『わんこしゃおらん(小狼サイド)・その1』



※注意
本作はパラレルものです。

さくら:高校生の女の子
小狼:さくらに飼われる子犬。でも実は・・・?

という設定です。

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おれは小狼。
どうだ。いい名前だろ。
なんたって古から大陸に伝わってきた名誉ある名前だからな。
そんじょそこらのありふれた名前とは違うぞ。

なに?
ちっこいワンコがなにえらそうなこと言ってるんだ、だと?
名前負けしてるじゃないかだって?
ふん。
これだから下賤な奴らは困る。
見た目で判断しないでもらいたいものだな。
この姿はオレの本当の姿じゃない。
仮の姿だ。
オレは代々、大陸の闇に覇を成してきた魔狼の一族の継承者。
姿など如何ようにも変えられる。
今の姿は人の世を欺くためのものにすぎない。
オレの真の姿のカッコよさはお前らなんかには想像もつくまい。

なに?
そんなに言うならもったいぶってないでとっとと見せろって?
ああ。
そうだな。
オレも真の姿をお前らに見せてやりたいよ。
だけど、今はダメだ。
真の姿に戻ることができない。
真の姿に戻るために必要な魔力を失ってしまっているからだ。
まったく。
オレとしたことがなんとも間抜けなことをしたもんだ。
なんであんなことをしてしまったんだか。
自分でもわからない。
あの時のオレはどうにかしてたのかな。

ん?
下が騒がしくなってきたな。
あいつが帰ってきたのか。
どたばたと相変わらず騒々しいやつだ。
もう少し大人しく階段を登れないのか。

「小狼くんっ」
「わぅ!」
「ただいま、小狼くん! いい子にしてた?」
「わ、わぅ?」

むぎゅ。
ぎゅ〜〜〜〜〜。
ぐむむむ〜〜〜〜。
く、苦しい〜〜〜〜。

はぁはぁ。
なあ、さくら。
いいかげんその「ただいまの抱擁」はやめにしないか。
毎日毎日、恥ずかしいぞ。
それにお前のそのちんまりした胸にぎゅーぎゅー押しつけられてもなあ。
ちょっと嬉しいけど。

まあそれはおいておいて。
こいつはさくら。
オレの飼い主だ。
・・・・・・と思い込んでいる哀れなやつだ。
こいつは自分ではオレを飼ってると思ってるんだろうけど、真実は違う。
オレがこいつを飼ってるんだ。
生きた餌としてな。
オレ達は人の魔力を喰らって生きる。
魔力の素養を持つ人間を見つけたらその人間の生活に忍び込んで秘かに魔力を貪る。
あまり素養のないやつの時は一気に魔力を吸いきってしまうけど、素養の高いやつの場合は時間をかけて吸い取る。
その方がより多くの魔力を搾り取れるからだ。
こいつの素養は最高だ。
これほど高くて純粋な魔力を持ったやつは今まで見たことがない。
100年に一度、いや、それ以上の逸材だ。
最初に見つけたのはこいつの兄貴だった。
あいつもかなりの魔力を持っていたけど、男から魔力を吸う趣味はオレにはない。
なので放っておこうかと思ったんだが、ひょっとして姉か妹でもいないかと思ってついてきたんだがまさにビンゴ。
こいつに会うことができた。

こいつは本当に最高だ。
魔力も最高なんだが、それ以上に素晴らしいのはこいつの身体だ。
ぽややんとした外見からは想像もできないほどの肉の艶を秘めている。
なので魔力を搾り取る方法も自然とそっち方面になる。
くくっ、こいつは自分が何をされてるのか理解してないんだろうな。
夢の中の出来事とたかをくってるんだろうが甘いぞ。
あれはただの夢なんかじゃない。
夢の中のお前はお前の魂そのものなんだ。
魂そのものをオレにさんざんに汚されてるってことだ。
現実の身体を汚されるよりももっと酷い目にあわされてるんだぞ。
わかるか?

「小狼くん〜〜。よしよし」

いや、だからさくら。
それはやめろ。
お腹をなでなでするな。
犬じゃないんだから。
って今は犬だからしょうがないか。

「は〜〜い小狼く〜〜ん。おっきおっき」

だからやめろって。
そんなことされて喜ぶのは子犬だけだから。
オレはそんなんじゃ嬉しくならないから。
でもしょうがないか。
今はこの姿で過ごすしかないからな。
飼い主のご機嫌伺いもしてやらないと。

「はい、よくできました〜〜。小狼くんはいい子ですね〜〜」

うぅぅ。
情けない。
誇り高き魔狼の一族の後継者が子犬の真似ごととは。
とほほ。

もとはといえばオレが魔力を失ったのはお前のせいなんだぞ。
わかってるのか?
わかってるはずないか。
まあしょうがないよな。
あれはオレがオレの意思でやったことなんだから。
まったく。
ホントにあの時のオレはどうにかしてた。
なんで、あんなに必死になってこいつを助けようとしたんだか。
こいつは魔力を絞るための餌じゃないか。
その餌を助けるために肝心の魔力を失ってちゃ意味ないだろうが。
まったく本当に。
なんであんなことになったんだ?

NEXT・・・


続きます。

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