『ポッキーゲーム・ES』


(※この先、若干ですが少年同士の同性愛的表現を含みますので苦手な方はご遠慮ください)



ゆらゆらゆら・・・

オレの目の前で揺れるポッキーの端。
反対側をくわえているのはやけに紅く見える唇。

いわゆる「ポッキーゲーム」の体勢だ。

昨日はあれほどまでに待ち望んだポッキーゲーム。
だが、それは相手がさくらだったからだ。
他のヤツとやる気にはなれない。

ましてやコイツ・・・柊沢エリオルとは。


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「李くん、ちょっといいですか?」

あぁ、今思えばなんでコイツの呼びかけになんか応えてしまったんだろう。
無視してしまえばよかったんだ。
だけど、コイツにはどうもアヤシイところが多すぎる。
ひょっとして今起きているクロウの事件と何か関係があるのでは?その手がかりを掴めるのでは?
そう思ってついていったのが失敗だった。

校舎裏でコイツが差し出したのは1枚の写真。
そこに写っていたのは・・・

「!?この写真は!!」
「なかなか面白いでしょう」

昨日、さくらにポッキーゲームをスカされて泣きそうになっているオレの顔だった。
ご丁寧に哀れみの視線を向ける大道寺、佐々木、三原まで写っている。

「こんなものいったい、どうやって撮った!あの時、お前は教室にいなかったはずだぞ!」
「いや〜Googleストリートビューで友枝小を見てたら偶然発見したんですよ」
「ウソだぁぁぁ〜〜〜!!!」

絶対ウソだ!
いくらGoogleだって小学校の教室なんか写すか!
それ以前にどう見たって教室の中から写してるだろ、この写真は!

「個人情報漏洩もここまでくると怖いものがありますね。ねぇ、李くん?」
「・・・何が望みだ?」

くそっ!
どうせ、こいつをばら撒かれたくなかったら言うことを聞け、ってんだろ!
さっさと望みを言え!

「ふふふ。貴方は賢い人だ。話が早くて助かりますよ。なに、簡単なことですよ」

そう言いながらコイツが取り出したのは。

「ポッキー?おい、まさか・・・」
「そのまさかですよ。僕とポッキーゲームをしてくれませんか?」
「なんでお前なんかと!」
「嫌なんですか?昨日はあんなにやりたがっていたのに。なんならこの写真を桜さんに見せて僕からお願いしてあげましょうか?」
「くっ・・・!」

・・・というわけで今、ポッキーがオレの前で揺れている。

まったく、男とポッキーゲームがやりたいなんて何を考えてるんだ。
コイツの気が知れない。
まあ、いいさ。
こんなもの、少し端を齧ったら折っちまえばいいんだ。
最後まで付き合うとは言ってないからな。
すぐ終わりだ。

ぱくっ。

ぽりぽりぽり・・・

さて、もういいか。
じゃあこの辺で・・・


・・・・・・・・・・・・!?


お、折れない!?
なんだ、このポッキー?
鉄の芯でも入っているのか?
いや、そんなはずはない。端は普通に齧れる。
なのに折れない。なんで???

ぽりぽりぽり・・・

や、やめろ〜〜〜!
齧るな〜〜〜!
寄ってくる、寄ってくる!
柊沢の唇が寄ってくる〜〜〜!!!
よせ〜〜〜!!!

ああ、神様。再び貴方にお懇願い(おねがい)いたします!
どうか、このポッキーを折っ――――――


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ふふっ、無駄ですよ。
このポッキーにはわたしの魔力を籠めてありますからね。
齧ることはできても折ることはできませんよ。

李 小狼、ですか。
わたしの可愛い子孫よ。
こうして間近に見ると本当に可愛いですね。
まつげも長くてまるで女の子みたいですよ。

それにしても真面目ですね、君は。
嫌ならば口を離してしまえばいいのに。
一度始めたら途中でやめるのは卑怯とでも思ってるんですか?
とてもわたしの血を引いてるとは思えない真面目さですね。
本当に可愛いなあ。

いけない。

私としたことが。
ほんのお遊びのつもりだったのに。
少し、本気になってしまいそうですよ・・・


ちゅ!


あぁ、その顔。
そんなに真っ赤になっちゃって。
なんて可愛らしい顔をしてくれるのですか。
桜さんにも見せてあげたいですね。貴方のその顔。
そんな顔をされると本当に・・・ん?


『ガサッ』


「だ、大道寺〜〜〜!?」
「李くん・・・柊沢くん・・・」
「おや、大道寺さん。これはこれは。とんだところを見られてしまいましたね」
「あらあら。どうやらいいところをお邪魔してしまったようですわね」
「大道寺、違う!これは・・・」
「おほほほほ。それではごゆっくり」

すたたたた〜〜〜〜〜〜

「待て、大道寺!誤解だ!」
「う〜ん、大道寺さんに見られてしまうとは。しくじりましたか」
「・・・本当か?お前、アイツがここに来るのを知ってたんじゃないのか?」
「まさか。偶然ですよ。いや・・・これも『必然』の成せる業でしょうか」
「!?その言い方、どこかで聞いた気がするぞ!お前、一体何者なんだ?」
「そんなことより、いいんですか?大道寺さんを放っておいて。あのままだと桜さんのところに直行するのは目に見えてますよ?」
「うっ・・・くそっ!大道寺、待てぇ〜〜〜!!!」

だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!

ははは、本当に面白い人だな。彼は。
からかい甲斐がある。・・・おや?


『ガサッ』


また何方かいらっしゃいましたか。
今度はどなたですか?

「柊沢くん・・・」
「おや、奈緒子さんまでこんなところへ」
「ねえ、柊沢くん。今、李くんと何かあったの?」
「何か、とはどういうことでしょうか」
「だって李くん、泣きそうな顔で走っていったよ。ここで柊沢くんと何かあったんじゃないの?」

おっと。
少しやりすぎてしまいましたか。
泣かせてしまったとは。
でも、貴方がいけないんですよ、李くん。
貴方が可愛すぎるのがいけないんですよ。
貴方が可愛すぎるから・・・ついつい苛めてあげたくなってしまうんですよ。
こんな風に。

「いえ、大したことはしていませんよ。ただちょっと、彼の『はじめて』をいただいてしまっただけですから」
「は、はじめて〜〜〜!?それって・・・ひょっとして?」
「えぇ。彼のとても大事な『はじめて』を頂きました」
「うわ〜〜〜!やっぱり柊沢くんと李くんって・・・きゃ〜〜〜!!!」

奈緒子さんも相変わらずですね。
これでまた、奈緒子さんの小説に書かれてしまいますね。
まあ、ウソは言っていません。
彼の大事な「はじめてのキス」を頂いてしまったのは本当のことですから。


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それにしてもいけませんね。
このままでは本気になってしまいそうですよ。
それでは私の本来の目的から外れてしまいます。
ちょっとマズイですね。

李くん。お願いですからこれ以上、私を惑わさないでください。

それと、桜さん。
早くご自分の本当の気持ちに気がついてください。
そうでないと私が頂いてしまいますよ?
貴方の『本当の一番』を。

END


超思いつき話その2。
構想10秒、下書き20分、清書1時間。
元ネタは某サイト様で見たE(エリオル)×S(小狼)のポッキーゲーム絵&週間アスキー連載の「ハニカム」の後書きです。

「E×Sには萌えがない・・・そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」

追記:
この話をアップした直後にそのサイト様を見たらE×Sポッキーゲームの絵がGIFアニメ化されてました・・・
揺れてます。小狼の目の前でポッキーが揺れまくってます・・・。
小狼の心境や如何に。

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