『竹取物語』


日本迷作劇場その6 竹取物語

世界迷作劇場その4 かぐや姫

その1
キャスト
おじいさん:小狼
おばあさん:知世
かぐや姫:さくらいぬ

今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。翁、竹林の中に光り輝く竹をみつけたり。翁、不思議に思いて竹を手にすると竹の中から女の童あらわれり……

むかしむかしのその昔、あるところに竹を取って暮らしているおじいさんとおばあさんがおりました。
おじいさんがある日、竹林に出かけてみるとどういうことでしょうか。
竹林の中の竹の1本が光り輝いているではありませんか。

「おぉ、これはいったいどうしたことだ」

不思議に思ったおじいさんがその竹を手に取ると

ぱかっ

ときれいに割れてしまいます。そして、その中にいたのは

「わぅ〜〜ん。わん、わん!」

とってもかわいいワンコなのでした。
これにはおじいさんも吃驚。

「わぅ〜〜?」
「うっ。か、かわいい……」

上目遣いにおじいさんを見つめるワンコのかわいい仕草におじいさんは一発でノックアウト。
なんともちょろいおじいさんです。

「よし! これもなにかの縁だ! 今日からお前はうちの子だ!」
「わぅ〜〜ん。わん、わん!」

こうしておじいさんは竹から生まれた女の子を家にお持ち帰りするのでした。
さて、女の子をうちに連れ帰るとおばあさんも当然びっくりします。

「まあ、おじいさん。その子はどうしたのですか」
「あぁ。この子は竹の中に入っていたんだ」
「竹の中に……ですか?」
「な、なんだ。そんな目をするなよ。おかしくなったわけじゃないぞ。竹林の中に光り輝く不思議な竹があってな。手をふれたら自然に割れて中から出てきたんだ」
「まあ」
「これはきっと、子供にめぐまれないおれたちに天が授けてくれた子なんだ。今日からこの子はこの家の子だ!」
「この子がですか」
「わぅ、わぅ!」
「あぁっ! こ、この可愛さは…… なんて可愛らしい子なんでしょう! あぁ、素敵過ぎて目眩が……」

おばあさんもワンコの可愛い鳴き声に一発でやられてしまいました。
こちらもまた、なんともちょろいおばあさんですね。
このおじいさんとはいいコンビです。

「そうと決まれば名前をつけてあげないとな」
「そうですね。かわいい名前をつけてあげませんと」
「そうだな。竹から生まれたんだから。うん、お前はさくらだ!」
「は? なんでまた」
「まあ、いいじゃないか。竹からかわいい名前なんて考えつかないし」
「おじいさんがそう言うなら。可愛いワンちゃん今日からあなたはさくらちゃんですよ」
「わん!」

こうしておじいさんとおばあさんの家で育てられるようになったワンちゃん。
さてどうなりますことやら。

「さあ、さくらちゃん。ごはんですよ」
「わん! わんわん!」
「ほらほら。そんなに急ぐな。急がなくてもご飯は逃げないぞ」
「ぱくぱく。むしゃむしゃ。わん!」
「おほほ。さくらちゃんは本当によくお食べになりますわね」
「まったく。こいつ、食い意地だけは一人前だ」
「わぅ〜〜?」
「大丈夫ですわよさくらちゃん。おかわりはいっぱい用意してありますから」
「わん!」

やさしいおじいさんとおばあさんに可愛がられてしあわせそうなワンコです。
こうして竹から生まれた不思議なワンコはおじいさんとおばあさんのもとすくすくと成長していくのでした。
すくすくと。
すくすく……

さてさて、そんなある日。

「ねえ、おじいさん」
「ん? なんだ」
「さくらちゃんのことなんですけど」
「さくらがどうかしたか」
「さくらちゃん、いつもご飯をいっぱい食べますわよね」
「そうだな。ちょっと食べすぎな気もするけどな」
「でも。あんなにいっぱい食べてるのにさくらちゃん、全然大きくならない気がするんですけど」
「ぎくっ! そ、そうかな。来た時に比べるとけっこう大きくなったと思うけどな」
「そうでしょうか。ワンちゃんはもっと成長が早いと聞いていますが……」
「ま、まあ、ワンコ次第なんじゃないかそこは。なにしろ竹から生まれたワンコだからな。普通のワンコとは違うんだろ」
「そういうものでしょうか……」
「そういうもんだろ。な、さくら?」
「わぅ〜〜〜ん?」
「な? さくらもそう言ってるよ」
「わぅ〜〜ん、わぅ〜〜ん」
「あぁ、さくらちゃん。ダメですわそんなおいたは」
「ははっ、さくらはいつも呑気でいいな」(あぶないあぶない。しかし。やっぱりあれのせいか?)

