『さくらと初夢?』


※さくらいぬシリーズとリンクしています。



「ケロちゃん、いつまでゲームやってるの。もう寝るよ」
「ふぅ〜〜そうやな〜〜。今日はこのへんにしとくか。いや〜〜今日もようがんばったで〜〜」
「なにががんばったよ。1日ゲームしてただけじゃないの。ほんとうにケロちゃんは」
「まあそういうなや。ところでさくら、それはなんや。なんかのおまじないか?」
「これ? これは小狼くんの写真だよ」
「小僧の写真? なんでまたそんなもんを」
「へへ〜〜。ほら、今日は初夢を見る夜でしょ。よく言うじゃない。枕の下に見たい夢の写真を入れておくといいって。それでね」
「夢の中でまで小僧に逢いたいと」
「うん!」
「それが乙女心っちゅうやつか。わいにはようわからんな〜〜。ま、ええわ。そんじゃさくら。おやすみ」
「おやすみなさい、ケロちゃん」

zzzzzzzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzz
zzzzzz
……

―――――――――――――――――――――――――――――――――

ん、んん……もう朝かあ。
う〜〜ん、よく寝た。
結局、初夢は見られなかったなあ。
せっかく小狼くんの写真、知世ちゃんに用意してもらったのに。

うん?
あ、あれ?
ここ、どこ?
わたしの部屋じゃないよね。
でも、見覚えがあるような?
このお部屋……
あ!
ここ、小狼くんのお部屋だ!
なんでわたし小狼くんのお部屋にいるの?
これ、ひょっとして夢?
小狼くんの写真を枕の下に入れてたから?
う〜〜ん、でもあの写真は小狼くんのお部屋で撮ったのじゃなかったけど。
それに。
なにか変だよね。
小狼くんのお部屋には何度も来てるけどどこかいつもと違うような?
なんていうか、こう……

あ!
わかった!
大きさが違うんだ!
机も椅子もすごく大きい!
わたしの背よりもぜんぜん大きいよ。
これ、どういうこと?
この感じ……『小』のカードさんの時に似てるけど。
もしかしてカードが発動しているの?
でも、カードさんの力は感じないよ。
とりあえず、小狼くんに会わないと。
よっこいしょ、っと。
ん?
あ、あれ?
おかしいな。
うまく立てないよ。
な、なんか変だな。
歩きにくい。
身体がどうにかしちゃったのかな。
なんていうか、こう。
身体のあちこちがなんかおかしいような?
た、たしかあっちに姿見の鏡がかけてあったはず。
ちょっと確認しないと。
うんしょ、うんしょ。
よいしょっと。
ふぅ。
動くのも一苦労だよ。
さて、と
一体、なにがどうなってるの?

………
………………
………………………!?

ほ、ほええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!!
なんなの、これ〜〜!!
わたし、ワンコになってる〜〜!!
どういうことなの〜〜!!
もしかして、これ夢なの〜〜??
ゆ、夢だったらほっぺたをつねって……
だ、だめ〜〜
お手手もワンコになってるよ〜〜
この手じゃつねれないよ〜〜

小狼くん〜〜
小狼くん、助けて〜〜

「わん!」

ほぇ〜〜
声もワンコだよ〜〜
わんとしか言えないよ〜〜
で、でも小狼くんに気づいてもらわないとどうしようもないから。

「わんわん!」

小狼く〜〜ん、早くきて〜〜

「おはよう、さくら」

あ、小狼くん!
よかった〜〜小狼くんが来てくれたよ。
小狼くんにはこんな格好でもわたしがさくらだってわかるんだね。
小狼く〜〜ん、助けて〜〜

「わん! わんわん!」
「さくらは今日も朝から元気だな」

しゃ、小狼くん?
なに言ってるの?
わたし、ワンコになっちゃったんだよ?
早くなんとかしないと。

「わんわん! わん!」
「はいはい。そう急かさなくてもわかってるよ。朝ご飯だな。ちょっと待ってろよ。すぐ持ってきてやるからな」

ぜんぜんわかってないよ〜〜
小狼くん、どうしちゃったの〜〜?
わたしがワンコになっちゃったの不思議に思わないの〜〜??
そ、それに。
この状態でご飯って……
ま、まさか……?

