『浦島太郎・異伝怪』


日本迷作劇場その5改 浦島太郎・異伝怪

キャスト
浦島太郎:知世
カメ:小狼
カメをいぢめる子供:ケロ&スッピー
乙姫様:さくら

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むかしむかし浦島は〜〜
助けた亀に連れられて〜〜
竜宮城に来てみれば〜〜
絵にもかけない美しさ〜〜

むかしむかしのその昔。
ある村に心のやさしい浦島太郎という若者がおりました。

「今日も言いお天気ですこと。こんな日はお宝ざっくざっくな予感がしますわ〜〜」

・・・・・・。
まあ、その。
心の性根と金銭欲はまた別物ということで。

さて、そんなある日のこと。
浦島さんは子供たちがカメをいぢめているところに遭遇してしまいます。

「おらぁ、どうした小僧! なんとか言ってみんかい!」
「まったく。この程度の力でクロウの末裔とは嘆かわしい。それっ」

どかっ、ばきっ!
ぼこっ、ずがぁっ!

「うぐっ!」

カメさん、例によってビシバシと容赦なくいぢめられています。
きっとこのカメさんはそういう可哀相なさだめの星の下に生まれてしまっているのでしょう。
心の優しい浦島さんはもちろん止めに入ります。

「こらこら。子供たち、動物をいじめてはいけませんわよ」
「なんや、われ。こいつはわいらが捕まえたんや。どうしようとわいらの勝手やろうが」
「その通りです。見ず知らずの貴方に何か言われる筋合いはありませんね」
「あら。貴方たち、わたしの言うことが聞けない、そう仰るのですか?」

ジロッ!

鋭い視線が子供たちを一閃!
黒瞳の奥から迸る凄まじいオーラに子供たちはタジタジ。

「しょ、しょうがないな。そこまで言うならはなしたろかい。い、行くでスッピー」
「そ、そうですね。行きましょうか」

そんなわけでカメさんを助けた浦島さん。
やはり心の優しい若者なのです。

「いてててて」
「大丈夫ですか」
「あ、あぁ。なんとかな」
「そうですか。それではさっそく、参るとしましょうか」
「は? 参るってどこに参るんだ?」
「きまってるじゃありませんか。竜宮城ですわ。浜辺で助けられた動物は恩人を竜宮城で歓待すること。これが日本国成立以来のしきたりですわよ」
「そ、そうなのか」
「そうですわ。ちゃんと古事記にも書いてあります。だいたい、ただで他人を助けるようなお人よしがそうそういるとお思いですか? 世の中、ギブ&テイクですわ〜〜」

・・・・・・。
繰り返しますが、心の性根と貪欲さは別のものということで。
なんか騙されてる気がしないでもないカメさんでしたが、助けてもらったのは事実なのでしょうがなく浦島さんを竜宮城へと案内します。
竜宮城で浦島さんを出迎えたのは竜宮城の主、乙姫様です。

「小狼くんを助けてくれてありがとう。あ、わたしがこの竜宮城の主の乙姫だよ」
「浦島ですわ。それにしても本当に素敵ですわね」
「そうでしょう。この竜宮城は海の中でもっともキレイなところなんだから」
「いえ、わたしが言ってるのは乙姫様のことですわ。本当になんて素敵なお方・・・・・・。あぁ、ビデオを持ってこなかったのが悔やまれますわ〜〜」
「そ、そう言われると照れるな。えへへへ」

乙姫様に連れられた大広間に用意された席に座ると、魚たちが見たこともない美味しそうな料理を次々と運んできます。
さらに、素敵な音楽にあわせてタイやヒラメやクラゲたちが見事な舞を踊るのでした。

「どう、知世ちゃん。素敵でしょう」
「たしかに素敵ですわ。でも、やっぱりさくらちゃんの可愛さにはかないませんわ」
「やだ、知世ちゃん。恥ずかしいよ」

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さてさて。
こうして竜宮城にやってきた浦島さん。
毎日あちらを見学、こちらを視察と熱心に竜宮城を見て回っています。
いつまでたっても帰ろうとしません。
小狼くんの恩人なんだからと思って何も言わなかった乙姫さまでしたが、さすがに滞在が1カ月にも及ぶとちょっと心配になってきました。

「ねえ、知世ちゃん。ここに来てからもう1月くらいたつけど大丈夫なの」
「なにがですか」
「だって知世ちゃん、お家の人に何も言わないでここに来ちゃったんでしょう。そろそろ帰らないといけないんじゃないかな」
「まあ! さくらちゃんはわたしに帰れと。竜宮城から出て行け、そう仰るのですか」
「ち、違うよ! ただ、知世ちゃんのお家の人が心配してるんじゃないかと思って」
「あぁ・・・・・・。知世は悲しいですわ。さくらちゃんはわたしを必要とはしてくれていないのですね・・・・・・」
「そうじゃなくて〜〜」
「しかたありませんわね。こうなったら実力行使ですわ。本当はもう少しあとにしたかったのですけど。さくらちゃん、参りますわよ!」
「え? と、知世ちゃん? な、なにをするの? え? えぇ? えぇぇ? ほ、ほぇぇぇぇぇ〜〜〜〜!!」

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*****  しばらくお待ちください  ******
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「はにゃ〜〜ん」
「ふふっ、さくらちゃんったら。呆けたお顔も可愛いこと。さあ、さくらちゃん。さくらちゃんは誰のものか言ってごらんなさい」
「は・・・・・・い。さくらは知世ちゃんのものですぅ〜〜」
「では、この竜宮城は誰のものですか?」
「はい。竜宮城も知世ちゃんのものです〜〜」
「おほほほ。ではもう一度言ってごらんなさいな。さくらちゃんと竜宮城の主は誰ですか?」
「知世ちゃん! 知世ちゃんです! さくらも、竜宮城も、み〜〜んな知世ちゃんのものです〜〜!!」
「はい、よくできました。ではご褒美を差し上げますわ。可愛い可愛いさくらちゃん・・・・・・」
「はぅ〜〜〜〜」

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こうして卓越した房中術(どこでそんなものを・・・・・・)で竜宮城を手中に納めた浦島さん。
以降、竜宮城の圧倒的な武力を背景に近隣諸国を征服し一大帝国を築き上げていきます。
これが今も伝説に伝わるアトランティス帝国の起源です。
そうです。
アトランティスは海に沈んだのではありません。
真のアトランティス帝国は海底国家だったのです!

「なんだって―――!!」(by MMR)

なお、この後に乙姫様奪還のためカメさんが武力クーデーターを企ててあっさり鎮圧されたりもするのですが、それはまた別の機会に。

めでたしめでたし?


MMR復活記念。
実際にはMMRネタで書き終わって本屋に行ったらMMRの新刊があってビックリしたというのが本当のところですが。
ま、まさか監視されているというのか! 「太陽の住人」に!

この浦島太郎、実は異伝の方が先に出来上がっていたのですが、書き終えてから最近、正統派のしゃおさくなお話を書いてないな〜〜ということに気づいて最初のお話の方を書きました。
まあ、そもそもこのサイトに正統派なしゃおさくを求める人などいないとは思いますけど。

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