LOVERS




*「LOVERS」古橋悌二 /スパイラルガーデン 港区南青山5-6-23
 5月21日まで 無休 /11:00-20:00 /無料

同じくダムタイプの高谷史郎の「frost frames」も展示されていますが、
圧倒的に「LOVERS」の方がよいです。

らせんのスロープのある吹き抜けに白いキューブが鎮座しています。
中に入ると床は白、壁と天井は黒でブラックライト(?)のみの暗い空間。
中央に数個のプロジェクターを積んだスチールラックが置いてあり、
プロジェクター自体が回転しながら周囲の壁に裸体の男女が
スローモーションで歩いたり走ったりする映像を幾つも投影しています。
さらにスキャンする時に発生するような帯状の光や、
幾つかの英語のテキストも壁面に浮かんでは流れ、消えていきます。
音は効果音程度で静謐な雰囲気が漂っています。

現代的なはかなさや、ある種神聖なものも感じさせる独特な空間は、
とても魅力的で、かなり完成度が高いです。
空間を円形としないで正方形とした点と、映像の動きをスローにした点が
うまくいったポイントではないでしょうか。
一時期はやった都市空間をテーマにしたもろもろのビデオインスタレーション
とは一線を画した質を保持しているように思います。

ただ一方でなんというか、自閉的な感じも受けました。
テーマ自体は現代の状況等に開いているようには思うのですが、
その表現の繊細さからは美術を職業にする人のもつ力強さが見えず、
学生的というか、ある種ひとりよがりな感じがします。

若手から圧倒的な支持を得ている建築家で妹島和世という人がいるのですが、
そこらへんが(モノそのものを含めて)よく似ているように感じました。
一方、妹島さんの作品は村上春樹の小説に似ているということを
私は最近感じていて、そうなると村上春樹と古橋悌二も似ているのかな、
なんて考えたりもしています。(そうでもないか?)

その世界は私は決して嫌いではないのですが、
いつまでもそれでいていいのかな、なんてことを感じます。
古橋さんはもう亡くなられてしまったので、今さら、ですが。



(98/05/17 h.taki)




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