「ほら、できたぞ。召し上がれ」

やっぱり〜〜
ワンコのご飯だよ〜〜
とほほ。
いくらなんでもこれはないよ〜〜
で、でも。
ワンコのご飯だけどすごく美味しそうな匂いがする。
さすが小狼くん。
ワンコのご飯も一流だよ。
そういえばお腹が空いてきたな〜〜
美味しそう……
ごくっ。
だ、ダメだよ!
いくら美味しそうでもワンコのご飯なんて。

「どうしたさくら。食べないのか。あぁ、そうか。ちょっと熱すぎたか。少し冷ましてやらないとダメだな」

ほ、ほえ?
冷ますって。
スプーン?
それってひょっとして……

ふーっ、ふーっ

ほえ〜〜やっぱり〜〜
小狼くん、ふーふーしてる〜〜
それ、完全にワンコにご飯あげる時の仕草だよ〜〜

「さあ、さくら。美味しいぞ」

うぅっ。
小狼くんにそんな顔ですすめられたら断れないよ。
食べないわけにはいかないよ〜〜
しょ、しょうがない。
一口だけ……

ぱくっ

〜〜〜〜〜〜!!
はぅ〜〜〜〜
なにこれ〜〜
おいしい〜〜!
すんごくおいしい〜〜!!
さすがは小狼くんだよ〜〜
ワンコのご飯も超一流!

「気に入ったみたいだな。今日はちょっとふんぱつしてみたんだ。そんなにがっつかなくてもまだまだあるぞ」

うん!
食べる!
こんなにおいしいご飯、食べないなんて損だよ。
ちょうだい、ちょうだい!

………………………
………………
………

ふぅ〜〜食べたなあ〜〜
ちょっと食べ過ぎちゃった。
小狼くんのご飯はおいしいからなあ〜〜
つい、食べ過ぎちゃうよ。
お腹いっぱいになるとねむくなっちゃう。
しょうがないよね。
う〜〜ん、ふぅ〜〜
むにゃむにゃ。

って、そんな場合じゃないよ!
まだワンコのままだよ!
このままじゃ、ずっとワンコのままだよ!
小狼くんも気づいてくれないし。
小狼くん、小狼くん!

「わん! わんわん!」
「さくら、ちょっといいか。実はな。今日は大道寺に招待を受けているんだ。それでな。ぜひ、お前も一緒に連れてきてほしいって言われてるんだが」
「わぅ?」

知世ちゃんが?
わたしを連れてきて欲しいって言ってる?

「まあ、いつものあれだと思うけど。すまないけど来てくれるか」
「わぅ〜〜」

う〜〜ん。
小狼くんがこの状態じゃあなあ〜〜
知世ちゃんに会ってもなんとかしてくれるとは思えないけど。
それに。
知世ちゃんがわたしを呼んでるって。
それってもしかして……

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「そうこそいらっしゃいました。李くん。さくらちゃん」
「わん!」
「うふふ。さくらちゃんは今日も元気いっぱいですのね」

はあ。やっぱりかあ。
知世ちゃんもわたしがワンコなのを不思議に思わないみたい。
いったい、どうなっちゃったんだろう。

「礼儀上、一応聞いておくけどな。大道寺。今日の用件はなんだ?」
「それはもちろん。うふふ……」
「わぅ?」

……。
知世ちゃんのあのキラキラしたお目目。
あれって。
やっぱり、あれ?

「わたしが用意したお洋服をさくらちゃんに着ていただくためですわ〜〜!!」
「わぅ〜〜!!」

ほぇ〜〜〜〜
やっぱり〜〜〜〜
わたしがワンコになっても知世ちゃんは知世ちゃんだよ〜〜
小狼く〜〜ん

「やれやれ。やっぱりそれか。さくら、毎度悪いけど、大道寺に少しつきあってやってくれ」
「わぅぅ……」

うぅっ、小狼くんが知世ちゃんの押しに弱いのも変わらずだよ〜〜
わたしがワンコになってること以外、なんにも変わってないよ〜〜
ほんとに。
いったい、どうしちゃったの〜〜??

………………………
………………
………

「やれやれ。大道寺のやつにも困ったもんだな」
「わん!」

ふぅ〜〜。
さすがにちょっと疲れたな〜〜。
いつものことだけど。
でも、やっぱり知世ちゃんはすごいなあ。
わたしがワンコでもワンコにあったあんなに素敵なお洋服を作れるなんて。
それを撮影するのもおんなじだったけど。
それにしても。

「わぅぅぅ……」
「さくら、少し疲れたか」
「わぅ!」
「よしよし。いい子だ。お家に帰ったらゆっくり休もうな」
「わん!」

こうして小狼くんにだっこされてると。
気持ちいい……
あったかくて、優しくて、とっても気持ちいいよ。

トクン……トクン……

小狼くんの胸の音が聞こえる。
この音を聞いてると安心できる。
ここがわたしの場所なんだなって気がする。
とっても落ち着くよ。
わたし、どうなっちゃうのかな。
このままワンコのままなのかな。
それはちょっと困るなあ。

でも。

この優しい音を聞いていると。
それもいいかなあって思っちゃうよ。
ふぁ〜〜
なんだか眠くなってきたなあ。
小狼くんにだっこされたままおやすみ。
やっぱりとっても気持ちいいよ。
小狼くん……

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新シリーズも放映開始ということで今年最初の更新。
一応季節ネタです。
前回のクリスマスのお話と少しリンクしています。

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