『生誕の日・狂狼編』



翌朝。

「おはようございます!」
「おはよう、さくら」

今日も元気いっぱいのさくらに朝の挨拶を返しながら、小狼はちょっとだけ不思議そうな顔を見せた。
さくらの服装に違和感を感じたのだ。
といっても、さくらが特別奇妙な格好をしていたわけではない。
いつもと同じ、李家支給のメイド服である。
ただ、少し袖が長い。
昨日まで着ていたのは半袖だったが、今着ているのは手首まですっぽり覆う長袖だ。
スカートも少し長い。可愛い太ももが隠されてしまっている。
ストッキングも少し厚手なようだ。
冬用とまではいかないが、春か秋用の服である。
そろそろ夏も本番に差し掛かってきたこの時期には暑いだろう。

「なあ、さくら。その服、春物じゃないのか。なんでそんなのを着てるんだ。暑くないのか」

そう口にしたのは特に深い意味があってのことではない。
ちょっと不思議に思ったから、ただそれだけである。
しいてあげれば、さくらの肌が隠されていることにほんの少しだけ不満を感じた、そんな程度のものである。

だが。
それに対するさくらの返事は小狼を大いに動揺させるものであった。

「あの・・・・・・まだ消えてないんです」
「消えてないだと。何がだ」
「そ、その〜〜。小狼さまに・・・・・・た跡が・・・・・・」
「なんだって? よく聞こえないぞ」
「昨日、小狼様に縛られた跡がまだ消えてないんです・・・・・・」
「!? そ、そうか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

真っ赤になってうつむいてしまうさくら。
同じくらい真っ赤になった顔を新聞で隠す小狼様。

二人の新しい一日が始まります。

END


生誕の日・狂狼編、ようやく完結。
思ったよりも時間がかかってしまいました。
小狼様をアブナイ方向に暴走させすぎたせいでなかなかラブい話にならずに苦労しました。

おまけ編に続く・・・・・・かも。(と前回も書いておまけ編が出来るまで2年かかってしまいましたが)

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