決断
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「かんぱ〜い!」
無事にエリムに戻ってきた一行はいつものように酒場で祝杯をあげていたのだった。
「蒼ちゃんおかえりなさい。さ、ぐ〜っといってぐ〜っと」
「くぅさん、今日はテンション高いですね〜」
「まあまあ、たまにはいいじゃないのよ〜」
酒場はいつものように賑わっている。
それもそのはず。
無事に依頼を完了したエンジュの面々が酒場にきている。
さらに、修行の旅に出ていた剣士『蒼き殺戮』が無事に戻ってきたのである。
にぎやかでないはずが無い!
・・・はずなのだが・・・
「ねえ、マスター。辛い二択ってしたことある?」
カウンターに一人静かに座っているのは剣士フィリアであった。
「辛い二択か・・・俺にはそんな選択はなかったよ」
「・・・そっか」
「俺に言えるのは一つだけだ。酒は楽しく飲むものだ。特に仲間と飲むときはな」
「・・・ん」
本日復帰した蒼き殺戮(通称蒼ちゃん)を迎える会はいよいよ盛り上がっているようだ。
そんな光景をまぶしそうに見つめ、フィリアが席を立つ。
「・・・行くのか?」
「ええ、決着はつけなくちゃね・・・みんなにはよろしく言っておいて」
そういうと、カウンターに勘定を少し多めに置き静かにその場を後にする。
酒場を出て、宿に行き準備を整え、街の西門へ・・・。
途中、酒場の近くを通ると楽しそうに騒いでいるみんなの声が聞こえてくる。
「みんな、元気でね」
門をくぐり、街の外に出る。
この街は冒険者が夜遅くに戻ってきても町に入れるように常に門は開いているのだった。
実に開放された街である。
その門を出た所に寄りかかるようにして一人の魔法士が待ち構えていた。
「こんな時間にお出かけ?どこにいく気なの?」
はっ!と振り返るとそこにいたのはなんと、エンジュのマスターであるくぅであった。
「くぅお姉ちゃん・・・い、いや、ほら、月がきれいだな〜って思って月見に・・・ちょっとね」
「へえ〜、月見ね〜。じゃあ私も行くわ」
「え?い、いや、なんとなく一人で見たいかな〜と。それにぽぽさんが心配するって。うん!」
「ん?俺ならいるよ?」
別の方向から聞こえてくる声。それは紛れも無くぽぽえっとのものであった。
手には三人分のグラスとお酒のビンを持っている。
「りり、あなたって一人で勝手に行動するの得意よね」
「そうそう、学園にいたときも結局勝手にやめていっちゃったもんな〜
 あの後大変だったんだぜ?ゆらが」
「わ、わたしの事はいいの!」
「はいよ。まあ三人で月見ってのもいいもんだろ?せっかく用意したんだ無駄にしないでくれよ?」
「ぽぽさん・・・」
(い、いけない。私の都合にみんなを巻き込んじゃ・・・)
何とか抜け出そうと必死に考えをめぐらせるフィリアをよそに、早速グラスにお酒を注ぎはじめるぽぽえっと
それをすっとフィリアに差し出すくぅ。
見事な連携攻撃である。考える時間を与えてもらえないフィリアであった。
「どうして?なんでわかったの?」
「「なんとなく」」
ばっちりハモった二人がお互いに顔を見合わせて笑い出した。
すっかり行動を見透かされているようである。
「で?あなたが学園を離れている間になにがあったのか話して頂戴」
話すまで離してくれなそうな勢いで、くぅが迫る。
「・・・実は」
「ちょいまち、りりちゃん。ごまかしは無しでいこうね」
読まれた・・・。先手を打たれて言葉が出ない。
どうやら完全に読まれているようであった。
「ふ〜、二人にはかなわないな〜・・・」
「当然w」
「しかたない・・・えっと、どこから話そうかな。んと、学園を出て行ったあの日私は・・・」



