『さくら戦う!』


※注意
本作はパラレルものです。

小狼−高校生
さくら−小狼に拾われた子犬

という設定です。



みなさんこんにちは。
さくらです。

え?
さくらはさくらだよ。
名字?
名字なんかないよ。
だってさくらワンコだもん。
あえて名乗るなら「李さくら」かな。
えへへへ〜〜。

あ、李っていうのはね。
わたしのご主人様の小狼くんの名字なの。
「李小狼」くんっていうの。
カッコいい名前でしょ。
もちろんカッコいいのは名前だけじゃないよ。
本人もとってもカッコいいんだから!

「すーーっ・・・・・・、すーーっ・・・・・・」

このソファでお休みしてるのが小狼くん。
どう? カッコいいでしょ。
カッコいいのは見かけだけじゃないよ。
小狼くんはスポーツもとってもすごくて、サッカーっていうので大活躍してるんだから。
この前、連れて行ってもらったんだけどね。
小狼くん、他の男の子たちを何人もふりきってゴールを決めたんだよ。
カッコよかったな〜〜。
はにゃ〜〜ん。
ホントはさくらのご主人様だから小狼くんなんて呼んじゃだめなんだけどね。
つい小狼くんって言っちゃうの。
小狼くんもさくらが小狼く〜〜んて呼ぶと嬉しそうな顔してくれるし。
小狼くんは小狼くんだよね!

「う〜〜ん、むにゃむにゃ。さくら、そんなところ行っちゃダメだぞ。う〜〜ん」

ふふっ、小狼くんさくらの夢を見てくれてるのかな。
ちょっと嬉しいな〜〜♪♪
やっぱり小狼くんはカッコいいな〜〜。
寝顔もとってもカッコいいよ。

はっ!
そうだ。
こんなことをしてる場合じゃなかったんだ。
そうです。
今日のさくらにはとっても大事な使命があったのです。
さけることのできない、戦いがこれから始まるのです。
そう、敵です!
この小狼くんと二人だけの愛を育むみちゅげつ(*)のお部屋。
(※筆者注:蜜月と言いたいらしい)
そこに侵入してきた敵がいるのです!
恐るべし敵です!
これまでさくらが独占してきた小狼くんとのお話の時間に割り込んでくる敵が現れたのです!
その敵はさくらが小狼くんと遊んでるところに割り込んできて小狼くんとお話を始めてしまいます。
この敵が割り込んでくると小狼くんはさくらのお話を聞いてくれません。
小狼くんはさくらよりもこの敵の方が大事なの?
そ、そんなわけないよね?
そうだよ。小狼くんはこの敵にだまされてるんだよ。
きっと、うまいこと言って小狼くんをだましてるんだよ!
そんなのさくら、許さないんだから!

そういうわけでこれからその敵と決着をつけようと思います。
どちらが小狼くんにふさわしい相手かをこのふぐぅ大胆(*)な敵に教えてやるんだから!
(※筆者注:不倶戴天と思われる)

「すーーっ・・・・・・、すーーっ・・・・・・」

小狼くんは当分起きそうにないね。
今こそ決着をつけるチャンス!
敵は・・・・・・いた!
机の上にのっかってる。
さくらが机の上にのろうとすると小狼くんに怒られるのに。
あなたはいいの?
そんなの不公平だよね。
おまけに専用のベッドまで用意してもらっちゃって。
う、うらやましくなんかないんだからね!
さくらはいつも小狼くんと一緒におやすみしてるんだから。
どう? うらやましいでしょ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

な、なんとか言ったらどうなの!
だまってたってダメだよ。
あなたが喋れるのは知ってるんだから。
昨日も小狼くんとお話してるの見てたもん。
わたしとあなた、どっちが小狼くんにふさわしいか、今日こそ勝負だよ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

む〜〜。
まだしゃべらないつもり?
あ、あれだね。
もくもく権(*)ってやつ!
(※筆者注:黙秘権のことか? どうやらこういう時には難しい言葉を使うものだと思い込んでいるようだ。刑事ドラマか何かに影響を受けたらしい)
そんなの許さないんだから。
もう!
さくら、怒ったぞ〜〜。
そっちがその気なら・・・・・・実力行使だ!

えぃっ!

ぺちっ

かた〜〜ん、パタッ

あ、あれ?
倒れちゃった?
そんなに強く叩いたつもりじゃなかったのに。
だ、大丈夫だよね。
ね、ね、大丈夫?
ケガとかしてないよね?
ね?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ひょ、ひょっとしてケガしちゃったの?
ご、ゴメンなさい!
そんなつもりじゃなかったの。
そんなつもりじゃ・・・・・・
ど、どうしよう?
と、とりあえず起こしてあげないと・・・・・・

ピッ
ピポッ

ほ、ほぇっ?
しゃ、しゃべった?
やっぱりしゃべれるんだね。
大丈夫だった?

ピッ、ピッ・・・・・・

ん?
なんか光りだした?
あなた、いったいなんなの??

