『さくらいぬVS?』



ふあぁぁ〜〜。
あ〜〜あ。
よく寝たなぁ〜〜。
ちょっと寝すぎたかな?
お日様がもうあんなところにいるよ。
お昼ごはん食べた後、すぐに寝ちゃったからなぁ〜〜。
え? 寝すぎじゃないかって?
いいの!
さくら、わんこだもん。
おねむするのもわんこのお仕事なんだから。
でもちょっと寝すぎちゃったかなあ。
お腹がへってきちゃったよ。
小狼くんが置いていってくれたおやつをいただこうっと。
え? 食べすぎ?
いいの!
食べるのもわんこのお仕事なの!
だから、いいの!
小狼くんの作ってくれるご飯もおやつもすごく美味しいんだから。
美味しいおやつは美味しくいただかないと。
それがさくらのお仕事なんだから。
♪♪〜〜♪〜〜
今日のおやつはなにかな〜〜
クッキーかな〜〜
ソーセージかな〜〜
この間のお芋は美味しかったな〜〜
♪〜〜♪♪〜〜
お台所お台所。
っと。

ひょいっ

あれ?
ん?
ん?
んん?
あれれ?

お手手?
足?
お腹?
お顔?
女の子?
あれ?

えぇ〜〜っと。
あ、わかった。
これ、鏡だ。
鏡にわたしが写ってるんだ。
鏡のこと、小狼くんに教えてもらったもん。
鏡にはわたしが写るんだよ。
こうしてお手手を上げると鏡の中のわたしもお手手を上げるの。
鏡って不思議だな〜〜。
手を振るとちゃんと振ってくれるし。
お顔もちゃんと写ってるし。
えへへ〜〜。
今日もわたし、かわいいよね。
これなら小狼くんもかわいいって言ってくれるよね。
うん!
ばっちりだよ。
それにしてもなんでこんなところに鏡がおいてあるんだろ。
小狼くんがおいていったのかな。
でも、こんなところにおいても小狼くんは写らないし。
わたしのためにおいていったのかな?
だったら、よく見ておかないとね。
うん、よく写ってるよ。
わ〜〜い、わ〜〜い。
鏡さん、鏡さん、いっしょにお手手を振って〜〜……

むにぃっ

ほ、ほぇ?
お鼻をつままれてる?
鏡さんに??
で、でもわたし、鏡さんのお鼻なんかつまんでないけど。
え? えぇ?
か、鏡さんが笑ってる?
わたし、笑ってなんかないよ?
え?
あれ?
ち、違う!
これ、鏡じゃない!
ほ、ほぇぇぇ〜〜〜〜

「ふむむ〜〜〜。ぷはっ! はぁ、はぁ」
「くすくす」
「はぅぅ〜〜。いったい、なんなのよ〜〜??」
「わたし? わたしはさくらだよ」
「さくらはわたしだよ!」
「わたしもさくらだよ。ほら」

うっ。
た、たしかに。
このお顔に、お手手に、ちょっとぽっこりしたお腹もふさふさのしっぽも。
たしかにわたしだよ。
わたしがもう一人いる!
なんで〜〜??

「な、なんで〜〜?? なんでわたしが二人になっちゃったの〜〜?」
「わたしはわたしだよ。あなたこそだれなの?」
「わたしがさくらだよ! さくらはわたしだけなんだから!」
「でも、わたしはここにいるよ? あなたはどうなの?」
「ど、どうって」
「わたしがここにいたらわたしがさくらだよ。あなたはわたしのにせもの?」
「にせものなんかじゃないよ! わたしがさくらなんだもん!」
「ほんとうに?」

むぅ〜〜。
さくら、怒ったぞ〜〜。
もう、許さないんだから。
こうなったら実力こうしだよ!
えぃっ!

