『秘密の時間』


(※この先、小学生編なのに小狼に鬼畜が入っているという
ちょっとばかりデンジャラスな展開になります。
小狼の本性はSの王子様!と思われる方だけどうぞ)



「クロウの創りしカードよ。古き姿を捨て生まれ変われ。新たな主、さくらの名のもとに!『雲(クラウド)』『雨(レイン)』!」

パァァッ
カッ!

「やった!」
「やりましたわ、さくらちゃん!」
「ありがとう。小狼くん。知世ちゃん。これも二人が助けてくれたおかげだよ」

夕日に染まるペンギン公園。そこにはさくらと小狼、知世の3人がいた。
今日も下校の途中で「クロウの気配」がさくら達を襲ってきたのだ。
それを『雲』『雨』のカードを生まれ変わらせて撃退したところだ。

「ふぅ。それにしてもカードさんを生まれ変わらせると疲れるな〜」
「大丈夫ですか、さくらちゃん」
「うん。疲れはするけど、最近はもう眠くなったりしないの。わたしの魔力も強くなってきたのかな」
「たしかにお前の魔力は強くなってきてる。だけど、あまり無茶はするなよ」
「わかってるよ、小狼くん」
「少し休んだ方がいいな。ここからだとお前の家よりオレの家の方が近い。ちょっと休んでいくといい」
「え・・・」
「そうですわね。李くんの家でお休みになられた方がいいですわ」
「う、うん・・・。そうだね・・・」
「ほら、掴まれ。肩を貸してやる」
「ありがとう・・・小狼くん・・・」

小狼の肩を借りてよろよろと歩き出すさくら。心配そうに見守る知世。
闇の鍵が『星の鍵』に生まれ変わってきてから何度も繰り返されてきた光景。

しかし。

この時、知世は気づかなかった。
小狼が一瞬、冷たい笑みを浮かべたことに。
そして、さくらの顔に怯えとも期待ともつかない複雑な表情が浮んだことに。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「ほら、そこに横になれ」
「小狼くん・・・あ、あの・・・やっぱり、いつものやつ、やるの?」
「当然だ」
「でも・・・今日はそんなに魔力を使ってないし・・・その・・・」
「ダメだ。いつ何が起きるかわからないからな。常に最高の魔力を保たないといけないのはカードの主の義務だ」
「それはわかってるけど・・・」
「本当にわかっているのか?お前の体はお前だけのものじゃないんだぞ。カード達のものでもあるんだ。わかっているならさっさと横になれ」
「うん・・・」

わたしはそれ以上は抗わずにベッドに横になった。これから始まる儀式のために。
何度受けても慣れないこの儀式のために。

さわっ。

ん・・・んん!来た・・・
小狼くんの手がわたしの体をさすり始める。まずは手のひらとつま先の方から。
ゆっくりと丁寧にわたしの手足をさすってる。そしてだんだんとその手が体の方に近づいてくる。

腕。
ひじ。
肩。
ふくらはぎ。
ひざ。
ふともも。

少しずつ、少しずつ小狼くんの手が体の方に這い寄ってくる。

ううっ、やっぱり慣れないよ〜〜〜。このむず痒い感触。
で、でも!我慢しなきゃ!
これもわたしの体に異常が無いか確認するための大切な儀式なんだから。

小狼くんはただわたしの体を撫でてるだけじゃないの。
体を撫でながら少しずつ魔力を流し込んでわたしの体におかしなところがないかを確認してくれてるの。
これが李家に伝わる『整体術』の一つなんだって。

強い魔力を使う者はその影響で体がおかしくなることがあるから、こうやって定期的に検査しなくちゃいけないんだって。
だから、最近はカードを変えた後はこうして小狼くんに調べてもらってるんだけど・・・
でもでも!やっぱり慣れないよ〜〜〜!!

別に痛かったりするわけじゃないんだけど・・・え〜っと、その。
なんていうのかな〜〜〜。
小狼くんに触られてるとなんかおかしな感じになってくるんだよね。
こう、なんていうか。体の奥の方がポカポカしてきちゃうんだよね〜〜〜。
なんでなのかな?魔力を流し込まれてるからなのかな〜?

