金の斧


世界迷作劇場その10 金の斧

キャスト
正直な木こり:小狼
泉の精:侑子さん(特別出演)

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昔々のその昔。
あるところに一人の木こりが住んでいました。
この木こりさんは真面目で働き者のうえにとても正直な若者でした。
真面目すぎてちょっと融通がきかないところもありましたが、それもこの若者のいいところといえましょう。

さてそんなある日のこと。
最近新しく見つけた泉のそばの働き場でカッコンカッコンと木を切っていた若者ですが、ふとしたはずみに手を滑らせて斧を泉に落としてしまいました。

「しまった」

後悔してももう遅い。
斧がないと仕事になりません。
若者が途方にくれていると

ぽわわわ〜〜ん

怪しげな効果音とともに泉から女神があらわれたではありませんか。
驚く若者に女神様は話しかけます。

「これそこの小僧。そんなところでなにをしている」
「はい。実は斧をこの泉に落としてしまいまして」
「それは難儀だな。ちょっと待っておれ。が見てきてやろう」
「ありがとうございます」

渡りに船とはまさにこのことかと若者は大喜びです。
しばらくすると泉から再び女神様が浮かび上がってきました。

「小僧。お前が落としたのはこれか」

そう言いながら女神様が差し出したのは。
ぴっかぴっかに光り輝く金の……剣?

「いや、おれが落としたのは斧なんですけど。それ以前になんですかその剣は」
「ん? 知らんのか。これが約束された勝利の剣、通称エクスカリバーだ。アーサー王の物語に出てくるであろうが。有名だぞ」
「なんでそんなものがここに」
「泉に投げ入れられた剣といったらこれしかあるまい。で、どうだ。これか?」
「だから違います。おれが落としたのは斧です。斧。剣じゃありません」
「そうか。ではもう少しまっておれ」

身を返してまた泉に潜って行く女神様。
その姿に木こりさんはなんかいや〜〜な予感を感じるのでした。
こういう予感はよくあたります。
ここは逃げた方がいいかもと思うきこりさんでしたが、ひょっとしたらただのボケかもしれないと思い直して女神様を待ちます。
しばらくしてからあらわれた女神様、今度はちゃんと斧を持っていました。

「待たせたな。お前が落としたのはこの斧か?」
「…………」

そう言って差し出された斧を前にして若者は絶句してしまいます。
それもそのはず。
女神様が持ってきたのはたしかに斧です。
ですがどう見ても普通の斧には見えません。
まず、柄が長すぎます。普通の人の身長と同じかそれ以上はありそうです。
柄の先についた刃も大きすぎです。
おまけに柄の両方に刃のついた双刃の斧で、その刃のするどさときたらもう。
どこからどう見ても木こりさんが使う斧ではありません。
メカザウルスとかインベータ―をぶった斬るのに使うやつです。

「な、なんなんですか。その物騒な斧は」
「あら、知らないの? ゲッ○ートマホークよ」
「なんでそんなものがここに……」
「ダイナ○ックプロから借りてきたの。アニメに出てくる斧といったらこれしかないでしょ。海から腕組みしたゲッ○ードラゴンが出てくるシーンは有名よ」
「いや、それおれに関係ありませんから。それにここ海じゃありませんし」
「しょうがないわねえ。もうちょっと待ってなさい」

言いながら三度泉へ潜って行く女神様。
さすがに若者もこいつはやばいと思うのでしたが、でも自分のためにやってくれているんだしと思うと無下に逃げるのもどうかという気もします。
そうこうしているうちにまた浮かび上がってきた女神様、今度という今度はようやく若者が落とした斧を持っているのでありました。

「どうだ。お前が落としたのはこの斧か」
「そうです! おれが落としたのはその斧です。あぁ、ありがとうございます」

落とした斧を取り戻して大喜びする若者。
そんな若者を見ながら女神様はにんまりと唇を歪めます。
う〜〜ん、なんかめっちゃ悪そうな顔をしてますね〜〜。
若者、斧に気がいってしまって女神様が見えていません。
なんかやばそうな感じですが。

「これ、若者よ。お前は正直な男だな」
「いえ、それほどでも」
「いやいや。お前のように正直な者は今時はそうはおらん。気に入ったぞ」
「そ、そうですか」
「その正直さに褒美をくれてやろう。ほれ、くるしゅうない。ちこう寄れ」
「褒美? なんです?」
「フフフ……。正直なお前への褒美は……これだっ! 侑子カリバー!!」

ぴか〜〜ん
ズバァァァッッッ!!

無防備に近寄った若者に向けて女神様は隠し持ったエクスカリバーを一閃!
黄金に輝く剣先から放たれた鋭い剣戟が若者を襲う!

「うわっ!」

かろうじて一閃をかわした若者ですが、その背後の木々が放たれた剣戟になぎ倒されていきます。
これには若者も吃驚仰天。

「な、なにをする!」
「やっかましい! 人がちょっと仏心を見せてやったらいい気になりおって。ここに斧を落としたアホはお前で何人目だと思ってる! もう堪忍袋の尾が切れたわ!」
「そんなのおれに関係ないだろ! おれは本当に斧を落としただけだ!」
「しったことか! 運がなかったと思ってあきらめなさい! 侑子カリバー!」
「うわわっ!」

ああ、なるほど。そういうわけでしたか。
どうやら例のお話が有名になりすぎて真似してここに斧を投げ込む輩が頻発したみたいです。
女神様、それにもう我慢ならないところだったようです。
そんな時に斧を落としてしまうとはこの若者もついてませんね。
まあ、そんな間の悪さもこの若者らしいと言ってしまえばそこまでですが。

「この、ちょこまかと。カリバー、カリバー、侑子カリバー!」
「うっ、く、くそっ」
「いい加減にあきらめなさい。侑子カリバー!!」

女神様はカリバー連発で若者を追い詰めていきます。
これにはさすがに若者の方も頭にきたようです。

「だ、誰が! いい気になるな、このオバン!」
「な、なんですって〜〜」
「なにが侑子カリバーだ。セ○バーのつもりか? 全然似合ってないぞ」
「きぃ〜〜〜〜」
「セイ○ーって歳か! F○teでの適役は誰がどう見たってキャスターしかないだろ! 歳を考えろ、歳を!」

とんでもない暴言を吐いてしまうのでありました。
いや〜〜、なんといいますか。
本当に正直ですねぇ、この若者は。
しかし、この場合あまりにも正直すぎるのはどうかと。
たしかにFa○eで侑子さんに似合うのはキャスターしかないとは思いますが。
それを本人の前で言ってしまうのは。

「………………ブチッ!」

案の定、女神様ブチギレ。
怒りで気力ゲージはメーターをぶっち切ってMAX状態。
エクスカリバーを投げ捨て、手にしたゲッ○ートマホークが殺意をはらんだ鈍い光を放ちます。

「フフフ、そうよねぇ。やっぱりわたしにはあれは似合わないわよねぇ。趣味に合わないし。わたしの趣味に合うのはこっちよねぇ。フフフ……」
「そ、そんなもので何をする気だ」
「フフフ……。喰らいなさい! ファイナルゲッタートマホーク!」
「う、うわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っっ!!」

ピカッ
どっかぁぁぁ〜〜〜〜〜ん!!

………………………
………………
………

その日、泉のほとりが広範囲に渡って焼き払われるという事件が起きましたが原因は今もなお不明なままです。

今回の教訓:
「正直もほどほどに」

おしまい


Fate、スパロボとクロスオーバー作品!
ということにしておきましょう。

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