建築写真と点景




一口に建築写真と言ってもいろいろなものがありますが、
大きくは竣工写真系と住宅雑誌写真系に分けられるかもしれません。

前者は原則、家具とかが一切ない、純粋な建築物の写真で、
竣工直後、引越し前に撮られることが多いです。
後者は読者に生活イメージを伝えるのが主眼なので、引越し後だいぶたってから、
実際に使われる家具やお施主さんの姿まで写り込んでいることがあります。

いわゆる建築専門誌の写真はこの中間にあたるのですが、
近年、だんだん後者に近づいていっている感じがします。
ただし、写り込むのはモデルさんだったり、外から持ち込んだデザイン家具だったりします。

家具が入りはじめたのはずいぶん前。
伊東豊雄さんの中野本町の家のマッキントッシュチェアや、
安藤忠雄さんの小篠邸での白いソファなどが想起されます。

人物が入りはじめたのは比較的最近、妹島和世さんの住宅だったかな。
コムデギャルソン風の黒い服を着た女性が遠くに映っている写真の記憶があります。
また、写真家のホンマタカシさんがアトリエワンの住宅を撮影した際に、
モデルの市川実日子さんを登場させたのも覚えています。

ごく近年においては観葉植物を配置することがブームのようになっていて、
西沢立衛さんによるHouse Aの写真などは、植物とカーテンなしでは成立しないほどです。

このように、近年においては建築写真で点景は重要なツールになりつつありますが、
その究極ともいえるのが、オランダの写真家イワン・バーンによる、
藤本壮介さんのHouse NAの写真でしょう。

http://iwan.com/photo_House_NA_Sou_Fujimoto.php

とても明るく撮影された室内外に明るい服を着た主に若い女性を4、5名配しています。
ある者はバルコニーから脚を投げ出したりして皆リラックスしていて、
談笑しているようなシーンもあります。

しかしこれらのひとは明らかにクライアントではないし、こんな使われ方はしない。
その明るい色合いも手伝って、存在感が薄く、まるで幻想のような人物です。

この写真の雰囲気は日本のサブカルチャーと通底している印象を受けました。
例えばアニメの「けいおん!」。主だったストーリーがなく美少女の他愛もない会話が延々続く。
こういう作風は今、空気系と呼ばれているそうです。
AKB48のPVにも似ているかもしれません。ただただ少女たちの仲のいい仕草が繰り返される。

イワン・バーンは1975年生まれ。ホンマタカシよりひとまわり若く、
建築写真家としては世界でも最年少の部類に入るでしょう。
その若い感受性が日本のサブカルチャーやポップシーンに共鳴するような作品を生み出したことに、
とても興味があります。

(12/04/22 h.taki)



back