「この〜〜。えぃ、えぃ!」
「なによ、この。えぃ!」
「えぃ、えぃ!」
「えぃ、えぃ!」

ぽかぽかぽか
ぺこぺこぺこ
ぽかぽかぽか
ぺこぺこぺこ

………………
…………
……

はぁ、はぁ。
だめだ〜〜。
ぜんぜん、勝てないよ〜〜。
負けてもないけど〜〜。
っていうか、あっちもわたしだからいつまでたっても終わらないよ〜〜。
なんで〜〜?
なんでこんなことのなっちゃったの〜〜?
なんで〜〜?

ん?
あれ。
もう一人のわたしはどこ?
さっきまでそこにいたのに。
どこ行ったの?
どこに……はっ!
ま、まさか!

てこてこてこてこ〜〜

「もぐもぐ。ふむふむ。こういうお味なのね」

やっぱり!
わたしのおやつ食べてる!
もう!
油断もすきもないんだから。

「それわたしの〜〜。わたしのおやつ〜〜。食べちゃだめ!」
「どうして? おいしいよ」
「小狼くんが作ってくれたんだもん! おいしいにきまってるでしょ!」
「おいしいものは食べなくちゃ。もぐもぐ」
「食べちゃだめ〜〜。わたしのなの〜〜。わたしが食べるの〜〜」
「もぐもぐ」

あぁ〜〜へってく〜〜。
さくらのおやつがなくなっちゃう〜〜。
わたしも食べるの〜〜。
ぱっ。

ぱくぱくぱくぱく
むしゃむしゃむしゃ
ぱくぱくぱくぱく
むしゃむしゃむしゃ

………………
…………
……

「ふぅ。あ〜〜おいしかった」
「おいしかった〜〜。けど」
「なあに?」
「半分しか食べられなかったよ〜〜。さくらのおやつなのに〜〜」

ふぇ〜〜ん
せっかく小狼くんが作ってくれたおやつだったのに半分しか食べられなかったよ〜〜。
ふぇぇ〜〜ん

「さくらのおやつならわたしのおやつだよ。わたしにも食べる権利があるよ」

だから、なんでそうなっちゃうのよ!
さくらはわたしだけなんだから!

「さくらはわたしなんだから! わたしだけがさくらなんだから!」
「本当〜〜? 本当にそうなの」
「ど、どういう意味?」
「自分が本物のさくらだって自信があるの?」
「も、もちろんだよ。わたしが本物のさくらだよ」
「本当に?」
「本当だよ!」
「本当にそうかなあ。もうすぐ小狼くんが帰ってくるよね。小狼くんにはどっちが本物のさくらかわかるのかな?」

え?
あ、たしかに。
もうこんな時間になってる!
小狼くんが帰ってる時間だよ。
小狼くんが帰ってきたら……
わ、わかるよね?
小狼くんにはわたしが本物のさくらってわかるよね。
さ、さくらにそっくりだけど。
小狼くんにはわかるよね?
見た目なんかにだまされないよね?
そ、そうだよね。
しゃ、小狼くんにはわかる……よね?

ガチャ。

「ただいま」

「あ、小狼くんが帰ってきた。小狼く〜〜ん」

てこてこてこ〜〜

あ、ちょ、ちょっと!
小狼くんをおでむかえするのはわたしだよ!
わたしのお仕事なんだから!
小狼く〜〜ん

てこてこてこ〜〜

「わぅ!」
「わ、わぅ!」
「さくら?」

小狼くん!
わたしだよ!
わたしがさくらだよ!
小狼くんにはわかるよね!
……。
やっぱり驚いてる?
それはそうだよね。
わたしが二人いるんだもん。
驚くよね……って。

ん〜〜??
なんかちょっと違うような?
驚いているっていうよりそのお顔はあきれてる?
あ、あれ? 小狼くん?
なんでそっちを持ち上げちゃうの?
そっちはさくらじゃないよ!
さくらはわたしだよ!
小狼くん!