さわっさわっ。

ううっ!
小狼くんの手がお腹の上まで来ちゃったよ〜〜〜!
手と足だけでもおかしくなっちゃうんだけど、お腹をさすられると・・・んんっ・・・
変な声が出ちゃうよ〜〜〜。

ううん、ダメダメ!

小狼くん、わたしのために頑張ってくれてるんだから、これくらい我慢しなくちゃ!
我慢、我慢!けれど。お腹の後は・・・

ふにっ!

んんんっ!!

検査の最後は・・・胸。
わたしの胸の上に・・・小狼くんの手が載せられてる・・・
ううんっ・・・ここは一番、変な気分になっちゃう。
だ、だめっ小狼くん!そんなに擦らないで! そんなにされると・・・声が抑えられないよ〜〜〜!!

「ふ・・・んんっ・・・!」
「もう少しで終わる。我慢しろ」

そんなこと言われても・・・んんっ〜〜〜!!
ダメだよ、小狼くん〜〜〜!そんなに力を入れないでよ〜〜〜!!

「はあっ、はあっ」
「うん、大丈夫だ。特に異常はない」

ふぅ〜。ようやく終わったよ〜。ほんとに変な気分になっちゃうんだよね。この儀式。
それを我慢してるとカードを変える時よりも疲れちゃうよ。それもとりあえずはオシマイ。

だけど。

小狼くんとの儀式はこれだけじゃない。
次の儀式が待ってる・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「検査はここまでだ。次を始めるぞ」
「小狼くん・・・その・・・アレもやらないとダメかな?今日はアレをやらないでも大丈夫だと思うんだけど・・・」
「何を言ってるんださくら。今日は2枚もカードを変えただろう。かなりの魔力を消費しているぞ」
「そうかな〜〜〜?今日はあんまり眠くならなかったけどな〜〜〜」
「それはお前の体が慣れてきただけだ。お前が自分で感じている以上に魔力を使ってる。時間もあまりない。さっさと始めるぞ。体の力を抜け」
「はぁい・・・」
検査の後に始まる儀式。それは・・・

ぐにぃっ!

「・・・っっ!!!」

小狼くんに胸を思いっきり握られたわたしは、必死になって声を抑えた。
うぅ、小狼くんそんなに力いっぱい掴まないでよ〜〜〜!!!

「抵抗するな。もっと力を抜け」

力を抜けって言われたって・・・うぅっ、無理だよ〜〜〜そんなの!!

あぅっ!!

ああぁ・・・流れ込んでくる・・・。小狼くんの魔力が流れ込んでくる。
つかまれた胸から小狼くんの魔力が流れ込んでくる。
ううん、違う。流し込まれてる。
小狼くんの魔力をわたしの体の中に流し込まれてる!!
あぁぁっ!!

これが2つ目の儀式。
カードを変えて消費してしまった分の魔力を小狼くんから分けてもらうの。

さくらカードを使うとクロウカードの時よりも遥かに大量の魔力を消費しちゃう。
初めの頃はそのせいでカードを変えた直後は眠っちゃってた。
最近はそうでもないんだけど、小狼くんが言うにはそれはわたしの体が無理をしてるからなんだって。
わたしの体が無理をして魔力を作り出してるからなんだって。
あんまり無理を続けるといつか、体をこわしちゃう。
だから、こうして小狼くんから魔力をもらって体に負荷をかけないようにするって言うんだけど・・・

ん・・・ふぅ・・・ほ、本当なのかな?わたし、そんなに無理してるとは思わないんだけどな・・・くぅっ!
そ、それにどうして胸からなのかなぁ?心臓に近いからっていうけど魔力と何か関係あるの?うぅっ!

・・・ん?あれ?

