おすすめ読本のご紹介

小学校低学年向け

「日本むかしばなし集」 坪田譲治著 新潮社(小学校低学年向け)
 「ぼうや〜よい子だ、ねんねしな〜♪」の主題歌でおなじみの「日本昔ばなし」がテレビの画面から消えてしまってから、「日本の昔ばなし」も最近ではあまり話題になることがなくなった気がする。それでも、一度は読んでおきたい「昔ばなし」が山盛りのこの本、日本人であれば、是非、読んでいてもらいたい。文庫本で全3冊。第1巻での有名どころをちょっとだけ紹介すると、「一寸法師」「浦島太郎」「かちかち山」「鶴の恩返し」「わらしべ長者」などなど。

「アンデルセン童話集」 大畑末吉訳 岩波文庫(小学校低学年向け)
 「日本の昔話」の次は「西洋の童話」といきましょう。有名どころをそろえた「ベスト集」は、角川文庫から出ているもの(全3巻でタイトルはそれぞれ「小さい人魚姫」「雪の女王」「馬車できた十二人のお客」となっている)がお勧め。ただ、「せっかくだから全部読みたい」と言う方のために、ここでは岩波文庫の全集の方(全7巻)を紹介しておきます。

「千一夜物語」 豊島与志雄 他 訳 岩波文庫(小学校低学年般向け)
 日本・西洋と続いたあとは、やはりこれ。シャハラザードという女性が王様にお話を聞かせるという構成でできているため、一夜一夜の区切りが実に中途半端なのだが、それでもやっぱりおもしろい。
 最近では「アリババと40人の盗賊」のお話すら知らないという子供も多いよう。今度はお母さんがシャハラザードになって、子供さんに毎晩お話を聞かせてあげてはどうでしょう?

「長靴をはいた猫」 澁澤龍彦訳 河出文庫(小学校低学年向け)
 「シンデレラ姫」「赤ずきんちゃん」は、実はフランス人の「シャルル・ペロー」の方がグリムより先に発表しているお話であることは、ご存じだろうか? この本はその「ペローの昔話」の訳本なのだ。
 この「ペローの訳本」も随分と多く出ているのだが、その中で一番いいと思われるのは、やはり「澁澤龍彦本」だと思う。フランス語を専攻している大学教授の訳などと比較すると、文学者である彼の訳の方が微妙なニュアンスで上回っているよ。

「グリム童話集」 吉原高志・吉原素子訳 白水社(小学校低学年般向け)
 「実は童話は残酷だった」という話題に火をつけた本。「グリム童話集、初版」の訳で全4巻。「赤ずきんちゃん」あたりが上記の「ペロー」の物とちょっと違うので、読み比べると面白い。文庫本だと岩波から完訳(全5巻)が出ている。

「フランダースの犬」 ウィーダ著 新潮文庫(小学校低学年向け)
 短めの童話にちょっと飽きた人にお勧めなのがこの「フランダースの犬」。テレビアニメで見ていたという人も多いと思うが、実は原作は犬の視点を中心にして書かれているので、アニメの雰囲気と若干違うのだ。また、子供のうちに(汚れを知らずに)天国へ旅立てる事は美しい事であるという、日本人との宗教観の違いにより、原作では、最後のネロが死んでしまう場面では、美しい仕上がりになっている。
 大人でも楽しめること間違いなし。一度、原作に触れてみよう。

「アルプスの少女ハイジ」 ヨハンナ・スピリ著 角川文庫(小学校低学年向け)
 「フランダース犬」の次はやはりこれ。テレビでストーリーを知っているならば、割と読みやすく感じると思うよ。ただ、テレビは「クララが立った」が感動の場面に仕上げられているけど、この部分、本当はペーターのしたいたずらをいさめながら、教育的な配慮がなされている場面。そして、本当のクライマックスはこの後に控えているんだよね。ということで、やっぱりこの本も、大人・子供どちらも楽しめる。ゲームなどでビジュアル的な楽しみしか感じられないようなら、この辺のお話から手を着けていくのも一つの方法だよ。

「ピーター・パン」 ジェームズ・バリ著 新潮文庫(小学校低学年向け)
 最近のファンタジー・ブームで少しずつ人気を高めて来ているピーター・パンとネバーランドのお話。ティンカーベルなどの妖精の原点ともいうべきお話なのだ。みんなもこのお話で夢の世界に行ってみよう。ちなみに、ディズニーなどで映画化され、一般的に「ピーター・パン」のお話と思われている「女の子とピーター・パンが冒険するお話」は、文庫本では「ピーター・パンとウエンディ」というタイトル。間違えないでね。

