『イメージ・中学生編?』
「…………」
ケルベロスはじと目で机につっぷすさくらを見つめていました。
小狼のところから帰ってきたさくらは部屋に入ってから一言も口をきかず、不機嫌そうに机につっぷしたままです。
帰ってきてからけっこう経ちますがずっとその姿勢のままです。
一回も顔を上げようとしません。
よほどに機嫌が悪く、誰とも口をききたくない、そんな風に見えます。
ですが。
ケルベロスにはわかります。
これは誰とも話たくないのではありません。
逆です。
誰かに話したいことがある、でも自分から話し出すのはちょっと気がひける。
なので誰かのツッコミを待っている。
そういう状態なのです。
さくらとの付き合いもかなりのものとなったケルベロスにはそれがよ〜〜くわかります。
そしてさくらの期待するツッコミ役が自分であることも。
さくらの頭のアホ毛がピクピクふるえる度に
「ケロちゃん! 早くツッコんでよ!」
そんなさくらの声が聞こえてくるかのようです。
ケルベロスは可能な限り関わりたくない、そう思っていました。
こういう時のさくらの悩み事はあの小僧、小狼がらみのことにまず間違いないからです。
その手の話はケルベロスにはさっぱりわかりません。
恋する女の子の気持ちだの乙女の願いだのそういう単語はケルベロスの辞書には登録されていないのです。
彼の辞書の90%は食事関連の単語が占めていますから。
まあ、そういうキャラですので。
そういうわけでできれば無視したいな〜〜と思っているケルベロスでしたが、そうもいかないのはこれまたよくわかっています。
居候の立場は辛いものですね。
や〜〜れやれと心の中で溜息をつきながら仕方なくさくらに話しかけるのでした。
「なんや、さくら。えらい機嫌が悪いやないか。小僧のところでなんかあったんか」
「それがね! ケロちゃん、聞いてよ」
話しかけた途端、ガバッと跳ね起きるさくら。
予想以上の食いつきのよさです。
これはまた、よっぽどしょうもない相談やろな〜〜とケルベロスはげんなりしますが、いったん話しかけた以上無視するわけにもいきません。
「なんやなんや。またあの小僧のとこでなんかあったんかいな」
「それがね。なにかあったっていうか〜〜。え〜〜っとね」
「なんやねん。またえらく歯切れが悪いな。小僧になんぞ言われたんか」
「なにか言われたわけじゃないんだけど〜〜。その〜〜。目は口ほどにものを言うっていうか〜〜。あ、目じゃないんだけど〜〜」
「やっぱりなんか言われたんか?」
「それが〜〜。う〜〜ん、こういうのはケロちゃんにわかるかなあ。あのね〜〜」
さくらの歯切れの悪さがさらにケルベロスをげんなりさせます。
さっさと話しを打ち切ってゲームをしたい、もう彼の頭はそれ一色です。
しかし、そうもいかないのが居候の辛いところ。
「なんやもう、あ〜〜う〜〜いったい何が言いたいんや。わいにわからんもんなんかあらへんわ。なんでも言ってみんかい」
ゲームがしたい、その一心で超適当なことを口にするケルベロス。
そんなケルベロスに持ち出されたのはこれまた予想外の質問なのでした。
「ねえ、ケロちゃん。やっぱり男の子って……おっぱいが大きい女の子が好きなのかなあ」
「はあ?」
意表をつく質問に言葉を失うケルベロス。
そ〜〜なのです。
あの時、さくらが微妙な表情を浮かべたそのわけ。
それは
(小狼くんがイメージするわたし……わたしよりおっぱいが大きかったよね)
なのでした。
ま、これまたしょうがないことですね〜〜。
小狼もお年頃の男の子ですし。
恋人の体を想像して悶々とするようなお年頃ですから、恋人のおっぱいが大きくあって欲しい、そう思っちゃっても責められませんね〜〜。
それがイメージに反映されちゃうのもこれまたしかたないですね〜〜。
実際にさわって確かめるところまでまだいってませんし。
これが知世ちゃんだったら1cmと違わない完璧なさくらのボディーラインをイメージできたでありましょうが。
「ね、ね、どうかな。やっぱり胸が大きい方がいいのかな」
「なんじゃそりゃぁ! そんなん知るかーーっ!」
「なによ。なんでも聞いていいって言ったじゃないの」
「知るか! はは〜〜ん。さてはさくら。小僧に胸が小さい言われたな。そうやろ」
「ち、違うもん! 小狼くんはそんなこと言わないもん!」
「なるほどなあ。それで目は口ほどにものを言うっちゅわけか。さくらの胸見てがっかりしよったんやなあの小僧。まあ、無理もないわな」
「なによ! それ、どういう意味よ!」
「そりゃあ、そのまな板を見ればしょうがないわなあ。あの小僧もせめて知世くらいあればええなあ〜〜と思ったんと違うか」
「け・ろ・ちゃ〜〜ん!! 言ったわね〜〜」
「言うて悪いか! 聞かれたから答えただけや。このまな板、貧乳! くやしかったらもっと大きくしてみんかい!」
「それができたら苦労しないわよ!」
「わ、わっ、さくら。なにしよんや。うわわっっ」
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……………………
…………
え〜〜っと。
人がリアルに思い描くことは実現するそうですが。
この問題についてはその〜〜。
なんか無理っぽいような。
まあ、世の中にはそういう需要もありますので。
小狼が貧乳派か巨乳派かはさだかでありませんが……
END
貧乳はさくらのステータス。