及ぼしてはいないが、周辺にいる敵には相当な被害が出たようである。元々シュークは時間稼ぎと敵をまとめる囮役。
その実態は彼が守っていた人物、チロによる広域範囲魔法により敵の戦力を減らすのが目的であった。
「味なまねを・・・」
「僕には貴方を倒す力は無い。でも時間を稼ぐことなら出来る。そして、それが僕の役目だ!チロ!どんどん打ち込んで!ここで少しでも戦力を減らしておけば学校の防衛が楽になるからね」
「うん。しっかり守ってよね」
「当然!僕のチロには誰も近づけさせないさ!」
シュークの目には自信が溢れていた。
しっかりとPT内での自分の役目を果たしているという自信。
大事な人を守れている自信
それらの自信に溢れている。
「なかなか味なまねを・・・!!」
アロンの猛攻がシュークに襲い掛かる。
先ほどまでのお遊びの一撃ではない、真剣な一撃がシュークを襲う!
「くっ!」
多大なダメージを受けるものの、大量に用意してきたポーションを使用することでその攻撃をしのぎ切る事に成功した。
シュークがポーションを使いまくりアロンを引き付け、その間にチロが周囲の敵を排除する。
まさに、ぎりぎりの作戦であった。
アロンがチロを狙えばそれで全ては水泡に帰す作戦ではあったが、アロンはシュークを倒すことにこだわっていた。
フィリアの話でアロンとシュークの関係を聞いていたしるくぅはそうなるであろうと確信し、この作戦を立案。
結果、作戦はしるくぅ立てた通りに展開されていた。
「なかなか、しぶといな少年。だが!これで終わりだ!!」
今度こそアロンが渾身の一撃を放ってくる。
これを喰らったらさすがにシュークといえど持たないだろう。
「やば!チロ!」
後ろにいるチロに声をかけるとシューク、チロ、両名の姿が一瞬でその場所から消えていた。
アロンの一撃は大地に打ち下ろされ、その威力で大地に穴が開くほどではあったが、その一撃がシュークを捕らえることは出来なかったのである。
「逃がしたか、こちらの被害は・・・半分の兵力がやられたか。あの少年・・・立派になったものだ」
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そんなシュークとチロ、そして、アロンの様子を丘のうえから一部始終見ていた人物がいる。
「時間稼ぎ?なるほど、我らの進攻を察知していた人物がいるのね。さすが遥風といった所かしら
でも、彼女にしては、作戦がお粗末なような気がするわね・・・なにかあるのかしら?」
彼女こそ、闇の魔法士ラーナであった。
彼女の任務はアロンが敗れそうな時に彼を救い出し、無事に帰還することである。
「さて、どうしましょうね。アロンの軍は半壊。しかもこの先には遥風と蒼き殺戮のツートップ・・・
少々きついかしら」
しばし考え込む。
(魔法学校に彼女達の気配は無い・・・それに、この作戦はどうにも彼女のものとは違う・・・)
丘の向こうにある魔法学校から感じる気配に彼女、遥風の気配を感じ取ることが出来ない。
また、今回の敵の策に違和感を感じてしまう。
いつもの、遥風が取る策とはどうしても違うように思えてならないのであった。
(別行動をしていると仮定して・・・彼女達の狙いは・・・)
実際の所、遥風は魔法学校にはいないのだが、ラーナがそれを知る為には情報が少なすぎていた。
(今のところわからないわね。当面の問題はアロンの方・・・彼の力ならあの兵力でも魔法学校を落とすのに支障は無いと思うけど・・・もうしばらく様子をみましょうか)
考えがとりあえずはまとまったラーナはふっとその場から消える。
(とりあえず、アロンのお手並み拝見ね)
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戦場から無事に帰還したシュークとチロの二人は、作戦のせいかをしるくぅに報告していた。
「・・・といった状況です。半分は倒したと思うけど。敵将アロンの攻撃力なら、たいして損害になってないかも」
説明を終えたチロが感想を述べる。
シュークも同意権のようでうんうんと頷く。
「二人ともご苦労様。敵は明日にもここにやってくるだろうからそれまでゆっくり休んで頂戴」
「は〜い。じゃ部屋に戻るね」
二人が会議室を退室していく。
それを見送ったしるくぅがふぅ〜と安堵のため息を漏らす。
二人が無事に帰ってきてくれてほっとしたようである。
(自分が立てた作戦とはいえ、やっぱり無茶だったよね・・・でも、これしかここを守ることが出来ない)
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時間は少し戻って襲撃二日前。
会議室に集まったエンジュの面々に対してしるくぅが作戦の説明をしていた場面に戻る。
「・・・という訳。この作戦のメインの説明をするわ。ここが上手くいかないと後が全て失敗する」
全員に緊張が走る。
「まず、シューク君とチロの二人で敵将アロンの足を止めると共に、敵戦力を削る」
