『オオカミと七匹の子ヤギ(小狼編)』


世界迷作劇場その7改 オオカミと七匹の子ヤギ

キャスト
お母さんヤギ:夜蘭さん
子ヤギ:チビ小狼×7
オオカミ:さくら

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むかしむかしのその昔。
森の中にお母さんヤギと七匹の子ヤギが住んでいました。
ある日、お母さんヤギは街にでかけることになりました。
お母さんヤギは子ヤギたちに言いました。

「小狼、わたしはこれから街に出かけてきます。留守を頼みましたよ」
「「「「「「「はい、母上」」」」」」」
「それから、最近このあたりに性質の悪いオオカミが出るという噂があります。充分に気をつけるのですよ」
「「「「「「「わかりました。母上」」」」」」」
「では行って来ます」

さて。
お母さんヤギが家を出てからしばらくたったころ。
ひょっこりと顔を出したのは問題のオオカミさんです。

「うふ、邪魔者はいなくなったみたいね。それじゃあ、美味しそうな子ヤギさんたち、み〜〜んないただいちゃおう!」

オオカミさんなにやら物騒なことを口にしていますね。
でも、なんというかこのオオカミさん、ちょっ〜〜と迫力が足りない感じがします。
こんなのであの利発そうな子ヤギさんたちに対抗できるのでしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・

さてさて。
そろ〜りそろ〜りと抜き足差し足忍び足でドアへ辿り着いたオオカミさん。
トントンと玄関の戸を叩いて子ヤギさんたちに声をかけます。

「ただいま。お母さんだよ。今、帰ったよ」
「母上と声が違うぞ。お前、ニセモノだな!」
「うっ・・・・・・」

あっさりと擬態を見破ってしまう子ヤギさん。
やはり、そこらのお子様とはちょっとばかりモノが違います。
初戦はオオカミさんの負けのようです。
でも、この程度であきらめるオオカミさんではありません。
街で声を変える魔法のチョーク(なんでそんなものが売ってるんだ?)を買ってきたオオカミさん。
チョークで声を変えて再びドアの前へ。

「ただいま。お母さんだよ」
「母上はそんなしゃべり方はしない。このニセモノめ。とっとと失せろ!」
「くぅ〜〜〜〜!」

またもやあっさりと見破ってしまう子ヤギさん。
ホントに小憎らしいお子ちゃまですね。
二回戦もオオカミさんの完敗となってしまいました。
ドアの前で悔しそうに地団駄を踏むオオカミさん。
そんなオオカミさんを子ヤギさんたちはカメラで見ながら笑いものにしています。

「バカなやつだ。見られてるとも知らずに」
「間抜けなオオカミだな」
「ははっ、見ろよ。あの悔しそうな顔」

そう、実はヤギさんのお家は防犯設備も完璧。
ドアの前には防犯カメラがついてて訪問者の姿が丸見えなのです。
だから、声とかしゃべり方とかぜんぜん意味なかったんですね。
子ヤギさんたち、ちょっと性格悪いかも。

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さてさて。

「もう、あったまきた! こうなったら実力行使だよ!」

まだまだめげないオオカミさん。その根性だけは立派なものです。
正攻法はあきらめたのか、庭に生えてる木をヨジヨジとよじ登ると、枝からひょいっと家の屋根へと飛び移りました。
どうやら煙突から侵入する気のようです。
煙突にギューギューとお尻を押し込み始めました。
なんかもう、別のおとぎ話とごっちゃになってるような気がするのですが。
あんまり無茶なことはしない方が・・・・・・

「うんしょ、うんしょ。よし、入れた! うふふ、今度こそ絶対大丈夫なんだから! いっくよ〜〜!」

ずりずり。
ずりずり。
ひゅ〜〜〜〜
どっしーーん!!

「いたたた。でも、ようやく入れたよ。さあ、子ヤギさんたち! もうおしまいだよ! みんな食べちゃうからね!」

煙突の中をずり落ちてついに家への侵入を果たしたオオカミさん。
あとは可愛い子ヤギさんたちをいただいてしまうだけ。
もはや子ヤギさんたちの命は風前の灯! ・・・・・・のはずだったのですが。

「れ? れれ? あれれ? な、なんなの、これ〜〜〜〜!?!?!」

オオカミさん、子ヤギさんに襲い掛かるどころかその場で立ち上がることすらできません。
よく見ると、何か糸みたいなものがオオカミさんの全身に絡み付いています。
防犯用のネットでしょうか。
よほどに丈夫に出来ているのか、オオカミさんが暴れても破れません。
もがけばもがくほどに絡まっていきます。

ジタバタともがくオオカミさん。
そんなオオカミさんの前にズラッと並んだのは剣を構えた子ヤギさん×7。

「こんなこともあろうかと思ってな。煙突には罠を仕掛けておいたんだ」
「暴れても無駄だ。そのネットは絶対に破れないぞ」
「この悪者め。覚悟しろ!」

ありゃりゃ。
こりゃあ、風前の灯なのはオオカミさんの命の方っぽいですね。
やっぱり、相手が悪かったってことでしょうか。
剣を手ににじり寄る子ヤギさんたち。
鈍い光を放ちオオカミさんに迫る七本の剣。

