わんこ小狼・番外編

『激突! 小狼 VS 知世!』

※例によってこの先は寛容の心が試される内容となっています。
カードキャプターさくらという作品に対して譲れない一線をお持ちの方はブラウザを閉じることを強く推奨いたします。



※注意
本作はパラレルものです。

さくら:高校生の女の子
小狼:さくらに飼われる子犬。でも実は・・・?

という設定です。

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「ただいま小狼くん」

帰宅を告げるさくらの挨拶にオレは違和感を感じ取っていた。
今日のさくらはどこかおかしい。
なにかが変だ。
まず、いつもの「ただいまの抱擁」がなかった。
いつもだったらここで

「小狼くん、すべすべふさふさで気持ちいい〜〜」

でたっぷり1分間はぎゅーぎゅーされるはずだ。
それがない。
心なしか元気がないように見える。
言葉も少ない。
といっても体調が悪いとかそんなのではなさそうだ。
思いつめている、なにかを考え込んでる、そんな感じがする。
さくらもお年頃の女の子。
たまにはそんな時もあるだろう。
学校で友達となにかあったのかもしれない。
それほど気にかけることもあるまい。

・・・・・・としたかったのだが、今日に限ってはオレはそうするわけにはいかなかった。
かすかだがさくらの体から妖気を感じ取ったからだ。
妖気そのものというよりは妖気の残滓、残り香とでもいうべきものか。
妖物に直接何かをされたというほどではない。
強い妖気を放つ存在の傍でしばらく時を過ごすとこんな感じになる。
なに?
妖気を放つ存在ってそれはお前のことじゃないかだと?
いちいちツッコミのうるさいやつだな。
オレ以外の奴の妖気にきまってるだろ。
だいたい、オレがオレ自身の妖気に違和感を感じるわけないだろ。
ったく。

それはさておき。
この妖気にオレは覚えがある。
あの女の妖気だ。
大道寺知世。
さくらの同級生で小学生からの親友を自称する女。
一見、おしとやかな深窓の令嬢って感じでさくらもそう思っているようだがオレはだまされないぞ。
こいつはオレと同じ妖魔の血をひく存在だ。
そう、サキュバスだ。
男性の夢に潜り込んで精を搾り取る夢魔の眷属。
そいつがなぜかさくらにつきまとっている。
オレにはわかる。こいつもさくらを狙ってやがるんだ。
百合属性のサキュバスとはずいぶんとまた希少な存在だとは思うが、今のオレには邪魔モノでしかない。
あいつと初めてあったのはさくらに連れて行かれたあいつの家でだった。
古風で豪勢なお屋敷。
まさに魔女の住まいってやつだったな。

「小狼くん、知世ちゃんだよ」
「おほほほ。はじめまして。知世です。さくらちゃんに聞いていた通り可愛いワンちゃんですわね」
「わん! わんわん!」

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『さくらちゃんに聞いていた通りほんとうにチンケなワンコロですこと』
『なんだと! オレは誇り高き天狼の末裔! お前なんかにバカにされる筋合いはない!』
『その情けない姿のどの辺が天狼なのやら。お笑いですわ』
『これは仮の姿だ! 真の姿になればお前なんか!』
『真の姿になったらどうだとおっしゃいますの? 目障りなだけですわ。早々にさくらちゃんの傍から消え去ってくださいな』
『ほう。どうやらお前もさくらを狙っているようだな。悪いがさくらはもうオレのものだ。さくらの心も体も隅から隅までオレがしゃぶりつくし済みだ。お前の方こそとっとと消えろ!』
『あら。さくらちゃんのお体は今もキレイなままに見えますけど。どの辺をしゃぶってらしたのかしら。ひょっとして夢の中で、なんてオチじゃありませんよね?』
『くっ・・・・・・』
『おほほほ。図星のようですわね。夢の中でしか手が出せずに現実のさくらちゃんのお体には指一本触れられない。とんだヘタレな天狼もいたものですわ。おほほほほ〜〜〜』
『こ、この!』

