しなやかな共生




「しなやかな共生」展。

水戸芸術館はとてもよい美術館。
私が今まで見た公共美術館のなかでは3指にはいります。
(他の2つはロサンゼルスT/Cとフランクフルト現代美術館)
造りもいいですが、壁を塗ろうがはずそうが自由にやらせている柔軟性が好きです。
もちろん、企画内容も。
どうやらソフト(企画)の善し悪しは
ハード(入れ物)の善し悪しに比例するようですね。

展示はフェリックス・ゴンザレス=トレスが素晴しい。
床に敷かれた銀色のキャンディ(偽薬)の包み。ビーズのすだれ。
もう亡くなった方なので、厳密には彼の作品とは言えないのかもしれませんが、
とても繊細で美しく、それでいて儀式的な力強さがあり、
ひとつもらえる「偽薬」は彼の遺骨(遺志?)のよう。
彼の「やさしさ」がこうした展示を通して彼の死後も伝えられていく。

バーミンダー・コウの展示にも「やさしさ」が見てとれます。
部屋のすみで眠る4人の子供。指先に張り付く小さな服。梯子で登るベッド。
日本にいてはあまり実感できない児童虐待や児童労働、飢餓の実態。
そうしたものへの問題提起でもあるのでしょうか。

石内都の視点も「やさしい」。
40歳の女性の手。様々な傷。
ただそれがそこにあることを受け入れること。

そして和田千秋。
脳障碍を持った息子との闘病記。リハビリの器具。
半端ではない現実的な闘い。
しかし、それはいやおうなしに特殊な立場に立たされた作家自身の、
自らの場所の模索の闘いでもあるように見えます。

これは一般的に言う美術ではないかもしれません。
しかし、それを美術館という異なった文脈上に持ってくることによって
今回の展示全体のいい刺激になっているとは思います。
美術かそうでないかは美術館の人以外にとっては案外どうでもいいことですし。
どういうのを美術、いい美術と呼ぶかは個人個人の考え、感覚によって違いますし、
そうした違いを認めあって、その違いに刺激を受けながら変化し、
ともに生きていくのが「共生」ではないでしょうか。

上の4人に比べて他の2人はやや影が薄いですが、
ハモンズの不気味さ、他人に託したパフォーマンスはちょっと面白い。

全体を通して、日常生活ではあまり触れない視点を持つ作品が多く、触発されました。
また、そのやさしい感じに触れて、すこし幸せになりました。



(97/04/23 h.taki)




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