シュークがはっとする。
まさか、自分に声がかかるとは思ってもいなかった。
「僕にそんな大役は・・・」
最前線・・・
しかも、相対するのは敵の四天王の一人。
シュークには自信が無かった。
ミスすれば、戦局全体が覆る。
しかも、自分だけでは無くチロまで巻き込む形になってしまう。
その責任にシュークは耐えられそうになかった。
「・・・シューク」
「ごめんチロ。今回は・・・僕、自信ないんだ」
「シューク、みんなが自信を持ってるわけでは無いのよ?貴方なら出来る。私はそう考えてこの配置を選んだの
貴方なら出来るわ」
「・・・はい」
この場はうなずくことしか出来ない。
その後、作戦の説明は続けられたがシュークの耳には何も聞こえていなかった。
(僕にあんな大役は・・・無理だよ・・・)
会議が終わった後も上の空でふわふわ〜と会議室を後にするのであった。
「なあ、ゆら、シュー君は大丈夫かな?」
「・・・でも、彼じゃないとアロンを抑えきれないっていうのがリリの意見だからね〜。そうなんでしょ?」
「うん。シューク君じゃないと抑えきれない。それに・・・アロンは・・・」
急にだんまりになるフィリア。
何かあると思いつつもあえて深くは聞こうとしないしるくぅとポポエット。
三人の間にわずかに沈黙が流れた。
「きっと何とかなるわよ。所でポポ。これから少し時間ある?」
「ん?ああ、かまわないけど?」
「じゃ、ちょっと付き合って頂戴」
「わかった。じゃあリリちゃん。今日はゆっくり休みなよ?」
「はい、おやすみなさい」
元気にあいさつを交わし、フィリアが自室へと戻っていった。
「さて、ゆら・・・話ってのはなんだい?」
「・・・・」
「・・・・ゆら?」
うつむいたまま反応が無い。
よく見ると彼女の小さな肩は小刻みに震えていた。
「・・・私、怖い・・・みんなの期待がわかる。でも、私は・・・私はそんな器じゃないのよ・・・」
「ゆら・・・」
「リリの全幅の信頼に答えられると思う?蒼ちゃんや晋君の期待に答えられると思う?世界を守るギルドのリーダなんて・・・私には無理よ・・・私にそんなのは」
「・・・・」
「そう・・・そうだよ。蒼ちゃんにマスターを変わってもらおうよ。蒼ちゃん先代のマスターだったって言うし。きっとその方が良いと思う」
「・・・俺はゆらなら大丈夫だと思う」
「どうして?私には蒼ちゃんほどの力はないよ」
「確かに蒼さんは強いよ。一対一なら勝てる人はいないだろうね」
「・・・うん」
「でも、蒼さんには無い強さをゆらは持ってるじゃないか」
「・・・そんな力、私には無いよ」
「あるさ、みんなをまとめる力。ゆらの元に集う力。確かに個人個人では蒼さんには適わない。
でも、みんなが協力すれば蒼さんにだって勝てる。どんな強力な相手にだって勝てるはずだよ」
「・・・・」
「きっと、蒼さんがマスターをやめた理由ってそこにあると思う。ほら、蒼さん単独行動好きだしね
だから、蒼さんではギルドをまとめることが出来なかったんだよ。一人が強くても、大局的にみたら
やっぱり団体の方が勝つ事の方が多いだろ?まあ、例外はいくらでもあるけどね」
「ぽぽ・・・」
「どうよ?俺かっこいいだろう?」
(・・・うん。かっこいいよ)
「?ゆら〜聞こえないぞ〜もっとはっきり言ってくれても良いんだぞ?」
「ふふ、ええ。かっこいいわよ。ぽぽ」
「だろ?さて、俺達も休もうぜ、明日も早いんだしな」
「ねえ、今日は一緒にいて欲しいな。きっと一人じゃ眠れそうに無いわ」
「ゆら・・・」
寄り添うように二人は同じ部屋に向かっていくのだった。
・
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・
会議室を出た後、何処をどう歩いたか覚えていない。
だが、気が付くととある部屋の前に来ており、右手が勝手にその扉をノックしていた。
「はい?」
中から返事があり、がちゃっとドアが開かれる。
そこに立っていたのはシュークが自分よりも大事だと思える人物。チロであった。
「シューク?どうしたのこんな時間に。明日は大変なんだし、休まないと」
そう言うチロもノックにすぐ反応が出来たところを見ると上手く眠れていないようであるが。
「あ、その、ごめんよ・・・」
無意識にここまで来て、無意識にノックをしてしまったため、言葉が出ない。
部屋の前でうろたえるシュークが妙にかわいかった。
そんな姿を初めてみたな〜とチロが部屋の入り口でクスッと笑う。
「ねえ、シューク、少し散歩しない?」
うろたえるシュークの手を引いて二人は魔法学校の敷地内をとことこと歩く。
「最初に出会ったのはこの学校で・・・私が杖から落ちちゃったときだよね」
「そうだったね。あの時は変なのが振ってきたな〜ってびっくりしたよ」
「変なのとは失礼な!」
「はは、ごめん。でも、あれはびっくりしたよ。あんな場所で人が振ってくるなんて思わなかったからね」
最初に出会った場所をするりと通り過ぎる。
学校内の風景はあの時とまったく変わっていない。
