『さくらとクリスマス2』


※注意
本作はパラレルものです。

小狼−高校生
さくら−小狼に拾われた子犬

という設定です。



ふ〜ん、ふふふ〜〜ん♪♪
わぅ、わぅっ!

「さくら。今日はまたずいぶんとごきげんじゃないか」
「わぅっ!」

とうぜんだよ小狼くん。
なんたって今日は。

「ひょっとしてクリスマスだからか」
「わん!」

そうだよ!
今日はクリスマス。
とってもおめでたい日だもん!
何がおめでたいのかわからないけど。
でもいいよね。
テレビでもみんなクリスマス、クリスマスって言ってるし。
きっと、とってもいい日だよ!
なんていったって。

「まあ、お前が楽しみにしてるのはクリスマスじゃなくて七面鳥のローストの方なんだろうけどな」
「わ、わぅ!」

うっ、するどい。
さすが小狼くん。
さくらのことよくわかってるよ。
だってだって。
去年のクリスマスの時にくれた鳥のお肉、すっごくおいしかったんだもん!
さくら、あんなにおいしいお肉を食べたの初めてだったんだから。
やっぱりクリスマスってすごいな〜〜いいなあ〜〜って思っちゃったよ。
しょうがないよね。
さくら、育ち盛りなんだから。
おいしいお肉に目がなくてもしかたないよね。

でもね。
それだけじゃないんだよ。
今日はクリスマス。
クリスマスの日には。

「それじゃあさくら。出かけてくるよ。少し遅くなるけどいい子で待っていてくれよ」
「わん!」

うん。
いってらっしゃい小狼くん。
さくらいい子で待ってるよ。
だって。
サンタさんはいい子のところにしかこないから……

―――――――――――――――――――――――――――――――――

わぁ……
雪が降ってきた。
きれいだな。
でも、ちょっと寒そう。
おうちの中は暖かいからいいけど。
小狼くんは大丈夫かな。
それとサンタさんも。
サンタさん、今年も来てくれるかなあ。
うん、来てくれるよね。
さくら、今年もいい子にしてたもん。
来てくれるよね。
去年は無理言ってせっかく来てくれたサンタさんを困らせちゃったけど。
今年は大丈夫!
サンタさんにお願いすることちゃんと考えておいたんだから。
今年こそサンタさんにプレゼントしてもらうよ!

う〜〜ん、それにしてもよく降ってるなあ。
サンタさん、大丈夫かなあ。
まあ、サンタさんならこんなのへっちゃらかあ。
なんたってサンタさんはお空を飛べるんだから。
小狼くんに教えてもらったもん。
サンタさんはトナカイさんのひくそりに乗ってお空を飛ぶんだって。
だったらこれくらいの雪なんかへっちゃらだよね。
でも、こんな日にお空を飛んでるときっととっても寒いよね。
サンタさんも寒いのかなあ。

ごとっ

ほえ?
今、となりのお部屋で何か音がしなかった?

がさっ

やっぱり音がする。
誰かいるよ!

きゅっ、きゅっ

廊下を歩いて。
こっちに近づいてくる!
去年とおんなじこの感じは。

かちゃ

「メリークリスマス。さくらさん」
「わん!」

やっぱりサンタさんだあ〜〜
サンタさん、今年も来てくれたんだね。
うれしいなあ。
う〜〜ん、でも去年とはお洋服が違うような気がするけど。

「毎年同じ格好では芸がありませんからね。今年は歌帆に頼んで少し凝ったものにしてみました。どうです、さくらさん。似合いますか?」

うん!
とってもよく似合ってるよ。
サンタさん、すごくかっこいいよ。
う〜〜ん、でもやっぱりサンタさんはおじいさんってイメージがあるけど。
テレビに出てくるサンタさんはみんなおじいさんだし〜〜。

「まあ、そこはそれ。それよりさくらさん。今年はさくらさんが僕を呼ぶ声がハッキリと聞こえましたよ。何かほしいプレゼントができましたか」

うん!
そうなの。
去年はサンタさん困らせちゃったけど。
今年は、さくらサンタさんにお願いすることずっと考えたの。
それでね。
きまったの。
サンタさんにお願いすること。

「そうですか。それはそれは。では心して伺いましょう。さくらさん。貴方のほしいものはなんですか」

あのね。
サンタさん。
さくら、さくら……
さくら、人間の女の子になりたい!

「!? 人間の女の子に、ですか?」

うん。
あのね。
前にサンタさんが来てくれてからちょっと後のことだったんだけどね。
さくら、夢を見たの。
夢の中でさくら、人間の女の子になってたの。
それでね。
夢の中に小狼くんも出てきたの。
さくら、すっごく感激したよ。
小狼くんをこの手でぎゅ〜〜ってしたかったよ。
でもね。
夢の中のさくらは小狼くんをぎゅ〜〜ってしなかったの。
小狼くんがさくらのこと心配してくれてたのに、さくらはなんにもしなかったの。
せっかく人間の女の子になれたのに。
小狼くんとお手手もつなげなかったの。
すっごく悲しかったよ。

それからなの。
もう一度人間の女の子になりたいって思うようになったのは。
人間の女の子になって今度こそ小狼くんをぎゅ〜〜ってしたい!
そう思うようになったの。
もちろん、そんなのできないってわかってるけど。
でも、でも!
サンタさんだったら!
1日だけでいいの。
お願い、サンタさん!

