『浦島太郎・異伝』
日本迷作劇場その5改 浦島太郎・異伝
キャスト
浦島太郎：さくら
カメ：小狼
カメをいぢめる子供：エリオル＆山崎
乙姫様：知世
―――――――――――――――――――――――――――――――――
むかしむかし浦島は〜〜
助けた亀に連れられて〜〜
竜宮城に来てみれば〜〜
絵にもかけない美しさ〜〜
むかしむかしのその昔。
ある村に心のやさしい浦島太郎という若者がおりました。
「あ〜〜今日もいい天気だな〜〜。こんな日はお魚もいっぱいとれるかな〜〜」
そんなことを考えながら浜辺を歩いていた浦島さん、子供たちがカメをいぢめているところに遭遇してしまいます。
ビシッ、バシッ
「う、うぅぅ･･････」
ビシッ、バシッ！
「あぅぅっ！」
子供たち、かなり容赦なくカメさんをいぢめています。
「いいなぁ、李くん。実にいい顔してくれるねえ」
「まったくです。そんな顔をされてはこちらもガマンができないというものですよ。フフフ･･････」
「な、なにをする気だお前ら！ やめろぉぉ〜〜！」
おっとっと。
いぢめるというかなんというか。
この子供たち、かなりアブナイ趣味があるみたいですね。
このまま放置しておくとBとかLとかつく世界に突撃してしまいそうなので浦島さんに止めてもらいましょうか。
「ダメだよ、動物をいじめちゃ。かわいそうでしょ」
「やだなあ、誤解だよ木之本さん。いじめてるんじゃなくて可愛がってるんだよ」
「そうですよ。彼はこうされるのが大好きなんですから。ほら」
「ぐぅっ！」
「そ、そうなの？」
「そんなわけあるか！」
「やっぱりいじめだよ！ いじめはダメ〜〜」
「しょうがないなあ」
そんなわけで浦島さんに助けられたカメさん。
「いてててて」
「ほら、もう大丈夫だよ」
「あ、ありがとう」
「もう捕まっちゃだめだからね。じゃあね」
立ち去ろうとする浦島さんを黙って見つめるカメさん。
ですが、ふと何かを決心したかのように浦島さんに声をかけます。
「あ、あの！」
「ん？ なあに」
「助けてくれてありがとう。そ、その。助けてくれたお礼がしたいんだけど」
「お礼？」
「あぁ。おれのうちに来てくれないか。そこでお礼がしたい」
「カメさんのおうち？ どこなの、それ」
「海の底にある竜宮城だ」
「りゅうぐうじょう？ なんかすごそうなところだね」
「そうだ。とっても大きくてキレイなお城だ。美味しい食べ物もいっぱいある。そこでお前にお礼がしたい」
「わぁぁ〜〜楽しそうなところだな〜〜。それじゃあ、ちょっと連れてってもらおうかな〜〜」
さて。
そんなわけでカメさんに連れられてやってきた竜宮城。
そこは赤やピンクのキレイなサンゴに飾られたとても素敵な御殿でした。
「すご〜〜い。カメさんこんなきれいなところに住んでるんだ」
「こっちだ」
カメさんに案内されるままに進んだ先で浦島さんを待っていたのはこの竜宮城の主人、乙姫様です。
「ようこそ、竜宮城へ。わたしがこの竜宮城の主の乙姫ですわ。不甲斐ない下僕を助けてくださってありがとうございます」
「誰が不甲斐ない下僕だ･･････」
「（李くん、余計な口を挟まないほうが身のためですわよ）さあ、さくらちゃんこちらへ。お礼に竜宮城を案内しますわ。どうぞ、ゆっくりしていってくださいね」
乙姫様は浦島さんを大きな広間へ案内します。
浦島さんが用意された席に座ると、魚たちが見たこともない美味しそうな料理を次々と運んできます。
さらに、素敵な音楽にあわせてタイやヒラメやクラゲたちが見事な舞を踊るのでした。
「ほほほほ。どうです、さくらちゃん。見事なものでしょう」
「う〜〜ん、たしかにすごいんだけど。なにか想像してたのとは違うような？」
浦島さん、ちょっと困惑気味です。
まあ、無理もないですね。
乙姫様の部下のタイやヒラメさんたちはたしかにみんな美人なのですが全員、黒いサングラスに黒いスーツをビチッと着こなしています。
給仕をするお魚さんたちも同じです。
どこかから、ざわ……ざわ……、とかいう謎の効果音が聞こえてきそうですね〜〜。
まあ、それでも料理は美味しいですし、お部屋もキレイだしでなかなか居心地はよかったのでずるずると日を過ごすうちに1週間もたってしまいました。
