ドイツ写真の現在




*ドイツ写真の現在/東京国立近代美術館
 051228まで/10:00-17:00(-20:00金)/月休/650円

表題のとおり、ドイツの写真家10人による展示です。
出展者はベルント&ヒラ・ベッヒャー、ミヒャエル・シュミット、アンドレアス・グルスキー
トーマス・デマンド、ヴォルフガング・ティルマンス、ハンス=クリスティアン・シンク
ハイディ・シュペッカー、ロレッタ・ルックス、ベアテ・グーチョウ、リカルダ・ロッガン。

自分は実は写真作品というものにあまり興味がありません。
特に一時流行った若いコのスナップ写真なんかは、何がいいのかよくわかっていません。
メイプルソープとかはフツーにいいと思いますが、古臭いですかね。

建築設計の仕事をしていると、竣工写真を写真家の方にお願いする機会があり、
その時思うのは、長時間に渡るすさまじい集中力が求められる仕事だということで
普段、自分が何気なく見ている建築雑誌の写真も、実は現場で細部まで問題がないかチェックされ、
わずかな歪みを修正し、光の色、さし方とバランスを考えてフィルタ、露出を決めてと、
かなりの労力の結果であることがわかります。
そういうプロの仕事を見ているので、バカチョンでバシバシはどうなのかと思うのかもしれません。

建築写真の場合でいうと、現物と写真のあいだに一定の関係が見られます。
ひとつは現場での動く視点や視覚以外の様々な情報が写真ではばっさり切られてしまうこと。
もうひとつは、写真では像を加工して演出ができるということです。
個人的には写真では現場のナマの感覚を伝えるのは限界があるので、そっちはあきらめて
どう嘘をつくかにターゲットを絞るのが得策かと思います。
それは緻密であればあるほどいい。
事実を伝えるふりをしてこっそり嘘をつくのが写真の醍醐味のように思います。

その点から言うと、今回の展示ではトーマス・デマンドによる模型で制作された室内を
撮影するという作品や、ロレッタ・ルックスの異なる背景に無理やり合成された
子供の写真、などが微妙な違和感をかもしだしていて面白いと思いました。

もうひとつ自分が写真について感じていることは、そろそろ単視点から
抜け出してもいいのではないかということです。
今の世の中は何でもデジタル化していて、身近なところにコピーとかスキャンのような
フラットな複写機能が普及しているのに、そういう写真ってないなあと思っていました。
特に森美術館で杉本博司の三十三間堂の写真を見たときは、まさにこれでやってほしかった。
でも実際それをやるとしたら、無限遠から超望遠レンズで撮影する必要があるので難しい。

するとやはりコンピュータによる画像加工ということになるようですね。
今回の展示では、ハンス=クリスティアン・シンクによる橋の写真や
アンドレアス・グルスキーのライン川の写真がこれに近い試みだと思います。

あとはやはりベルント&ヒラ・ベッヒャー。
建築関係者では知っている方は多いと思いますが、昔からの工業施設、
特に意識されてデザインされたのではないであろうその形はしかしとても奇妙で美しく
「建築家なしの建築」(B・ルドフスキ)の工業バージョンを思わせます。
畠山直哉の「ライム・ワークス」の元祖みたいなひとですね。
建築好きにはたまらない写真作品です。


(05/11/26 h.taki)



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