「だれも知らない小さな国」 佐藤さとる著 講談社文庫(小学校低学年向け)
 夢のある「コロボックル」の物語。主人公の「せいたかさん」が幼稚園の先生の「おちびさん」と一緒にコロボックルの国を守ろうというお話なのだ。コロボックルとはアイヌ語で「蕗の葉の下の人」の意味で、アイヌの人たちが住む以前から北海道に住んでいた小人という言い伝えが残っている。子供の心の持ち主にとって、感情移入しやすい文章と状況設定なので、思いっきりストーリーに入り込んでいけるぞ。是非、宮崎駿に映画にしてもらいたいという一冊なのだ。

「怪談・奇談」 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)著 講談社文庫(小学校低学年向け)
 いわゆる「お化け」の話。「耳なし芳一」「雪女」「むじな(のっぺらぼう)」「ろくろ首」などのお話はここが原点と思ってもらいたい。本名はラフカディオ・ハーンで小泉八雲は彼が日本に帰化したときの名前。ちなみに「小泉」は彼の奥さんの旧姓である。子供の頃、これを読んで一番怖かったのは、奇談の方に入っている「幽霊滝の伝説」。最近の血なまぐさいホラー映画より、こういった昔の怪談の「ジワッ」とくる怖さの方が後を引きそうだよね。

「一房の葡萄」 有島武郎著 角川文庫(小学校低学年向け)
 友人のものを盗んだ主人公が改心して精神的にちょっと成長するという短編。一時は学校の教科書にも載っていたのだが最近はどうなんだろう? この本を学校の生徒みんながしっかり読むと「いじめ」や「不登校」が大幅に減ること間違いなし。学校の先生にとっては必読の書。変な大学教授の学説にかぶれる前にこういう本をしっかり薦められる先生になって欲しいものだ。ただし、時代背景が古いので教室を「教場」、机を「卓」などと言っているところがあるから、そこは、お母さんの方でフォローしてあげて下さいね。

小学校高学年向け

「しろばんば」 井上靖著 新潮社(小学校高学年向け)
 テストの問題で扱われることが多く、登場人物に「洪作」(「洪ちゃ」と呼ばれている場合もある)が出てきたら、間違いなく、これなのだ。
 昭和初期の文学を読むためには、その時代背景などを知っておく必要があるので、どうせなら、テストに出やすいこの本で知識を蓄えてみてはどう?

「二十四の瞳」 壺井栄著 角川文庫(小学校高学年向け)
 小豆島を舞台に、大石先生と生徒のふれあい、そして戦争の悲惨さを描いている物語。ラストシーンはちょっと泣けちゃうぞ。ただ、最近の子が読んでいるかというと、「?」マークがつきそう。映画にもなっているので、バイオレンスとファンタジーばかりの外国映画からちょっと離れて、日本の情緒ある映画も楽しんでみてはどう?

「坊っちゃん」 夏目漱石著 新潮社(小学校高学年向け)
 おなじみ千円札の人。やっぱり日本人である以上、お札にのっている人がどんな本を書いたのか知っていないと、国際社会の一員として恥ずかしいという気がする。「日本人は、自分の国のお札にのっている人が誰だか知らない」と他国の人に馬鹿にされないよう、今のうちに読んでおいてね。

「気まぐれロボット」 星新一著 角川文庫(小学校高学年向け)
 「星新一」といえば、ショートショート。一つ一つのお話が短くて、それでいて面白いから、「本が苦手」という人が最初に手を出すのに最適。塾時代に「小学生の作文」に利用した時、子供達が熱中したことを考えると、小学生でも充分楽しめるはず。先日の(2002年6月)中3学力テストでは、この星新一の「約束」が使われたよ(このお話は新潮社「ボッコちゃん」に収録されているよ)。ちなみに「気まぐれロボット」は、自分が単に一番好きというだけでのお勧めです。他にも本はたくさん出ているから、面白いなと思った人は、全巻読破に挑戦してみてね。

「蜘蛛の糸」 芥川龍之介著 新潮文庫(小学校高学年向け)
 小説ジャンルとこちらとどっちに入れるかちょっと迷ったのだが、芥川龍之介自身が「これは、子供のために書いた」と言っているので、こちらの方に入れました。内容は「良いことをしたら、それが必ず自分に返って来る」と「自分だけいい思いをしようと思うと、最後に自分も見放される」というセット。文庫本だとわずか5ページしかないから、多少文章がややこしくても読み切れると思うよ。

