『祈』


(※この先、マガジン本誌のネタバレを含む内容なので単行本派の方はご注意ください)























『さくらを助けてください!』

・・・
・・・誰だ
誰が喋ってるんだ

『行きます。さくらは絶対死なせない!』

これは・・・
俺か
俺が喋ってるのか
さくら
・・・誰だ?
とても、とても大切な名前だった気がする

さくら・・・

『あなた、だぁれ?』

!?
なんだ、今のは?

『・・・知らない人なのに・・・?』

まただ
痛い
どこかが痛い
痛い・・・
イタイ?
イタイってなんだ?

『やらなきゃならねえことがあるんなら前だけ見てろ』

この男は?
強い
とても強い
それがわかる
でも、どこか優しい
ヤサシイ?
ヤサシイってなんだ?

『小狼くんは小狼くんにできることをやればいいんじゃないかな』

この男も誰だ
誰・・・?
いや、知っている
俺はこの男を知ってる

『しゃ〜おらん』

この生き物も
知ってる
知ってるだけじゃない
ずっと・・・ずっと一緒にいた

黒鋼さん・・・
ファイさん・・・
モコナ・・・

そして・・・

『ずっと小狼に言いたいことがあったの』

!?
あれは・・・
あれは!

『あなたがス・・・』



さくら!!



思い・・・出した・・・・・・
さくら・・・
俺の
俺の一番大切な人
絶対に守る、そう誓った人

なのに
なのに・・・


――――――――――――――――――――――――――――――


「何故・・おれを・・・・」
「・・・・続きが知りたかったからだ・・・あの時聞けなかった言葉の続きを・・・」

血とともに力が抜けていく。
痛みはない。
造られた存在である俺に痛みという感覚は無い。
体は痛みを感じない。
なのに、別のところが痛い。

さくら

君を失った心がとても痛い。
心・・・ココロか
造られた存在である俺に心があるのか。

父さんごめん。
俺は多分、父さんのいるところには行けない。
人でない俺は人と同じ天国には行けない。

でも、さくら。
君のいるところには行くよ。
造られた者同士、君と同じところには行けるはずだから。

「黒鋼さん・・・ファイさん・・・モコナ・・・」

みんな・・・ごめん。
もう俺はみんなと旅を続けられない。それに

「さくら・・・『小狼』・・・」

さくら・・・本物の俺。

「ごめんな・・・・・・さい」

ごめんなさい、みんな。
そして

「ありがと・・・」

・・・ありがとう。


ツバサを書く気はなかったのですが、写し身小狼・さくらの復活を祈って書きました。
この二人が救われずに「ツバサ」という物語が終わることは出来ない、と信じています。

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