ポヤヤンな浦島さんもさすがに自分の家が気になってきます。
「知世ちゃん、いろいろとありがとう。だけど、わたしそろそろお家に帰りたいんだけど」
「えぇっ、さくらちゃん帰ってしまわれるのですか」
「うん。お兄ちゃんも心配してるだろうし。そろそろ帰らないと」
「そういわれてはしかたありませんね。わかりましたわ。でもその前にさくらちゃんにお土産をお渡ししたいのですが。ちょっとこちらに来てくださりますか」
「うん」
浦島さん、どんなお土産なのかな〜〜食べ物かな〜〜それともお洋服かな〜〜っとワクワクしながら乙姫様についていきます。
でも、連れてこられたのは何もないガラ〜〜ンとしたお部屋の前です。
「ここなの？ なんにもないみたいだけど」
「いえいえ。奥の方にちゃんと用意してありますわ」
「奥の方？ う〜〜ん、何も見えないけどな〜〜」
「おほほほほ。えいっ！」
どんっ！
「きゃぁ！？ 知世ちゃん！？」
部屋の奥を覗き込もうとした浦島さん、乙姫様に背中を押されて部屋の中に突き飛ばされてしまいました。
さらに
がっしゃ〜〜ん！！
その目の前で頑丈そうな鉄格子のドアが閉まります。
「と、知世ちゃん！？ な、なんなの？ どういうことなの〜〜！？！？」
「うふふふふ。さくらちゃん、もう逃がしはしませんわ」
「な、なにを言ってるの、知世ちゃん。ここから出して！」
「可哀想ですけどさくらちゃん。あなたはもう永久にここから出ることはできません。そう、永久に･･････。さくらちゃんは永遠にわたし一人のものですわ〜〜〜！！」
「そんなぁぁぁ〜〜〜〜」
ついにその邪悪な本性を剥き出しにした乙姫様！
もうお気づきの方もおられるかもしれませんが、カメさんが子供たちにいぢめられていたのは当然やらせ。
浦島さんを竜宮城に拉致するためのお芝居。
そう、乙姫様ははじめから浦島さんを狙っていたのです。
恐るべし乙姫様。
まあ、一説によると乙姫様の正体はサメなのだそうでこの貪欲さもうなずけないこともないですね〜〜。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「くすんくすん。わたし、これからどうなっちゃうんだろ」
幽閉された海底牢で身に降りかかった不幸を嘆く浦島さん。
と、そこへ
ガチャリ
誰かが鉄格子のドアを開けて入ってきます。
「だ、誰？ あ、小狼くん！」
入ってきたのはいぢめられていたカメさんでした。
てっきり助けにきてくれたものだと浦島さんは喜びます。
けれども。
がばぁっ！
「ほ、ほぇぇっ？ な、なにをするの小狼くん！」
カメさん、有無を言わさず浦島さんを押し倒してしまいました。
その瞳に燃えているのはドス黒い嫉妬の炎。
「大道寺のやつにはどこまでされたんだ、さくら･･････」
「な、なに？ 何を言ってるの小狼くん」
「大道寺のやつにどこまで許したのかって聞いてるんだ。ここか？ それとももう、ここまで許したのか？」
「しゃ、小狼くん！？ へんなところ触っちゃダメ〜〜〜〜！」
浦島さんの体をふにふにと揉み拉くカメさん。
どうやら浦島さんを狙っていたのは乙姫様だけじゃなかったみたいですね。
それだけ浦島さんが魅力的なのでありましょう。
それが浦島さんの不幸の原因とも言えますが。
「お前を自由にしていいのは大道寺なんかじゃない。オレだ！ オレだけがお前を自由にしていいんだ！」
「あぁ、ダメ･･････。そんなところダメぇぇぇ･･････あぁぁっ！」
「いくぞ、さくら！」
「ダメぇ、小狼くん。それはダメなの〜〜〜〜」
ん〜〜？
ダメダメ言いながら浦島さん、あんまり抵抗してませんね。
浦島さん、ひょっとして誘い受け？
･･････････････････
････････････
･･････
さてさて。
こうして竜宮城の捕囚となってしまった浦島さん。
まあ、なんやかんやで乙姫様とカメさんのねちっこい愛を受けながらそれなりに幸せに暮らしたそうです。
めでたしめでたし？
「ふぅ。やはり迷作劇場はこうでないといけませんわね。ついでにもう一遍、いってみましょうか」
「や〜〜め〜〜ろ〜〜」
「や〜〜め〜〜て〜〜」
to be continued･･･？