おばあさんの思わぬ追及におじいさん、なにやら隠し事があるようですが……

時は遡っておじいさんが竹からワンちゃんを取り出したあの日。
実はあの時の話にはまだ続きがあったのです。

「光り輝く竹の中から生まれたワンコ! これはきっとこの地の祝福を受けた特別なワンコに違いない! 地脈の寿ぎを受けし者。おれが長年求め続けたファミリアの核にふさわしい!」

そうです。
実はこのおじいさん、香港に古くより伝わる魔道士の一族の血を受け継ぎし者という、どこのなろう系小説の主人公だ、みたいな素性をもっていたのです。
ファミリアとは魔道士が使役する使い魔のこと。
主に動物を模した形をとることで知られています。
光り輝く不思議な竹から生まれた不思議なワンコ、とくればその核とするにはまさにうってつけ。
おじいさんにはそう思えてしまったのです。

「闘・妖・開・斬・破・寒・煙・界・爆・滅・兵・剣・駿・闇……」
「わぅ?」
「いい子だからもうちょっと大人しくしていてくれよ。炎・色・無・超・善・悪……かぁぁぁぁっっ!」

カッ!

「わわぅぅ!?」

ぴか〜〜〜ん

「わ、わぅ?」
「できた! できたぞ! よし、これで今日からお前はおれの半身だ!」
「わん!」

な〜〜んてことがあったのです。
ワンコはおじいさんのファミリアになっていたのです。
ファミリアは魔道のものですので、普通のワンコのように成長はしません。
どうもおじいさん、そこらへんのことは全く考えてなかったみたいですね。
まあ、長年求め続けたとかいうのはようするにこれまでファミリアを創ったことがないということで、そういうところまで気が回らなかったのでしょう。
なんとも抜けたところのあるおじいさんです。

「わぅ〜〜ん、わぅ〜〜ん、小狼くん! 知世ちゃん! わぅ〜〜〜〜ん」
「おほほほ。さくらちゃんは今日もお元気ですこと」
「あぁ。元気だけがこいつの取り柄だな」

こうして竹から生まれたかぐや姫、その可愛さは近隣でも大きな評判となりましたが、ちっとも大きくならないのでお嫁にとか言い出す人はいませんでした。
当然、帝の后にとかいう話もでません。
まあ、ワンコですし。
竹から生まれたかぐや姫、いつまでもおじいさんとおばあさんと幸せに暮らしたそうです。
めでたしめでたし。

あ、かぐや姫がいつまでたっても成長しないので、大きくなったら迎えにくるはずの月からの使者もいっこうにあらわれませんでした。
そのことで月ではかぐや姫のお兄さんがしったもんだしていたそうです。

「さくらは何をやってるんだ! いつになったら帰ってくる!」
「まあまあ、桃矢。さくらちゃんはあっちで楽しくやってるんじゃないかな」
「なにを呑気なことを!」
「う〜〜ん、そんなこと言うなら食べすぎくらいで下界に流罪とかしなければよかったのに」
「あ、あれはだな。貧しい下界の苦しみにあえば食べものの大事さを理解できると思って」
「きっと、美味しいものをくれる家に拾われたんだろうね〜〜」
「さくら〜〜!」

めでたしめでたし?

このお話の教訓:
可愛いは正義。

その2
キャスト
おじいさん:山崎くん
おばあさん:奈央子ちゃん
かぐや姫:千春ちゃん

むかしむかしのその昔、あるところに竹を取って暮らすおじいさんとおばあさんがいました。
ある日、おじいさんがいつものように竹林にいくとその中に1本の光り輝く竹が生えていました。

「わあ。なにかな〜〜この竹」

かなりの異常事態のはずですが、このおじいさんさほど驚いたようにも見えません。
大物なのかおとぼけなのかどちらでしょうか。
なんとなく後者のような気もしますが。
そんなおじいさんが竹に手をふれるとあら不思議、竹はぱかっと割れて中からこれも光り輝く女の子があらわれました。

「あれ〜〜。竹から女の子が生まれたよ。不思議だな〜〜」

と言いながらさほど不思議そうにしていないおじいさん。
やはり大物かもしれません。

さて、女の子を家に連れ帰るとさすがにおばあさんはびっくりしました。

「おや、おじいさん。その子は」
「うん、この子はね。竹の中から出てきたんだ」
「竹の中からって……。おじいさん、またしょうもないホラを」
「いやいや、今日は本当だよ。竹林の中に光る竹が生えててね。その中から出てきたんだ」
「まあ」
「これはきっと子供に恵まれないうちに天が授けてくれた子だよ。うん、きっとそうだよ」
「そうですね。それならば名前をつけてあげませんと」
「うん、そうだな。よ〜〜し、竹から生まれたんだから……今日からお前は竹子だ!」
「む〜〜、む〜〜!」
「おじいさんおじいさん。なんか嫌がってるみたいですけど」
「え〜〜そうかなあ。いい名前だと思うけど」