「頭の体操」 多湖輝著 光文社(小学校高学年向け)
 現時点で23巻まで出ている「超ロング・セラー」のクイズ・パズル本。「常にホントの事だけを言う人と常にウソだけ言う人を見分けよう」というのを流行らせた本なのだ。他にも「あっ、これ知ってる!」なんていう問題がきっとあるよ。脳味噌の動脈硬化気味の方にお勧め。

「ポワロ登場」 アガサ・クリスティ著 早川書房(小学校高学年向け)
 ご存じ「灰色の脳細胞」のポアロもの。本当は長編の方が面白いのだが「まず、手始めに」という事で、ここでは短編集の方を紹介。「ハヤカワミステリー文庫」から、たくさんのクリスティ本が出ているので、推理小説好きは、是非、読破していただきたい。

「トットちゃんとトットちゃんたち」 黒柳徹子著 講談社(小学校高学年向け)
 一部の教科書でも扱っている、黒柳徹子さんがユニセフ親善大使として発展途上国を巡って歩いたときの記録。干ばつ・内戦・病気など日本国内では考えられないような状況下で、子供達は死と直面しながらも素直な心を失わず生きている。そういった内情を黒柳さんの目や心を通して、切々と私たちに語りかけてきてくれる本なのだ。
 元々わかりやすく読みやすい文章だし、講談社からは「青い鳥文庫」版でも出版されていて、こちらは「総ふりがな」だから小学生でも大丈夫だよ。ボランティアなどに興味のある人は必ず読んでおいてね。

「いしぶみ〜広島二中1年生全滅の記録〜」 広島テレビ放送編 ポプラ社(小学校高学年向け)
 原爆投下直後の状況や被爆した人がどのように死んでいったかという事を当時の広島二中の生徒の行動をたどりながら教えてくれる本。原爆というと投下されたその瞬間に全員死んでしまったというイメージの方も多いようだが、実は全身に火傷を負いそれでも何キロもある道を歩いて家に帰って自宅で苦しみながら息を引き取った生徒も多いのだ。当時中学校1年生だった子供達が死ぬ間際に残した言葉やその状況が実録としてこの本の中に詰まっている。原爆の惨状を未来にしっかりと伝える本なのだ。


中学生向け

「蒼き狼」 井上靖著 新潮社(中学生向け)
 プレステのゲームにもなった「ジンギスカン(チンギス=ハン)」の一生の物語。ちなみにテレビではジンギスカンを加藤剛さんが演じていた。
 過去において最大の面積を有したこの帝国を作ったジンギスカンは遊牧民だったため、このお話も、他の歴史物とちょっと毛色が違って「立派な宮殿などのきらびやかな」部分や「政治上の駆け引きの部分」が少なく、むしろ「男のかっこよさ」や「情けなさ」が中心。男性はしっかり読んでおくべき一冊だ。

「獄門島」 横溝正史著 角川文庫(中学生向け)
 以前は黒地に緑の文字が背表紙だった横溝正史の文庫版。最近ではそれがあっさりした感じに変わって、一時流行ったときの雰囲気がなくなっているのが残念なのだが、ストーリーの進め方やトリックの使いかたなどは絶品だと思う。「映画の宣伝」のせいで、おどろおどろしい雰囲気だと思いこんでいる人も多いと思うが、実際に読んでみるとそんな感じはしないと思うよ。
 横溝本は、人形左七捕物帖などを含めると100冊以上。読破しようと思うと、かなり気合いが必要だね。さあ、みんなも金田一耕助や左七に挑戦だ!

「項羽と劉邦」 司馬遼太郎著 新潮文庫(中学生向け)
 劉邦とは本名ではなく「劉兄さん」という意味なんだそうだ。ちなみにお父さんは「劉翁(劉おじいさんという意味)」。中国の「漢」王朝を建国した人たちの名前が定かでないというのも、ちょっと不思議な話だね。
 お話は、秦の始皇帝の時代から漢王朝建国まで。武力のみで国をまとめようとした項羽と信義を重んじる劉邦の対象が印象的。「すぐにキレてしまうやつは最終的にみんなから見放される」と言うことがハッキリ分かる内容なのだ。文庫では上・中・下の3巻。

「高瀬舟」 森鴎外著 新潮文庫(中学生向け)
 「安楽死」をテーマにした森鴎外一押しの書。時代を超えたテーマを、罪人を運ぶ高瀬舟に乗った男が船頭に語りかける形で読者に問いかけていく。文学史などで扱われる「舞姫」は文語体なので、口語体で書かれたこちらの方がずっと読みやすい。文庫本では「山椒太夫」とセットになっているから、お買い得だね。

