カート・コバーンと佐藤泰志




アメリカのロックミュージシャンと日本の小説家。

カートは伝説のグランジバンド、ニルヴァーナのヴォーカルでありギタリスト。
そのメジャーデビューアルバム、ネヴァーマインドが大ヒットし一躍世界に知られるようになります。
しかしカートは売れることを意識したこのアルバム制作に納得しておらず、
次作イン・ユーテロでは一転、アンダーグラウンドな音に変容しますがこれはあまり受け入れられなかった。

結局、2枚のアルバムを残しただけで27歳で自らの命を絶ちます。
曲造りに行き詰まっていたのでしょうか。他にも自殺の理由は幾つか想像できます。

有名人になってしまったので、プライバシーはなくなり生活に制限がかかる。
その姿はアイコン化されてしまったので、太ったり声をからしたりはできない。
納得のできないTVショーみたいな番組にも出演せざるを得なかったでしょう。
評価の数は膨大になり、悪評、悪口も多く耳に入ったことでしょう。
周りにはカートを利用して一儲けしようとする輩がたかっていたのではないか。
そしてもちろん創作へのプレッシャー。ビルボードのトップに輝いたアルバムの重圧は大きかったと思います。

一方佐藤は北海道、函館生まれの小説家。
上京し國學院大学を卒業し、家庭を構える傍らで働きながら小説を書き続けました。
その作品は一時は村上春樹と並び評されたほどで、芥川賞候補に5回、三島由紀夫賞候補に1回あげられるも、
結局1度として受賞することはなく、41歳で自殺してしまいます。
生前に刊行された単行本は3冊のみ。没後3冊がさらに出版されますが文庫化されることなく絶版。
近年、そのひとつを原作とした映画が製作されるまで忘れられた作家でした。

その略史を見ているとそりゃ辛いなという感想。認められない苦しさはぼくもわかるつもりです。
中学、高校あたりでは幾つか受賞はしているようです。これが引く脚をとどまらせたのか。
30歳を過ぎて職業訓練校に入りなおすあたり、苦境を打開しようとするもがきが見えます。
40歳を越えてまだ先の見えない状況に絶望したのかなあ。経済的にも厳しかっただろうと思います。

売れるも地獄、売れないも地獄。創作というのはいずれにしても辛い職業です。
共通するのはもろい精神。図太くないと生き残れない世の中なのかな。

(11/07/26 h.taki)



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