「ほ、ほぇぇぇ〜〜〜〜っっ!!」

オオカミさん絶体絶命!
というところでタイミングよくお母さんヤギが帰ってきました。

「小狼。今帰りましたよ」
「あ、母上。お帰りなさい」
「なんですか、そこにいるのは。一体、何があったのです。説明なさい小狼。」

お母さんヤギ、暖炉前にころがるオオカミさんを見ても驚いたりしません。
静かに子ヤギさんに説明を求めます。
それだけ子ヤギさんたちを信用しているのでしょう。

「はい。こいつは・・・・・・」

お母さんヤギにことの一部始終を説明する子ヤギさん。

「ごめんなさ〜〜い。出来心だったんです〜〜。もう二度と悪いことしませんから許してください〜〜」

その脇からお母さんヤギに涙ながらに訴えかけるオオカミさん。
融通のきかなそうな子ヤギさんよりも、お母さんヤギの方が助けてくれる可能性が高いとふんだようです。
しばらくはふむふむと子ヤギさんの説明を聞いていたお母さんヤギでしたが、説明を聞き終わるとオオカミさんに向き直りました。

「話はわかりました。お前が最近、噂になっている悪いオオカミですね」
「悪いオオカミなんて、そんな〜〜。わたし、これまで一度も悪いことに成功してないんです〜〜。ホントなんです〜〜」
「悪いことをしようとしたことに変わりはありません」
「こ、これからは心を入れ替えます! 真面目に働きます! だから助けてください〜〜」
「本当ですか」
「本当です!」

もちろんウソです。口からでまかせです。
ホントなのは悪いことに一度も成功していないのところだけです(ポヤヤンだから)。
オオカミさん、この場だけ言い繕って逃げちゃえば後はどうにかなると思ってます。
しょーーもないオオカミさんですね。
そしてもちろん、このお母さんヤギにそんな甘っちょろい考えが通じるわけがありません。

「わかりました。ちょうど召使が一人欲しいと思っていたところです。心を入れ替えてうちで働くというならば許してあげましょう」
「あ、ありがとうございます! わたし、しっかり働きます!」
「それでは。玉帝有勅神硯四方・・・・・・ハッ!」

お母さんヤギが呪文を唱えるとあ〜〜ら不思議。
どこからともなく現れた金属のわっかがオオカミさんの首にすぽっとはまり、そのままキュっと締まって首から抜けなくなってしまいました。

「な、なんですか、これは〜〜」
「それは緊箍(きんこ)。その昔、孫悟空の頭にはまっていたのと同じものです」
「ほ、ほぇ?」
「いいですか。お前がここから逃げようとしたり、小狼の言うことに逆らったりするとそれが絞まりますからね。真面目に働くのですよ」
「えぇぇぇ〜〜!?!? そ、そんなぁぁ〜〜〜〜」
「真面目に働くならなんの問題もないでしょう。それとも、さっきのは口からでまかせだったとでも言うのですか? それなら・・・・・・」
「い、いえ、そんなことはありません! 真面目に働きます〜〜」
「では。小狼、この娘はお前たちの自由にしなさい」
「「「「「「「はい、母上。ありがとうございます」」」」」」」
「トホホ・・・・・・」

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・・・・・・

さてさて。
こうしてヤギさんの家で働くことになったオオカミさん。

「さくら、ご飯はどうした」
「はい、小狼さま。ただいま用意いたします」
「さくら、ここが汚れてるぞ」
「はい、小狼さま。すぐにお掃除します」
「さくら、疲れた。肩をもめ」
「はい、小狼さま」
「さくら」
「さくら!」
「おい、さくら!」
「はいはい。って一度にそんなに呼ばないで〜〜。同時にそんなに相手にできないよ〜〜」
「なんだと。オレに逆らうつもりか? それなら神硯四方・・・・・・」
「く、苦しい〜〜。やめてぇぇぇ〜〜。わっかを絞めないでぇぇ〜〜〜〜」
「お前、まだ自分の立場を理解してないようだな。いいか。お前はオレたちのオモチャなんだ。オモチャはオモチャらしく、ご主人様の言うことを聞いてろ。わかったか!」
「わかりました〜〜。ふぇぇぇ〜〜ん。なんでこんなことになっちゃったの〜〜〜〜? え〜〜ん」

なんでってそりゃあ、あなた。
全部、自業自得というものでしょう。
狙う相手はよく選ぶべきでしたね。
まあ、オオカミさんにやられちゃうような相手はこの森にはいないと思いますけど。

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さてさて。
この後、オオカミさんには色気づいた子ヤギさんたちに

メイドさんごっこ

お医者さんごっこ

エッチ スケッチ ワンタッチ

というスーパーコンボを喰らわせられる運命が待っているのですが、そのお話はまた別の機会に。

ハッピーエンド?


ネタが三匹の子豚とちょっとかぶったような。
オオカミは童話では悪役の場合が多いですね。
いまさらながら小狼=小さいオオカミなことに気がつきました。
小狼はオオカミ役の方が似合うか?

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