「万葉恋歌」 永井路子著 角川文庫(中学生向け)
 永井路子というと、NHKの大河ドラマにもなった「北条政子」の方が有名かも? ただ、この本は学術書ではなく、万葉の時代を現代の感覚と照らし合わせて読んでいけるので、今まで単に「勉強用」として覚えていた「万葉集」に生の息吹を与えてくれる本なのだ。
 戦時下で、「愛」や「恋」などおおっぴらに語れなかった恋人たちが、この「万葉集の歌につけられた番号を相手に送って、自分の気持ちを伝えた」というエピソードもあるくらい、日本人の恋愛感情の根底にあるものを網羅している日本最古のこの歌集。是非、これを読んで、自らの心の再発見していただきたい。

「徳川家康」 山岡荘八著 講談社(中学生向け)
 織田信長から徳川家康までの戦国時代を描いた大作。これで戦国時代はバッチリだ。いまだに「武田信玄」と「楠正成」が同時代の人物と思っている人は、絶対読んでおいた方がいいと思う。ただ、文庫本だと全26巻なので、最初はその分量に圧倒されるかも。横山光輝の漫画版もあるので、それをまずはじめに読んで勢いをつけても構わないから、最終的には、この本を読破してもらいたい。自分の記憶だとNHKの大河ドラマになったときは、この26巻の分量であるにも関わらず「ベストセラー」になっているはず。だから、一度読み始めたら、この分量は気にならずに一気にいけるよ。

「城の崎にて」 志賀直哉著 新潮文庫(中学生向け)
 少なくても中学生以上であれば、簡潔さと明瞭さでは日本一と言われた志賀直哉の文章に、是非一度は触れてもらいたい。「偶然に命が助かった自分」と「偶然に命を失ってしまったイモリ」の対比など、ストーリーを追うと言うよりは、その文章のうまさを実感することが目標。こんな文章をなんのてらいもなく、スパッと書けるような人がいたら、きっと、未来の芥川賞受賞者になれること間違いなし。

「風立ちぬ」 堀辰雄著 新潮文庫(中学生向け)
 恋人に病気で死なれてしまうパターンの小説では日本の古典と言うべき存在。最初のページを開くとポール・ヴァレリーの「風立ちぬ、いざ生きめやも」の一節が原文で載せてあり、タイトルもそこから取られている。「サナトリウム」など時代を感じさせる言葉も多く出てくるが、現実を追っているようで現実から乖離しているようなストーリーの進み方で、読者を別空間に誘い込む雰囲気は絶妙。

「悪魔の飽食」 森村誠一著 カッパノベルス(中学生向け)
 今のお父さん・お母さんが学生時代に大ベストセラーとなった「悪魔の飽食」。戦争の時代に日本軍が行っていた「細菌兵器開発」」や「人体実験」の生々しいレポートで、当時の話題を一気にさらった本なのだ。「丸太」と呼ばれていた「人間モルモット」を使い「人間は血液の何%を失ったら死ぬのか」などという極秘実験を行っていたという、当時の研究機関である731部隊の詳細を明らかにした驚くべきノンフィクション。その後、有名な「帝銀事件」でもその時開発された毒薬が使用されたという噂もある。戦争が終わっても、その技術が悪用されればとんでもないことになるという事を示唆している本でもあるのだ。「続・悪魔の飽食」と合わせると全2冊。

「数学のたのしさ」 矢野健太郎著 新潮文庫(中学生向け)
 ジャンルとしては、一応ここに入れたんだけど、お話チックに楽しめるよ。数学に取り組む人たちの追求している「エレガントな解法」などのお話が載っていて、この内容だと、数学で「ただ答えを出せればいい」と思っている人にはかなり新鮮に感じると思う。ただ、内容には「高校数学」の分野が含まれているので、最初読んでしっくり来なかったら、高校の数学を習ってからまた読むと内容がスッキリするかも。また、角川文庫からは、「数学物語」というのも出ていて、内容は、動物は数を数えることが出来るのかを探る実験のお話からスタート。こちらの方だと、小学生でも十分楽しめるかな。数学の第一人者である矢野さんの本を読んで、君も数学好きになろうね!

