『消』


(※本作はテレビ版第1シリーズ23話(桜都国編)「消えゆくイノチ」を元にしています。
この話は原作とは異なる展開だったので原作派の方はご注意ください。
原作では星史郎に刺された時は小狼1人でしたが、
テレビ版では星史郎に刺されて消滅する小狼にサクラが駆け寄って一緒に消滅する、
という展開になっています)



あれは、小狼くん?
小狼くん刺されて・・・!?

いやぁ!!

小狼くんが・・・小狼くんが消えちゃう!

「小狼くん!」
「ダメだ姫!来てはいけない!姫、逃げてください!」
「ううん、いや!」

いや・・・小狼くんがいなくなっちゃうのはいや!

「でも、このままじゃ・・・」
「・・・いいの・・・」
「姫・・・」


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


消える。
わたしの体が消えていく。
わたし、このまま死んじゃうのかな。
ちょっと怖いな。
でも・・・でも、いいの。
小狼くんといっしょなら。
だから小狼くん、そんな顔しないで。

いやだったの。ずっと。
わたしの羽を集めるためにみんなが危ない目にあうのが。

黒鋼さんが
ファイさんが
モコちゃんが

なによりも小狼くんが危ない目にあうのがいやだったの。
小狼くんが怪我をする度にいつも思ってた。
いつかわたしのために小狼くん、とり返しのつかないことになっちゃうんじゃないかって。

黒鋼さんにも、ファイさんにも、モコちゃんにも危ない目にあってほしくないし怪我もしてほしくない。
でも、小狼くんは特別。
小狼くんだけは何があっても絶対に無事でいてほしい。
たとえ、他のみんなを失うことがあっても小狼くんだけは助かってほしい。
そう思ってたの。

なんでかな?
変だよね。
わたし、小狼くんのこと全然憶えてないのに。
でも、わかるの。
わたしにとって小狼くんは特別だって。
もしかしたら、記憶を失くす前のわたしもそう思ってたのかな。
ひょっとしてわたし、小狼くんのこと・・・


―――!?


あれ?わたし、今なにを考えてたんだろう。
たしか、小狼くんのこと・・・
記憶を・・・失くす前も・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


―――――――――――――――――――――――――――


目を覚ましたら全然知らないところにいた。
あたりは真っ暗で何も見えない。
ただ、桜の花びらが舞い散っている。
ここが天国ってところなのかな。
なんにもないみたいだけど。

そうだ、小狼くん!
小狼くんは?
いっしょに来てくれなかったの?
小狼くんは・・・いた!


え?
あれ、小狼くん?
小狼くんが二人いる?
それにあそこにいるのは・・・わたし?

!?
なんで?
なんで小狼くん同士で戦ってるの?
どうして?
あそこにいるのは本当に小狼くんなの?
あれは本当にわたしなの?
なんで?
いったい、ここはどこなの?

!?
わたしの羽!
小狼くん、なにをしてるの!?
世界が崩れて・・・
小狼くんが、小狼くんを・・・・・・!!

いやぁっ、やめてぇっっ!

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

―――――――――――――――――――――――――――


再び目を覚ました時にはまた別のところにいた。
なんだかわからない機械の中に入ってる。
今度は・・・どこ?

『ゲスト番号β435690死亡。桜都国から強制退去となりました』

桜都国?
まだ桜都国にいるの?
だったら、さっきのはいったい?
その時、誰かがわたしを呼んだ気がした。
この声は・・・

「姫!」
「小狼くん!」

小狼くん!小狼くんがいる!生きてる!

「小狼くん・・・」
「姫・・・よかった無事で」

小狼くん・・・小狼くんがわたしの前で笑ってくれてる。
さっきのあれは、やっぱり夢だったんだ。
よかった・・・・・・


―――――――――――――――――――――――――――


それからファイさんと千歳さんという人が「妖精遊園地」について説明してくれた。

「では、オレたちがいた桜都国は」
「あれは仮想現実です」
「さっきの卵みたいなものに入ってみる夢みたいなものだって」
「あれが・・・夢」

あれが・・・夢?
譲刃さんも、龍王さんも、草薙さんも、猫の目も、鬼児もみんな夢?
あんなにはっきりしてたのに?
あれが夢なの?

そして千歳さんは「妖精遊園地」に迫る危機についても教えてくれた。
仮想現実が、夢の世界が現実になろうとしていると。
おそらくはわたしの羽の力によって。

夢が現実のものになる・・・・・・
だったら、さっき見たあれは?
あの『夢』は・・・?
ううん、あれは本当に夢だったの?
あれはひょっとして未来の・・・?

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


ッッッ!!!


強い衝撃。
建物の外で何かが起きたみたい。
ファイさんと千歳さんはあわてて外に駆け出していった。

「姫、オレたちも行きましょう!」

そう言って小狼くんはわたしに手を差しのべてくれた。

この手
この手だ。
さっきの夢の中でわたしを刺した手は。

二人いた小狼くんのうち、一人は小狼くんじゃない。
そっくりだったけど違う。
あれは小狼くんじゃない。
わたしを刺したのは・・・この小狼くんだ。

いつかあの夢が現実になるならば、わたしは小狼くんに刺される。
小狼くんに刺されて消える。

それでも

「うん。急ごう小狼くん!」

たとえ、それがわたしの運命でも
わたしは小狼くんといっしょにいたい・・・

いっしょに行くよ小狼くん
いつか、あなたの手で消されるその日まで。

END


すいません、暗い話になってしまいました。
ツバサの二人は今の悲壮な展開が頭にあるせいか幸せな話が考えにくいです。
ツバサの小狼とサクラらしく、と考えるとどうしても暗い方向にいってしまいます。
バカギャグかBL(黒鋼×小狼とか龍王×小狼、星史郎×小狼もありかも)だったらいくらでも書ける気がするのですが。
やはりツバサは前半の桜都国かピッフルワールドあたりが幸せでよかったです。
OVA、日本国編よりもテレビシリーズでやってくれなかった偶像の国編やってくれないですかね。

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