「まったく。お前は何をやってるんだ」

ぱちん

ぼわ〜〜ん

ほ、ほぇぇ!?
もう一人のわたしが……人間の女の子になっちゃったぁ〜〜??
ううん、違う。人間の女の子じゃない。
なんか透き通ってる。向こう側が透けて見えるよ。
それに浮いてる〜〜。
ほぇ〜〜
いったい、なんなの〜〜??

「わ、わぅ〜〜??」
「やれやれ。いきなりもう一人の自分が出てきてびっくりしてたみたいだな」
「わん!」
「こいつは俺のカードのうちの一人だ。ミラーという」
「わぅ〜〜?」
「ミラーじゃわからないか。ミラーは鏡のことだ。こいつは鏡のカードなんだ」

カードってあの小狼くんが魔法を使う時に出してくるやつ?
鏡のカードさん?
そっか〜〜
鏡の魔法だったんだ〜〜。
だからさくらにそっくりだったんだね。
鏡だもんね。
でも、カードさんって女の子だったの?

「それで? いったい、なんでこんなことしてたんだ。お前は」
「そ、それはその。この方がちょっとうらやましくなりまして」
「うらやましい?」
「はい。この方はいつも主様のお傍にいます。わたしたちよりもずっとお傍に。まるで主様をお一人で占有しているかのように。主様をこのお方にとられてしまうのでは、と思いまして」
「…………」
「あ、あの。その」
「で? 本当のところは?」
「ご、ごめんなさい! 本当はさくらさんにお近づきになりたかったんです! いつもいつも主様だけがさくらさんと遊ばれているのを見てました。そ、それで。わたしたちもさくらさんと遊びたい、お友達になりたい、と思いまして」

わぅ〜〜?
さくらと遊びたいの?
いっしょに遊んでくれるのはさくらも大歓迎だよ。
でも、わぅ?
今、わたしたちっていったよね。
他にも誰かいるの?

「わたしたち? つまり、お前だけじゃないってことか」
「はい」
「他にはどいつだ」
「『光』、『闇』、『風』、『水』、『火』、『土』、『樹』、『幻』、『影』、『翔』、『花』、それから…・・・」
「いや、わかった。ようするに全員だな」
「はい。わたしたちもさくらさんとお友達になりたいんです」
「やれやれだな。これもお前の人徳ってやつか、さくら」
「わぅ?」
「まあ、ちょうどいい機会かもしれないな。さくら。カード達がお前と遊びたいそうだ。ちょっと遊んでやってくれ。クロウの造りしカードたちよ。カードの主、小狼の名をもって命ずる。その姿をあらわせ。……。破ッ!」

ぼわ〜〜ん

ほ、ほぇぇぇ〜〜
いきなりいっぱい人が出てきたよ〜〜
こ、これがみんな小狼くんのカードさんなの?

「はじめましてさくらさん。わたしは『光』。よろしくね」
「わぅ!」
「わたしは『闇』よ」
「こっちの子は『火』。こっちは『水』」
「この子は『跳』。この子は『灯』」
「みんな、さくらさんとお友達になりたかったの。これからよろしくね、さくらさん」

お友達?
さくらのお友達になってくれるの?
あ、お花が降ってきたよ!
これもカードさんなの?
すご〜〜い。
カードさんはすごいな〜〜。
わ〜〜い。
うれしいなあ〜〜。
さくらにいっぱいお友達ができたよ!!

END


クリアカード編に『鏡』登場記念話でした。
『鏡』は旧シリーズでも人気のカードで、またさくらの身代わりやさくらと直接話ができるということでアニメ版ではかなりの出番もありました。
なによりも桃矢の兄貴との絡みが見どころでした。
クリアカード編ではさくらカードが小狼の手元にあるためか出番がこれまでありませんでしたが、ここに来て登場!
しかも、桃矢の兄貴との絡みもまた旧シリーズ同様というサービスっぷりでした。
実は自分の中でも一番のお気に入りのカードでしたが、これまで鏡の出る話は書いてませんでした。
もう少しとりあげたいところです。

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