「野火」 大岡昇平著 新潮文庫(中学生向け)
 罪のない一般の人たちが巻き添えになるということで「戦争反対」と叫ぶ人が多いと思うが、実は、戦争に出向いていった人たちも辛い辛い経験をするのだということが、この小説を読むと分かる。「猿の肉」と言われて食べた肉は「本当は人間の肉だったのでは?」と主人公が悩むシーンが話題になり、一時は「反戦のバイブル」のような地位にあった本だが、最近ではあまり話題になることがないようで少々がっかり。これを機会になんとか復活してもらいたい。

「沈黙」 遠藤周作著 新潮文庫(中学生向け)
 キリスト禁教当時の日本を舞台に「神はなぜ沈黙しているのか」を問うというお話、と聞くとちょっとテーマが重い感じがするが、一旦読み始めると、小説の内容が映画のように生き生きしてくるから不思議だ。ただ、この本が文庫本になったのは自分の学生時代。当時の文庫本は「永久保存版」的感覚があって、簡単に文庫本になるなんていうことはなかった反面、文庫本になった本はどれもおもしろかったという記憶がある。彼の作品には、他に「海と毒薬」「イエスの生涯」などがあって、どれも読み応え抜群。さすが狐狸庵先生なのだ。

「水滸伝」 駒田信二訳 講談社文庫(中学生向け)
 プレステのゲーム「幻想水滸伝」の元になっている中国のお話。108人の勇者が「梁山泊」を根城として悪政に鉄槌を下すというストーリーで、横山光輝もマンガにしているよ。本当は吉川英治本をお勧めしたかったんだけど執筆途中で病没してしまい、お話が完結していないので、こちらを推薦。「幻想水滸伝」をやった人、とんねるず&パチンコファンで「梁山泊」という響きに一種の郷愁を感じる人には是非読んでもらいたい。

「太郎物語」 曽野綾子著 新潮文庫(中学生向け)
 一時、ドラマにもなり、主人公として出演していた広岡瞬が一躍お茶の間のアイドル的存在になったことで記憶にあるお母さんも多いのでは? ちなみに彼は、この勢いでスプライトのCMにも出ていた。本は高校編と大学編の2冊出ている。母と子の精神的なつながりが日常の風景とともに描き出されていて、今のお母さん方にはいろいろ参考になるところが多いと思う。もちろん、子供さんが読んでもおもしろいので、高校生活や大学生活に入っていく子供さんにとっても参考になるよ。

「人形はなぜ殺される」 高木彬光著 角川文庫(中学生向け)
 タイトルにあるように「人形がなぜ殺されたか」が分かれば、謎はスッキリ、ハッキリ。みなさんの想像力を駆使してこの難事件に臨んでもらいたい。ただ、時代がやや古めなので、その辺の考慮が必要かも。これで、高木彬光作品が好きになった人は、「能面殺人事件」「刺青殺人事件」の方にも挑戦してもらいたい。

「点と線」 松本清張著 新潮文庫(中学生向け)
 時刻表を駆使した犯人のアリバイを崩すといった手法の推理小説の原点。これを読まないで「私、時刻表のトリックが好き」とは言えないのだ。単に旅情ミステリーではなく、本格ものだよ。松本清張といえば、もう一つ「日本の黒い霧(上下巻・文春文庫)」もお勧め。こちらの方では、実際にあった戦後の重大事件である「帝銀事件」や「下村事件」などを推理しているよ。

「不連続殺人事件」 坂口安吾著 角川文庫(中学生向け)
 「堕落論」という本を知っているだろうか? 実は、この作品、この堕落論を書いた純文学の鬼才、坂口安吾が書いた作品。映画にもなっていることから分かると思うが、中には「日本推理小説の最高傑作」という人もいるほど、すばらしい作品なのだ。ただし、時代背景が「終戦後まもなく」という設定なので(実際に書かれたのは昭和22〜23年)、ちょっと雰囲気になじめない人もいるかもね。
 横溝作品などに抵抗がないなら、この作品も十分楽しめる。ここは、鬼才安吾の英知に挑戦だ。

「新平家物語」 吉川英治著 講談社(中学生向け)
 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」でスタートする「平家物語」の現代版。「古典」の授業で「いや〜」な思いをしていた人は、これを読むと「なあんだ、平家物語ってこういうお話だったんだ」という言葉を思わず口から漏らしてしまうこと、疑いなし。だって「平家物語」を戦のお話って思っていない子もいるんだよ。ちなみに2005年、NHK大河ドラマで義経役はタッキーだ。
 読みどころは、やっぱり「義経八艘飛び」の「屋島の戦い」と「耳なし方一」の幽霊が必ず泣いたという「安徳天皇入水」のところだな。

スタディ大宮教室
さいたま市北区櫛引町2の82
048-652-8369