ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰




*ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰/パナソニック汐留ミュージアム
 141226まで/10:00−18:00/無休/1000円

NHKの日曜美術館で取り上げられていたデ・キリコ展を見に行ってきました。
ぼくがキリコの絵に遭遇したのは1978年、ちょうど氏が亡くなった年で、
中学に上がった記念に買ってもらった百科事典に吟遊詩人の絵が載っていました。

そこで形而上という言葉を知り、大学入学時の自己紹介でメタフィジカルなものが好きと書いた。
大学の卒業設計にはその表紙に吟遊詩人のマネキンを2体、模写しました。
それはほとんど直感的な行動でしたが、振り返るとぼくの卒業設計のテーマは形而上だった。

もちろんその間キリコ一途だったわけでもなく、ムンクやマグリット、
クレーのファンにもなり、社会に出てからは現代美術の方に興味は移っています。

しかしなぜ吟遊詩人を引きずっていたかというと、他に情報がなかったから。
当時、キリコの画集というのはまず見なかったし、他には街の神秘と憂鬱くらいしか知らない。

それがようやく今回の展示で解消されました。残念ながら初期の作品は少なかったですが、
一言でいうとキリコは技術的に劣る。ダリやマグリットのような精緻な描写力はなく、
クレーのように線一本引くだけで詩情が湧いてくるような才能もない。

晩年にキリコが初期の作品に回帰し、しきりに複製を行っていたことに対し、
批判の声が多い一方で、アンディ・ウォーホルが現代美術の視点から賞賛したらしい。

その理由もわかりました。キリコは一生、吟遊詩人だけを描き続ければよかったのです。
描く作品みんなが傑作なんて天才はごく一部です。同じ形而上作家のモランディは、
後半生のほとんど、机の上の静物だけを描き続けましたが、彼のほうが正解でした。


(14/12/05 h.taki)



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