どうやらこれまた本気っぽいおじいさん。
やはり只者ではありません。
主に感性が。

「まあ、竹から生まれたことですし。かぐやというのはどうでしょう」
「う〜〜ん、それいつも思うんだけどなんで竹からかぐやになるのかなあ〜〜。なんか関係あるのかな〜〜」
「いいじゃありませんか。そういうものですので」
「まあいいか。それじゃあ今日からお前はかぐやだよ」

こうしておばあさんの機転もあってかぐやと名付けられた女の子はおじいさんとおばあさんの家で育てられることとなりました。

さて、この女の子ですがやはり竹から生まれたということで普通の女の子ではなかったのでしょうか。
みるみるうちに大きくなり、三か月もすると立派な妙齢のお姫様となってしまいました。
これにはさすがにおじいさんとおばあさんもびっくりです。

「あれまあ。なんてことだい」
「本当に。もうこんなに大きくなってしまうなんて」
「ふふっ、これもおじいさんとおばあさんのおかげですわ」
「でもこのペースだと来年には老婆ですわねえ」
「仕方ないだろう。今のうちに家もリフォームしておこうか」
「ちょ、ちょっと待って! そこは大丈夫だから!」
「え〜〜本当?」
「本当に大丈夫!」
「大人用おむつも用意してきたんだけど」
「大丈夫だから! そんなお伽話ないから!」
「でも〜〜。浦島さんは寝たきりになっちゃったって話だし〜〜」
「いや、それ関係ない人だから! 大丈夫だから!!」

やはりなんというか世間一般の人とは少し感性の違うおじいさんとおばあさん。
かぐや姫も油断ができないところです。
実はおじいさんとおばあさんについてかぐや姫が気にしていることが他にもあります。
それは床の真ん中にきられた炉です。
はじめは鍋でもかけるための炉かと思って気にしていなかったのですが、どうもそうではないようです。
床の真ん中が四角く空けられているだけで薪を置いたりもしません。
そしておじいさんとおばあさんは時々、炉?とかぐや姫を見比べてひそひそと話をしています。
どうやら自分になにか関係があるようですが、いったいなんの関係があるのかさっぱりわかりませんでした。

さて、そんなある日。
おじいさんとおばあさんがあらためたかぐや姫に向かい話をはじめます。

「かぐや。これまで黙っていたけど。お前ももう大人だ。話さなければならないだろう」
「実はあなたはわたしたちの本当の娘ではないの」
「あの日、竹藪の中で……」
(まあ。そろそろ本当のことをお伝えしなくてはいけませんね)

わたしは月の住人。
罪を犯してこの地に追放されてきたのだけれど、そろそろ月から迎えがくる……
そう告白しなければ……と思ったのも束の間。

「だからオマエもいつか立派なになる日がくるんだと思うんだ!」
「は?」
になっても実の娘だと思ってるからね!」
「えッ? い、いや正体『』じゃないですよ!!」
「認めたくない気持ちはわかる! だが、これが真実なんだ!」
になったあなたを置くところもちゃんと床の間に用意してあるからね!」
「あ、あれはわたしを活けるための!?」
「最高級肥料も用意してある! いつに戻っても大丈夫だよ!」
「ちょっと待ってぇぇ〜〜!!」

といっても、この流れで月の住人とか言い出したら事実を認めたくないばかりに壊れたとしか思われません。
超強引なおじいさんとおばあさんの前についに事実を言い出すこともできず、押し切られてしまうかぐや姫なのでした。
そんな怪奇! 竹人間!にいい縁談なんぞが回ってくるはずもなく、当然ながら帝の妃になんて話も出てきません。
やばい噂が月にまで届いたのか、いつまでたっても迎えの使者も来ず、かぐや姫はいつまでもおじいさん、おばあさんと暮らしたそうです。
めでたしめでたし。

なお後に、怪奇! 竹人間!の噂はおじいさんが流したものと判明し、かぐや姫はブチ切れたそうです。

「なんなのよ、あの噂は! 誰が流したのかと思ったらこの口か!」
「あはははは〜〜。なんか面白そうだな〜〜と思って」
「くぅ〜〜〜、このっ、このっ!」
「あはははは〜〜。いたい、いたいよ千春ちゃん」

めでたしめでたし?

このお話の教訓:
桃太郎の親は桃ではない。


マチ姉さんのおとぎ話アワー上・下もついでに単行本化してくれないかな〜〜。

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