ピッ、ピッ、ピッ・・・・・・パッ

あぁぁっ!?!?
お顔が出てきたぁ〜〜!?!?
そ、それがあなたのお顔なの〜〜??
うっ・・・・・・
か、かわいい・・・・・・。
小狼くんが見とれちゃうのもわかる・・・・・・
で、でも!
さくらだって可愛さじゃ負けて・・・・・・
負けてるかも・・・・・・。
で、でもでも!
お声の可愛さならさくらだって負けてないよ!
小狼くん、いつも褒めてくれるもん。

『小狼く〜〜ん』

!?!?!?
やっぱり、あなたちゃんとしゃべれるんだね!
それもとっても可愛いお声で。
そんなの反則だよ〜〜。
こんなに可愛いお顔で、声までこんなに可愛いなんて。
やっぱり、そうなの?
わたしよりこの子の方がお顔もお声も可愛いから?
だからわたしよりもこの子の方が大事なの?
そうなの? 小狼くん?
この子がいたらもう、さくらはいらない子なの?
そんなの、そんなのやだよ〜〜〜〜
うわーーん!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「んん〜〜なんだ、さくら。どうした」

すやすやお休みしていた小狼くんでしたが、突然のさくらの泣き声に目が覚めてしまったようです。
寝ぼけ眼に入ってきたのは机の上でわんわん泣くさくらと充電ケースから外れて転がっているスマフォ。
そこに映っているのは待ち受け画像にセットしておいたさくらの写真。
そうです。
さくらが嫉妬した“かわいいお顔”の正体はさくら自身の写真だったのです。
可愛いお声はもちろん、着信音に設定したさくらの鳴き声。
さくらは自分自身に嫉妬してしまったわけです。
まあ、これは無理もないかもしれません。
人と違ってワンコは鏡なんかそうは見たりしませんので。
小狼くんはわんわん泣きじゃくるさくらをひょいっと抱き上げて優しく撫でてあげます。

「どうしたさくら。そんなに泣いて。お腹でも痛いのか」

うえ〜〜ん、小狼く〜〜ん。
小狼くんはさくらよりもあの子の方がいいの?
あの子がいたらさくらはもういらない子なの〜〜
そんなのやだ〜〜〜〜
さくらは小狼くんと一緒にいたいよ〜〜
うえ〜〜ん

スマフォを指さし(?)ながらなおも泣き続けるさくら。
事情がわからずに困惑していた小狼くんでしたが、しきりにスマフォを気にするさくらと写っているさくら自身の写真から、なんとなくさくらの言わんとするところを察したようです。

ピッ、ピッ、ピッ

スマフォを操作して写っていた画像を別のものと差し替えました。

「さくら、何を気にしてるんだ。こいつがそんなに気になるのか」

だって〜〜。
そんなに可愛い子がいっしょにいたら小狼くん、さくらのこと・・・・・・
ん?
あ、あれれ?
お顔が変わってる?
えぇ〜〜っと、この人はたしか〜〜。
そうだ、山崎くんだ!
小狼くんのお友達。
ん〜〜おかしいなあ。
さっきまで女の子だったのに。
あれ〜〜??

『あははは〜〜。李くん。スマフォって言うのはね〜〜』

この声、やっぱり山崎くんだよね。
山崎くん、どうしてそんなにちっちゃくなっちゃたの?
不思議だなぁ。

「さくら。あんまり山崎をいじめないでくれよな」

そっか〜〜。
山崎くんだったのか〜〜。
山崎くんじゃしょうがないよね。
山崎くんは小狼くんの親友ってやつなんだから。
男同士の友情も大切だもんね。
でも〜〜。
さっきはたしかに女の子だったはずなんだけどなあ。
おかしいなあ。

「さて、そろそろお昼だな。お昼ご飯にしようか。おいで、さくら」

わうぅ!
ごはんだ!
わ〜〜い、わ〜〜い、うれしいなあ〜〜。
今日のごはんはなんだろな〜〜。
わ〜〜い、わ〜〜い。

ごはんと聞いてそれまでの疑問をすっぱりと忘れてしまったさくら。
能天気なワンコです。
ま、しょうがないでしょう。
ワンコのおつむはちっこいですから。
そんなさくらを見ながら

(やれやれ。待ち受けは変えておいた方がよさそうだな。あの写真は気に入ってたんだが)

小狼くんは心の中で溜息をつくのでした。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

さてさて。
そんなわけで小狼くんのスマフォの待ち受け画像はさくらから山崎くんに変更になったわけですが、これにはとんでもない後日譚があります。

「ねえ、見た? 李くんのスマフォ」
「見た見た! 待ち受けに山崎くんの写真使ってるの!」
「あの二人、仲が良くて怪しいと思ってたけどやっぱり!」
「きゃ〜〜! やっぱりそうなのかしら」
「そうよそうよ! なにしろあの二人、小学生の時から一緒なんだから」
「これからもあの二人からは目が離せないわね!」
「二人っきりになる時は要チェックよ!」

さくらの次は女生徒からとんでもない誤解を受けてしまった小狼くん。
これに山崎くんのいたずら心が加わってしょーもない騒動が起きたりするわけなのですが、それはまた別の機会に。

END


ワンコさくら物語でした。
さくらを動物にするならイヌ、ネコどちらでしょう。
なんとなくネコっぽいイメージがあるような気がします。
ここではワンコさくら、ネコさくら両方書いていますが皆様はどちらがお好きでしょうか。

小狼はイヌがお似合いでしょう。
なにしろオオカミですから。
次はワンコ小狼ものでも書こうかと思います。

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