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言うまでもなく、これは言葉で交わされた会話ではない。
俗にいうテレパシーとも違う。
インスピレーションの交感によるものだ。
オレたち上級の妖魔には人知を超えた共振能力のようなものがある。
それにより言葉よりも早く、正確に一瞬にして互いの思念を交わし合うことが可能なのだ。
どうだ。すごいだろう。
感心したか。
まあ、その相手がこの女で内容がこんなしょーもないものだとあまり自慢する気にもなれないがな。

様子のおかしいさくら。
そこにきてさくらの体から漂う妖気。
あいつに何かされたとしか思えない。
イヤな予感がする。
もっとも、何かとはいっても直接体に何かをされたわけではあるまい。
それならばもっと強い妖気を感じるはずだ。
だが、それだけに性質が悪い。
悪知恵の働きそうなあの女のことだ。
直接魔力を使わずともさくらを惑わすことなど造作もなかろう。
なにかよからぬことをさくらの耳に吹き込んだのかもしれない。
魔法を使わずに言葉で人を堕とすのはあいつら夢魔の専売特許みたいなものだからな。
それに、さくらはなんというか。
天然というか人を疑うことを知らないというか。
ぽややんなところがある。
あいつにとっちゃあまな板の上の鯛が自分で鱗を落としてるようなもんだろうよ。
さくら、お前ちょっと無防備すぎるぞ。
少しは人を疑え。
なに?
お前にそんなことを言う資格があるかだと?
ほっとけ!
オレはいいんだよ。
オレはさくらの特別なんだから。
さくらにとってオレは特別中の特別。
オレに匹敵するのはそうだな、あの兄貴くらいなもんか。
あの兄貴はどうにも苦手だ。
相性の問題ってやつなのかもしれないが。

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夕食が終わり、かなりの時間が経ってもさくらの様子は変わらなかった。
それと、さっき気がついたんだがさくらがオレを見る視線が少し変だ。
時折、チラチラと意味ありげな視線をオレに送ってくる。
どういうことだ?
まさかあの女、さくらにオレの正体を教えたんじゃあるまいな。
それは反則だぞ。
オレたちは人の世の闇に潜んで生きる。
その存在はけっして人に知られてはならない類のものだ。
そのため、妖魔の中ではたとえそれが敵対する相手であってもその存在を人に知らせることはタブーとされている。
それをやってはオレたちの存在自体を危うくしかねないからだ。
あの女もそれは承知しているはずだが。
まさか。

さくらは沈黙し、オレも迂闊な動きをとることのできない気まずい時間が続く。
そうして時計が9時を回ったころ。
ふいにさくらが立ち上がった。
何をするのかと思って見ていたらドアに歩み寄ってガチャリと鍵をかけた。
お年頃の娘ということを考慮してかさくらの部屋には鍵がつけられている。
だけど、ぽややんなさくらは今まで鍵なんかかけたことはなかった。
やっぱりおかしい。
いったい、あいつに何を吹き込まれたんだ。
さくらのおかしな行動はさらに続く。
なんとオレの前でパジャマを脱ぎ始めたのだ。
ポチポチとボタンを外して脱ぎ捨てたパジャマをベッドの上に放り投げた後はブラジャーに手をかける。
フロントフックのブラジャーもパジャマと同じにベッドの上に放った後はパンツも脱ぎ始めた。
な、なんなんだこれは。
いったい、何が起きている?
さくらはぽややんなわりには意外に恥ずかしがり屋なところがあり、これまでオレにも裸を見せることはなかった。
お風呂も別々でおれを洗う時も服を着たままだった。
そのさくらがどうして?
パンツもベッドの上に放った後にあらわれたのは一糸まとわぬさくらの裸身。
すごいキレイだ・・・・・・。
夢の中では何度も堪能してきたさくらの体だけど、こうして現実の世界で見るとやはり違う。
思わず見とれてしまう。
うっとりとしかけたオレの前でさくらはさらに謎の行動をとり始めた。
机の上の包みの中からごそごそと何かを取り出す。
そういえばさっき、下の階に行った時に何かを持ってきたな。
何を持ってきたんだ。
あのケース、あれはバター入れか? それとバターナイフ?