打ち込みの練習をした木も以前通っていた時と同じ場所に同じように立っていた。
「懐かしいな〜この木・・・この木を相手に練習したっけ」
懐かしそうに木を見つめるシュークをチロは黙って見つめていた。
その時、シュークは自分の背後から殺気をまとった何かが近づいてくるのを感じ取った。
声をだすより早くチロを抱え横に飛ぶ。
と同時にシュークが今までいた地点に剣が振り下ろされていた。
ボクっという木と木がぶつかる音がする。
よく見ると振り下ろされた剣は練習用に使う木刀。
それを振り下ろした人物は、
「今回はよけることが出来たか。成長したなシューク」
魔法学校の教師であるフェイクスであった。
「フェイクス先生!冗談はやめてくださいよ」
「ははは、お前が学生の時にも試しただろうが?まあ、あの時はばっちり決まって保健室行きだったがな」
「・・・なるほど、あの時の犯人は先生だったんですね」
長年の疑問が解けたと同時に積年の恨みを晴らそうと近くに転がっている木刀をシュークが掴む。
「お!やる気か?先生に対して攻撃意思を向けるとは何事か!」
「うるさい!卒業したら先生も生徒もあるか〜!」
カンカンと打ち合うこと数十回。
「腕を上げたなシューク!」
「先生の腕が落ちたんじゃないの?僕はぜんぜん余裕だよ?」
「言ってくれる・・・」
そう、確かにシュークには余裕があった。
学生の時にはまったくはが立たない相手であったのだが・・・
(確実に僕は強くなってる!)
「まいったまいった。降参だ。強くなったなシューク」
降参とばかりに両手を上に上げフェイクスは笑い出した。
「いや、ほんとに強くなった。君の隣にいる彼女のおかげかね〜」
「な!そ、そんなんじゃ」
「え〜!!違うの〜?」
「い、いや、違うって事も無いんだけど」
「若いとは良いことだ。だが、守るものがいる人間は強くなれる。大事にしてやれ。さて、私は戻るとしよう」
くるりと振り返り教師専用の寮の方へとすたすた歩き去っていくフェイクスを見送る。
(あの人は何しにきたんだ??)
と、そんな疑問をいだくシュークの横でチロが意味ありげに微笑んでいる。
「??何が楽しいの?」
「だって、さっきまでの思いつめた表情がきれいに無くなってるんだもん。安心したよ」
そういえば。
とさっきまでの思いつめていた感じが綺麗に消えていた。
(先生・・・まさかこのために?卒業した後でもちゃんと見てくれてるんだな〜)
心の中でフェイクスに感謝し、笑顔のままチロに向き合う。
「僕、やってみるよ。力を貸してくれるかい?」
もちろん!と笑顔で答えるチロであった。
次の日・・・決戦前日・・・
「じゃ、行ってきます。学校の方よろしくお願いしますね」
「無理しちゃだめだからね?危ないと思ったら帰還スクロールを使って戻るのよ」
「わかってます。僕だってこんな所で死ぬ気は無いですよ」
笑顔で二人を見送るしるくぅ達。
「絶対、無事で戻ってきてね」
「ゆら、大丈夫だよ。それに、俺達もやるべきことがあるだろう?」
「ええ、そうね」
二人の無事を祈りながら、しるくぅは自分の作業に向かうのであった。
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そして、時間は戻って現在。
結界の強化作業を終えたしるくぅとポポエットが一休みしてる。
ポポエットの指揮の元、僧侶クラスの全員を総動員して結界の強化を行い無事に強化することが出来た。
出来たのだが、それよりも遥風が個人で張った結界の方が強力だったのは何とも皮肉な話である。
「しかし、しんどいな〜・・・まだ未熟な連中の集まりだといってもあの数の魔力を束ねても遥風さん
一人に及ばないってのは悔しいよな〜」
同じ僧侶であるポポエットは改めて遥風の力を知るのであった。
「まったくよね〜。あの人たちが入ればこんな苦労しないでもすんだのに」
ふぅ〜としるくぅもため息を一つ吐く。
しかし、愚痴を言いながらも二人は満足そうにニコニコしている。
何かをやり遂げた満足感が二人にはあった。
「でも、これで安心するのは早いよね。明日には敵がくるんだし」
「ああ、次の作業にかかるとしよう」
そう、敵は刻一刻と迫りつつある。
しるくぅとポポエットは次の作業に移る。
迫り来る敵からこの学校を守る為に・・・
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・
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その頃、学校の屋上ではフィリアが敵の迫る丘の向こうを見つめていた。
(敵の進軍が止まった後、気勢がだいぶ減ったわ。シューク君達が上手くやったようね)
(敵将はアロンなんでしょ?シューク君を当てるとは、なかなかやるわね貴女のリーダーは)
くすくすとエリスの笑う声が頭に響きわたる。
それに、対し、フィリアも少し照れた感じで答える。
(私の自慢の姉だもの。当然でしょ?それよりエリス)
(なに?)
