『さくらがんばる』
※注意
本作はパラレルものです。
小狼−高校生
さくら−小狼に拾われた子犬
という設定です。
本作はかけるんworld(翔様)の「さくらいぬ」シリーズより原案を頂いています。
読まれる前にかけるんworldのトップページ→いぬごや→おはなしから
さくらいぬシリーズの小説と翔様の描かれる『子犬のさくら』のイラストを
ご覧になることをお勧めします。
それは小狼の何気ない一言から始まった。
「ん?さくら。お前、少し太ったか?」
太る。
男性はこの言葉にわりと無頓着である。
女性にとってこの言葉がいかに重い意味を持つかを理解していない。
ましてや、愛する男性に言われたらどれほどの衝撃を受けるか全くわかっていない。
今の小狼がまさにそれであった。
彼はただ、愛犬さくらのお腹の心地良いぷよぷよした手触りをそう表現したに過ぎない。
しかし、言われたさくらの方は
「(がが〜〜〜ん!!!)」
脳天をハンマーでぶっ叩かれたようなショックを受けていた・・・
「(太った・・・太った・・・太った・・・)」
「太った」という単語が頭の中でエコーしながら響き渡る。
その顔にはもう、この世の終わりが来た!というほどの悲壮な表情が浮かんでいる。
太った→おでぶちゃん→小狼くんに嫌われちゃう!!!
というかなり短絡的な思考の結果らしい。
「(ダメ〜〜〜そんなのダメ!小狼くん嫌われたくない!やせなきゃ!やせて“はっとーしん”の“のーさつぼでぃ”で小狼くんをメロメロにしないと!)」
・・・どうもテレビでよくやるダイエット番組を見たことがあるようだ。
多分、八頭身とか悩殺ボディの意味はわかってないだろう。
(だいたい八頭身で悩殺ボディのわんこなんぞいないと思いますが・・・)
こうしてさくらのダイエット奮戦記が始まるのであった。
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チャレンジ1:食事制限
「(食べるから太っちゃうんだ。だからご飯を食べなきゃいいの。わあ〜〜〜わたし、あったまいい〜〜〜)」
小狼の一言から一念発起、ダイエットを決意したさくらちゃん。
まずはダイエットの基本、カロリー制限に挑戦です。
しか〜し。
「さくら、おまたせ。さあ、お食べ」
それを邪魔するのが他ならぬ愛する小狼くんの手料理です。
料理名人の小狼くん、いつもさくらちゃんのために手間ひまかけたご飯を用意してくれます。
けっしてドッグフードだけ、などという手抜きはしません。
いつもは嬉しい小狼くんのご飯も今日だけは素直に喜べないさくらちゃんでした。
「(う・・・小狼くんのご飯・・・美味しそう・・・ごくっ。で、でもダメ!食べたら太っちゃう!)」
必死で堪えるさくらちゃんですが、ぷ〜んと漂ってくるあまりにも美味しそうな匂いにお腹がぐーぐー鳴ってしまいます。
「(ひ、一口くらいなら・・・)」
ぱくっ
もぐもぐ
ごっくん!
「(おっいしい〜〜〜!!!やっぱり小狼くんのご飯美味しいよ!もう、一口くらいは・・・)」
ぱくっ
もぐもぐ
「(もう一口くらい・・・)」
ぱくっ
もぐもぐ
「(もう一口・・・)」
※以下、くり返し
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ふふっ、さくら。今日も元気いっぱいだな」
「(はっ!)」
気がついたら出されたご飯をキレイに全部たいらげてしまっていました。
「(うわ〜〜〜ん、ばかばか!小狼くんのご飯が美味しすぎるのがいけないんだよ〜〜〜!!!)」
小狼くんの足をぽかぽか叩きながら必死の抗議をするさくらちゃん。
でも
「こらこら、さくら。食べてすぐに暴れるとお腹によくないぞ」
小狼くんには全然通じてないみたいですね。
チャレンジ1、失敗です・・・
ダイエット教訓その壱:
カロリー制限は大事ですが、あまり急激に食事の量を減らすのはよくありません。少しずつ減らすようにしましょう。
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チャレンジ2:運動
1度や2度の失敗では懲りないさくらちゃん。
今度はダイエットの基本その2、カロリー消費にチャレンジ。
お散歩用の紐をくわえて小狼くんの足をぐいぐい引っ張りお散歩の催促です。
「(いっぱい運動して“かろりー”を燃やせばやせる!ってテレビで言ってたの!だから今日はいっぱい運動しなくちゃ!小狼くん、早く公園に連れてってよ〜〜〜!)」
「さくら、今日は本当にどうしたんだ?朝からずいぶんはしゃいでるけど」
さくらちゃんの必死さに気づかず能天気な感想をもらす小狼くん。
それでも、さくらちゃんが元気なのは小狼くんにとっても嬉しいことです。
お願いどおり早速、公園に連れて行って上げました。
「(さあ、いっぱい運動するぞ〜〜〜!いっぱい運動してやせて小狼くんにキレイだ、って言ってもらうんだから!ふぁいと!!)」
てってけけ〜〜〜
公園に着いた途端、さくらちゃんはわき目もふらずに走り始めます。
あまりの元気さに
「おいおい、さくら。元気なのはいいけど、あんまりはしゃぎすぎるとケガするぞ?」
ちょっと困惑気味の小狼くん。
(どうしたんだ?さくらのやつ。・・・まさか、またテレビでなにか変な情報を仕入れたのか?)