・・・・・・・・・・・・。

裸になったさくら。
バターにバターナイフ。
そしてオレ。
とんでもなくイヤな予感が脳裏を駆け巡る。
あの女まさか。
いやしかし。
だがあいつならばあるいは。
まさかまさか。

さすがにそれはないだろう。
あいつも仮にも女子高生の体裁をとっているんだ。
いくらなんでもそれはあるまい・・・・・・

そんなオレのあまい考えは意を決したかのようなさくらの一言に脆くも崩れ去った。

「あ、あのね。小狼くん。知世ちゃんに教えてもらったの。小狼くんともっともっと仲よくなれる方法・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・。

「ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけどね。こうしてね」

ぺちょ。
恥ずかしそうに胸にバターを塗りつけるさくら。
これはやはり・・・・・・

「しゃ、小狼くんにこのバターを舐めとってほしいの。こ、これがワンちゃんと仲よくなる一番の方法なんだって」

・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

え〜〜っと。
う〜〜んと。
その〜〜〜〜〜〜。
さくら・・・・・・・・・・・・。

あ、アホ〜〜〜〜〜〜!!

アホか!
さくら、お前めっちゃだまされてるぞ!!
そりゃ、バ○ー犬ってやつだ!!
犬と仲よくなる方法なんかじゃない!!
三流アダルトビデオに出てくるエッチぃやつだ!!
それもかなり昔のやつだ!!
最近はそんなのないぞ!!
あいつ、いったいいくつなんだ!!
確信した。
あいつが小学生時代からのさくらの親友なんてのはウソっぱちだ。
記憶を捏造されているに違いない。
このセンス、現役女子高生のものじゃない。
おっさんかおばはんのセンスだ!

「さぁ、小狼くん・・・・・・来て・・・・・・」

さ、さぁって言われても。
それはちょっと。
とか躊躇してもどうやらオレには選択権がないらしい。
ひょいっ、と持ち上げられて顔を胸の前につきつけられてしまった。
こうなったらもうどうしようもない。
え〜〜い、ままよ!

ぺろっ。

「きゃっ」

おっ、さくら。可愛い声をあげるじゃないか。
夢の中で聞くのとはやはり違うな。
そんな声をあげられるとオレもたまらなくなってくるよ。
え〜〜い、もうやけくそだ!

ぺろっ。
ぺろっ。
ぺろぺろっ。

「きゃぁ、しゃ、小狼くん。そんなに舐めちゃだめ〜〜」

ダメとか言われてもなあ。
だいたい舐めろって言ったのはお前の方だぞ。
それを今さら。
ここまできてやめられるかっての。

ぺろっ。
ぺろっ。
ぺろぺろっ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁっ、はぁっ」

塗りつけれられたバターを舐めとるのはけっこう時間がかかった。
真の姿ならともかく、この姿じゃあな。
舌の面積が小さいし。
ちっこい舌に比べて舐めとる面積が広すぎるんだ。
こうしてみるとこいつの胸もけっこう大きいんだな。
オレもちょっと疲れたよ。

だけど。

もちろんこの遊戯はこれで終わりじゃあない。
あの女がこの程度ですますはずはあるまい。
続きがある。
続きとは当然・・・・・・

「ありがとう小狼くん。うん、なんかちょっと小狼くんと仲よくなれた気がするよ・・・・・・」

断言してやる。
気のせいだ。
こんなんで仲よくなれたら世話はない。

「け、けどね。まだ続きがあるの。もうちょっとがんばってね」

やっぱりそうくるか。
言いながら再びバターナイフを手にしたさくらはケースからバターを拭い取る。
次にバターを塗るところ、それはもちろん・・・・・・

ごくっ。

これから起きるであろう事態に反応してノドがあまりお上品でない音をたてる。
あ〜〜もう。
アホらしいとは思っても体が反応するのを止められない。
だって考えてみろ。
あのさくらだぞ。
あの清楚でぽややんで純白でエッチぃことにまるっきり関係なさそうなあのさくらが、恥ずかしそうに自分のあそこにバターを塗ろうとしてるんだぞ。
これに興奮しない男なんかいるかっての。