(私に協力してくれるの?以前の私にはこんな力は無かったわ)
(そうね、私が貴女の潜在能力を目覚めさせるきっかけを与えただけ。私の力はまだぜんぜん使ってないわよ)
(じゃあ、私の中にこんな力があったってこと?)
(そうなるわね。)
自分の意識の中にいるもう一人の人物であるエリスの話によると、元々潜在的にフィリアにはこういった力があったのだという。
そして、その力がエリスによって覚醒されたというわけだ。
(シューク君にアロンか・・・運命なのかしらね)
(エリス。アロンの過去の話は以前聞いたけど。彼とシュークを会わせたくないって言うのはどういうこと?)
しばしの沈黙の後、エリスの言葉が脳内に響く。
(・・・いずれわかるわ。でも、これだけは言える。アロンにとってシューク君との再開はずっと以前から望んでいたことよ)
(望んでいた?アロンが?)
(そう。アロンが望んでいたこと。そして、彼の思い通りの成長を遂げているなら・・・)
(いるなら?)
(ごめんなさい。この先はまだ言えないわ)
(そう・・・わかったわ)
思考の会話が一通りまとまったところで丘の向こうの気勢が動き出す。
アロンの軍の再編が完了しこちらに向かい再び、進軍を開始したようである。
「・・・来る。予想より行動が遅い。どうやら予想以上のダメージを与えることに成功したのね。
アロン・・・貴方の思い・・・届くと良いわね」
学校の屋上で敵の迫る丘の向こうを見つめつつつぶやく。
そのつぶやきは風に吹き消されるほど小さなものであり、自分以外の誰も聞くことはなかった。
(私には聞こえてるけどね)
(うるさいわよエリス。さあ!忙しくなるわよ〜)
決戦の時は近い。今はゆっくり休もう。
フィリアはまっすぐ自室に戻っていくのであった。
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あとがき
エンジュ活動日記第9話目です。
え〜まずは、ごめんなさい。
今回の話、短くまとめようとしたのですが、書きたい場面が多々出てきちゃいまして・・・
結果として、前後編にせざるを得なくなってしまいました。
申し訳ありません><
しかも、前の時と同じく時間がまったくたっていない・・・(T-T)
さ、先に進めないぞ〜(^^;
ま、まあ、作者が作者なので、その辺は許してくださいw
さて、今回の9話いかがだったでしょうか?
エンジュの皆さんには全員に見せ場を作ったつもりです。
特に、シューク君の見せ場が結構多かったと思います。
(一人名前も出ていない方がいますが、この方の登場は後編です)
まあ、最後はフィリアがかっこよく決めてましたけど〜♪
さらに、今回はシオン君が出ていません。
シオン君ファンの方はごめんなさいです。
(いるのかな?そんな人は)
何気に、人気投票とかやってみたいな〜w
今度CGIでも設置してみようかしらw
こほん
と、とりあえず話を戻して。
このお話、主要キャラクターがあっちこっちにいる為、全員を同時に動かすとどうしても場面が転々としてしまいますね。
その辺の都合つけに今回は少し苦労しました。
(まあ、上手くつながったかは自信ないけど。でも、それなりに上手くつながってるはず!)
この件に関してはとある方の協力が無ければ完成しなかったです。
また、いつも応援してくださる方々のおかげでもあります。
この場をお借りしてお礼申し上げます。
本当にありがとうございます。
さて、次回はいよいよ魔法学校での防衛戦になります(ようやくかよ!って言わないでね♪)
戦力を半減させられたアロンの軍。それに対して準備万端で待ち構えるしるくぅ軍
ややしるくぅ軍に有利なこの状況だが、アロンの裏にはラーナの影が!
シュークとアロンの出会いがどのような展開を見せるのか!!
次回をお楽しみに〜♪