ジュゼッペ・テラーニ ファシズムを超えた建築




*「ジュゼッペ・テラーニ ファシズムを超えた建築」展 水戸芸術館
 6月7日まで /9:30-18:30 /月休

展示はちょっと期待はずれな所もあったような気がします。
全体がぼやけた感じがするのですが、それはひとつには、
ファシズムを超えた建築、とうたってあるので、ファシズムとの関わりで、
語られるのだと思っていたのがそういうものが一切なかったというのと、
もうひとつ、私がテラーニの作品に持っているイメージ、
それはカサデルファッショとサンテリア幼稚園から来ているものですが、
構造を「枠」に見えるまで削ぎ落とした緊張感のある美しさ、というものが、
今回の展示ではテラーニのかなりの作品を網羅することによって、
かえって見えなくなってしまっているためかと思います。

全体を通して見ると、テラーニはとても早熟で器用な人で、時代時代でいろんな
ところから影響を受け、それを身につけているのが分かります。
学生時代の古典。初期のバウハウスやロシア構成主義。
そして圧倒的なル・コルビュジェからの影響。
しかしその器用な点が逆に不幸をもたらしたのか、
作品全体を並べて見ると、結局何をしたかったのかが見えてきません。
たぶん、テラーニ自身にもわからなかったのではないでしょうか。

彼が残した最後の実作はとても繊細である種老成したような
アパートメントです。
テラーニはその後戦地におもむき、精神を患って帰国、
直後に自殺を思わせる形で亡くなるのですが、
戦争に向かった段階でもう既に建築でやるべきことを
見失っていたのかもしれません。

ただ、若い頃には近代建築運動なりファシズムなり、
何らかの信ずるものがあったはずで、その心理的な変化が分かるような、
例えば手紙のようなものが併せて展示してあれば、
今回の展示ももっと興味深いものになったのではないかと思いました。

あと、構造の現実性は結構危ういですね。
特にリットリオ宮コンペ第2次案の模型では、高層棟はともかく
(怪しいところはありますが)、低層棟のエントランス回りの
張り出しはさすがにあのままでは無理でしょう。
技術的な面では随分と楽観的な人だなと感じました。



(98/05/25 h.taki)




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