内心のためらいを示すようにぷるぷる震えるバターナイフがゆっくりと下半身に近づいていく。
あともう少し。
オレの出番はバターが塗られてから。
もう容赦なしだ。
あそこに飛びついて思いっきり舐めまわしてやる。
くそっ。
完全に変態的思考に陥ってるな。
だが、しょうがない。
毒を食らわば皿までってやつだ。
その毒を盛ったのがあの女ってところは気にいらないけど。
あそこまであと少し。
あともうほんのちょっと・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

「やっぱりダメ〜〜〜〜! 小狼くん、ごめんなさい! はぅぅぅぅ〜〜〜〜!!」
「わ、わぅ?」

ドタバタドタバタ
ドタバタドタバタ

ガチャ

たったったったっ・・・・・・・・・・・・

さすがに恥ずかしさに耐えられなかったのか。
バターナイフがあそこまであと少しというところで我に返ったさくらは、ベッドの上に脱ぎ捨られていたパジャマを掴むともの凄い勢いで部屋から飛び出していった。

「うわっ、なんだ怪獣」
「お兄ちゃんどいて!」

お風呂に行ったみたいだな。
体を洗うつもりだろう。
ふぅ。
まったく。
とんだ騒動だった。
やれやれだぜ。
まあ、ちょっと惜しかった気も・・・・・・
い、いや、オレはそんな変態じゃない!
惜しいなんて思ってないからな!

そ、それにしてもあの女〜〜。
さくらになんてこと吹き込むんだ。
許さ〜〜ん!
このオレをバカするやつはどんな目にあうか、たっぷり教えてやる!
この恨みはらさでおくべきか!
いや、だからエッチぃのが中断されたのを怒ってるんじゃないぞ!
プライドの問題だ!
エッチぃことしたかったとか思ってないからな!
本当だぞ!

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さてさて。
そんなしょーもない事件があった翌日の夜半。
友枝町の空は怪しげな瘴気が激突し合う魔空空間と化したのでありました。

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『大道寺! お前はなんてことをさくらに吹き込むんだ!』
『あら。現実のさくらちゃんには手を出せないへたれくんをお助けしたつもりでしたのに』
『うそつけ! どう見てもお前の趣味だろうが! どういうセンスしてるんだ! お前、ほんとうはいくつなんだ。年齢詐称してるんじゃないのか』
『失礼な。花も恥じらう乙女に何を仰いますの』
『花も恥じらう乙女があんなこと考えるか! お前、ほんとはけっこういい年いってるんだろう。このオバハンが!』
『言いましたね〜〜。このへたれ犬!』
『ふん、図星か。図星をさされると逆上するってのはホントみたいだな』
『き〜〜〜っ、この! 言わせておけば!』
『なんだ。やろうっていうのか』
『当然ですわ。大道寺家の辞書に後退の文字なし! その言葉、宣戦布告と判断いたしますわ!』
『ふん。いいだろう。こい!』
『いきますわ!』

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瘴気の激突はそれから数日の間続き、ぶつかり合う瘴気の影響を受けて町の人たちは夜な夜な悪夢にうなされたそうな。

「う〜〜ん。もう食べられないよ〜〜。むにゃむにゃ」

事の発端となった若干約1名をのぞいて・・・・・・

END


例によってツッコミ禁止。
ワンコシリーズにようやく知世ちゃん登場。
したと思ったら悪の化身。
それでこそ知世姫です。

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