テレビで、というところは正解なのですが、自分の何気ない一言がそもそもの原因だとは気づいていません。
そんな小狼くんの心配をよそにさくらちゃん、一心不乱に走り回っています。
「(やせなきゃ!やせて小狼くんに“かわいい”って言ってもらわなきゃ!)」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「お〜い、さくら。もうそろそろ帰るぞ」
「(はあはあ。ぜいぜい。さすがにこれくらい運動すればいいかな)」
半日近くも公園で暴れまわったさくらちゃん、さすがにちょっとお疲れのようです。
足がふらふらしてます。
そのため、帰り道は小狼くんに抱っこしてもらう羽目になってしまいました。
「(ふぅ〜〜〜今日は疲れたな〜。でも!いっぱい運動したからいっぱいやせたよね!これで小狼くんに“かわいいよ、さくら”って言ってもらえるよね。うん!えへへ〜)」
いっぱい運動する=いっぱいやせる=キレイになる!
かなり安直な公式にご満悦のさくらちゃん。
まあ、この公式はその辺のダイエット番組によく出てきますね。
これはたしかに正しいのです。
でも。
実はこの公式には大きな落とし穴があるのです・・・
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「さくら。晩御飯ができたよ。たくさんおあがり」
「(わ〜い、ご飯、ご飯〜〜〜!うわ〜おいしそ〜〜〜。いっただっきま〜〜〜す!)」
そう、いっぱい運動する=いっぱいお腹が空く=いっぱい食べちゃう!
という落とし穴が・・・
おまけにさくらちゃん、お腹が空きすぎちゃったせいでしょうか?
朝に考えていた、いっぱい食べる=太るの方はケロッと忘れてしまっているようです。
ちっちゃい子だからしょうがないですね。
さらに小狼くん、
「さくら、今日はいっぱい遊んでお腹が空いただろう。少し大目によそってあげたよ」
と余計なお世話をしてくれています。
そして
「(ふぅ〜〜〜。食べた食べた〜〜〜。あ〜〜〜お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった。う〜〜ん、むにゃむにゃ。おやすみ〜〜〜)」
お腹いっぱいになっていい気持ちになったさくらちゃん、あっという間におねむになってしまいました。
ぽてっ。
すぅ―――っ
すぅ―――っ・・・
「さくら、食べてすぐ寝ると牛さんになっちゃうぞ?それにしても今日は本当に元気いっぱいだったな。ま、元気なことはいいことだけど」
はい、アウト!
眠る前にいっぱい食べてはいけません。
あと、運動で消費できるカロリーは実はあんまり大したものではありません。
その分、いっぱい食べちゃったらほとんど意味無いんです。
チャレンジ2、やっぱり失敗です・・・
ダイエット教訓その弐:
運動はもちろん大事ですが、運動で消費できるカロリーはわずかなものです。
運動は定期的に食事とのバランスを考えながら行いましょう。
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翌朝。
「さくら。やっぱりお前、少し太ったか?」
「(ががが〜〜〜ん!!!)」
※以下、くり返し・・・
END
本作品はかけるんworld様の「さくらいぬ」シリーズより原案を頂いています。
かけるんworld様9周年を記念して(そのわりにはアホな話ですが・・・)書かせていただきました。
翔様、ありがとうございました。