一方そのころ、酒場で飲んで騒いでいた四人がそろそろかな?と騒ぎをやめていた。
全員騒いでいる振りをしていただけであったようである。
「ふぃーちゃんったら、あんなに思いつめた顔して」
「僕たちが気づかないとでも思ってたのかな〜」
「変に気を使うからねふぃーちゃんは」
「それより、もう一杯飲まない?」
蒼、シューク、チロそしてゆうの四人が酒場で騒ぐ役を行っていた。
ゆうにいたっては演技ではなくしっかりと飲んでいたようであるが・・・
「それにしても、蒼ちゃん久しぶりだね〜」
「ええ、ゆうさんもお変わり無いようで。相変わらずお酒好きなんですねw」
「うんwおみやげに持ってきてくれたこのザイド産のお酒。とっても良いよ♪」
上機嫌でお土産の酒瓶を殻にしていくゆうであった。
「あれ?そういえば以前聞いたんだけど。マデリンに幻の銘酒と呼ばれるお酒があるらしいよ」
シュークが思い出したようにそうつぶやく。
「幻の銘酒!」
ゆうが思いっきり反応する。
「私も聞いたことあるよ。たしか年間10本しか作られないとか・・・」
ちろも聞いたことのあるうわさ話を披露してくる。
「年10本!!」
どんどんゆうの反応が高まっていく
そして、次の蒼ちゃんの一言が決定打になった。
「あれって、たしか明日限定発売じゃなかった?・・・うん、明日の朝8時からだね」
「マデリン行ってくる!!!あとよろしく〜。あ、勘定はくぅにつけといてぇぇぇぇ・・・」
風のように走り去っていったゆうであった。
後日談ではあるが、マデリンにてしっかりと目的のお酒をGETしたゆうはほくほく気分で帰ってき、そのお酒を存分に堪能したのであった。



「学園を出た私は、ザイドという町に流れていったの。そこで、私は」
街の外ではフィリアがぽつりぽつりと話し始めようとしていた。
「私は・・・酒場で・・・」
「ふふ、その辺でやめてもらおうかフィー。そんな話をしてもどうにもなるまい?」
闇の中から一人の剣士が現れる。その剣士は鉱山でフィリアと話していたシオンであった。
「さあ、迎えにきたよフィー。あの時の約束を果たすため、一緒にいこう」
「シオン・・・」
「君がおとなしく来るなら、今回は、そこの二人には手を出さないと約束しよう。
 別れを惜しむ時間くらいはまってあげるよ」
すっと3歩ほど交代するシオン。今のところは言葉どおり待っているようである。
「・・・話途中になっちゃったけど。私、行くね」
「りり!だめよ。行かせない」
「ううん、くぅお姉ちゃん。これは私の問題だもん。私が解決してくるよ」
「りりちゃん。帰ってくるよね?」
「はい、お二人の式を見るまでは死ねませんからw」
「そろそろ良いかな、答えを聞こうか」
「いくわ。シオン」
「ふふ、賢明な答えだよフィー。さあこの手を掴んで。良い子だ。
 そうそう、君たちもお仲間の所に戻ったほうが良い、今夜は冷えるからね。ゆっくり休みたまえ」
フィリアとシオンの周りの闇が濃くなっていき、そして何も無かったように二人の姿が闇の中に消えていった。しばらく二人が消えた空間を見つめていたくぅとぽぽえっと。
「りり・・・絶対に帰ってくるのよ・・・」

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あとがき
という訳でエンジュ活動日記第4話目をお届けいたします。
一応タイトルとして、『エンジュ活動日記』というかってなタイトルをつけてみました。
この意味は後々に判明するでしょう(完結するころに・・・かなw)
でわ、恒例の内容解説にでもいきますかねw
今回の話は前回の第3話のエンジュルートの続きという形で語られています。
3話で行った調査の結果を報告し、依頼完了になった後という設定です。
依頼が完了すればお金が入る。3話のノリだとおそらくそのまま酒場へGOでしょうw
よって、今回も場面は酒場からになっています。
カウンターに代金を多めにおいたのはマスターに対する口止めの意味も含んでいます。
おきづきでしたか?(知るか〜!)
後、今回の話からとある人物の依頼であるキャラの設定がすこ〜し変わっています。
まあ、すぐにお気づきになると思うのであえては言いませんw。
それと、今回ゆうさんが登場しましたね。
以前お話していたときにお酒が好きという話を聞いたので、こういたキャラにしてみました。
こんなのちが〜う!といった苦情はお受けしてもいいですけど変更は出来ないのであしからず
と、こんなところかしら?他にも何か聞きたい点がございましたら
BBSででもお知らせくださいなw
可能な限りお答えしますわw

さて、物語も良い感じになってきたですね。
フィリアとシオンの関係は?
一緒に闇に消えた二人はどうなるのか!?
銘酒探しにいったゆうさんはどうやって手に入れるのか!
色々と伏線が出てきました。
これをどうするのか!(そのまま無かったことにするって手もありw)
次回はいよいよギター持ったあの方も登場する予定です。
さらに、あの人が意外なことに!?
そして、その先に待つものとは・・・!?
次回もお楽しみに〜♪