「う〜〜ん。それはちょっと難しいお願いですね」

やっぱりダメ?
サンタさんなら何でもできるんじゃないの?

「サンタさんも神さまじゃありませんから。できないこともありますよ」

うぅっ、やっぱりダメなの。
さくら、ずっといい子にして待ってたのに。
くすっ、くすん。
サンタさんならなんでもお願いをかなえてくれると思ったのに。

「いや、サンタさんはそういうものじゃないですから。……ん? この感じは? ちょっと待ってくださいね、さくらさん」

なに?
どうしたの。
なにか来るの?

「これは……この羽はもしや……?」

羽?
はねなんかどこにも見えないけど。
サンタさんには見えるの?

「なるほど。僕が呼ばれた理由はこれだったのですね。さくらさん、あなたの願い、どうやら叶いそうですよ」

本当?
ほんとに?
ほんとに人間の女の子になれるの?

「えぇ。少しの間でしょうがなんとかなりそうです。やっぱり、さくらさんはいい子ですね。いい子のさくらさんに神さまが特別にプレゼントしてくれたんでしょう」

わ〜〜い、うれしいなあ〜〜
人間の女の子になれるんだ〜〜
今度こそ小狼くんをぎゅ〜〜ってするぞ〜〜

「願いが叶うのは少し先になりますけど待っていてくださいね。その時がくればわかりますから」

うん!
さくら待つよ!
やっぱりサンタさんはすごいんだなあ〜〜
サンタさん、ありがとう!

「いえ、これは僕の力ではありません。あなたの願いを叶えるのはやはりあなただったということでしょう。それではさくらさん。よいクリスマスを」

ぽんっ

ほえっ?
サンタさんまた消えちゃった。
どこ行っちゃったのかなあ。
あっ!
あんなところに!
すご〜〜い。
やっぱりサンタさんはお空を飛べるんだあ〜〜。
すごいなあ。
あのそりをひいてるのがトナカイさんなのかなあ。
でも、絵本で見たのとはちょっとちがうような?

「エリオル〜〜なんでわたしがトナカイなのよ! トナカイだったらスッピーが適任でしょう? なんでわたしなのよ!」
「ありきたりじゃ面白くないからね。なかなか似合ってるよ、ルビー・ムーン」
「もう! ほんとにしょうがないんだから。それにしてもあんなお願い安請け合いしちゃってよかったの? 大変なんじゃない」
「いや、それは大丈夫だ。さくらさんの願いを叶えるのは僕じゃない。あの『羽』だ。ただ……」
「ただ、なによ?」
「いや、なんでもない(『羽』とともに訪れるサクラとシャオラン。彼らにとってこの世界のさくらさんと小狼との出会いは……)」

シャンシャンシャンシャン……

サンタさん、もうあんなに小さくなっちゃった。
これから他のいい子のところにも行くのかなあ。
サンタさんは大変だね。
がんばってね、サンタさん。

トントントン……

あ!
この足音は!

「ただいま、さくら」

小狼だ!
小狼くん、おかえりなさい!

「よしよし、いい子で待っててくれたみたいだな。いい子のさくらにはお土産だ」

おみやげ?
あ。
くんくん。
このおいしそうなにおいは。

「ほら、七面鳥のローストだ。おいしいぞ」

わ〜〜い。
やっぱり鳥のお肉だあ〜〜。
おいしいお肉だあ〜〜。
わ〜〜い、わ〜〜い。

「よしよし。すぐにお皿に盛ってきてやるからな。ちょっと待ってろよ」

うん!
待ってるから早くもってきてね。
ん、あれ?
さっきもサンタさんに待ってるよって言ったような。
プレゼントをもらうにはちょっと待たないとダメなのかなあ。
う〜〜ん。
プレゼントってそういうもの?
そういえばあの時。
サンタさん少し悲しそうなお顔をした気がしたけど。
あれはなんだったのかなあ。

「ほら、さくら。召し上がれ」

あ、きた!
おいしそう〜〜。

ぱくっ!
むぐむぐ。
ごっくん。

はぅぅぅぅぅぅ〜〜
おいしい〜〜!!

「そんなにがっつかなくても大丈夫だぞ。まだいっぱいあるからな」

おいしい〜〜うれしい〜〜
こんなおいしいお肉が食べられて
それに、サンタさんがさくらの願いもかなえてくれるって
今年のクリスマスは最高だよ!
わ〜〜い、わ〜〜い
うれしいなあ〜〜

END


久々の季節ネタ。
ちょっと続きます。

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