どうしたのかな?小狼くん、手を離しちゃった。今日はもう終わり?いつもはもうちょっと続けるんだけど。

「ダメだな」
「え?何がダメなの」
「最近、あまり魔力を流し込めなくなってきた」
「そう?いつもとあんまり変わらないと思うけど」
「いや、お前の魔力が強くなってきたせいでオレの魔力の流れが悪くなった」

そうかなあ?いつも通りだと思うけどな〜〜〜

「ん〜?でもどうするの?魔力の流れが悪くなったって。魔力を流しやすくする方法とかあるの?」
「あぁ。それは簡単なことだ」
「どうすればいいの?」
「間に邪魔なものがあるから魔力の通りが悪いんだ。邪魔なものを除いて魔力を流せばいい」
「邪魔なもの?そんなものないよ?」
「あるだろ、そこに」
「?」
「お前の着てる洋服のことだよ。さくら。すまないが服を脱いでくれないか」
「あ、そう。このお洋服が邪魔なんだね。これを脱げばいい・・・?」

ん?
お洋服を・・・脱ぐ?ここで?
小狼くんの前で?
え?え?え?

・・・・・・

ほ、ほえぇぇぇ〜〜〜っっっ!!!

「えぇぇ〜〜〜っっっ!!!あの、その!脱がないとダメなの?」
「そうだ」
「なんでぇぇぇ〜〜〜???」
「お前とオレの魔力が純粋になりすぎたんだ。だから間に不純物があると魔力の通りが悪くなる。恥ずかしいだろうけど我慢してくれ。これもカード達のためだ」
「はぅ〜〜〜」

そんな〜〜〜
小狼くんの前で裸になるなんて〜〜〜恥ずかしいよ〜〜〜これもカードさん達のためなの〜〜〜?とほほ。

ぽちぽちぽち。
ぱさっ。

「小狼くん・・・下着も脱がないとダメ?」
「下着もだ。それとスカートも脱いでくれ。魔力が布を伝わって拡散するといけないからな」
「う〜〜〜恥ずかしいよ〜〜〜」

ううっ、こんな恥ずかしい格好しなきゃなんないなんて。知世ちゃんにだって見せたこと無いのに。

「脱いだよ・・・」
「じゃあ、またそこに横になってくれ」

あ〜ん、わたし、なにやってるのよ〜〜〜?男の子の前で裸になって寝てるなんて。
これもカードの主の義務なの〜〜〜?クロウさ〜〜〜ん、ケロちゃ〜〜〜ん、こんなの聞いてないよ〜〜〜

「いくぞ、さくら」

いくぞって・・・小狼く〜〜〜ん。やっぱりやめ・・・!?

あ・・・?なに?この感じ・・・?

小狼くんの手・・・すごく暖かい・・・
さっきまでと全然違う・・・直接触ると・・・小狼くんの手の柔らかさがハッキリわかる・・・
たしかにさっきよりも魔力が流れやすくなった気はするけど・・・
こう・・・なんか変な感じもするよ・・・う・・んっ・・・!?

ダメだよ小狼くん!そんな強い魔力・・・
今、そんな強い魔力を流されたらわたし、壊れちゃうよ!!ダメ、小狼く・・・ん・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そこから先は良く覚えていない。
小狼くんから流し込まれる強い魔力と不思議な感覚。
それに耐え切れずにわたしは気を失ってしまったから・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「ケロちゃん。ちょっと聞いていい?」
「なんや、さくら」
「魔力って人に受け渡しとかできるよね」
「ん?まあ、できないこともないな。強い魔力を持った者同士ならばわりと簡単にできるやろ」

わたしはその夜、ケロちゃんに魔力の受け渡しについて聞いてみた。
小狼くんが魔力を分けてくれるのは嬉しいんだけど・・・なんかひっかかるんだよね〜〜〜。
ほんとにお洋服を脱がないと出来ないのかな〜〜〜とか。胸からじゃないといけないのかな〜〜〜とか。
それにわたし見ちゃったんだよね。
あの時、わたしが気を失う瞬間に小狼くんが笑ったのを。

あの笑い方・・・

小狼くんがあんな笑い方するなんて。
いつもの優しい小狼くんとは全然違う、冷たい笑い方。それにあの目。
まるで本物の狼さんが兎さんを狙ってる時みたいな冷たい目。
あれがどうしてもひっかかるんだよね〜〜〜。

「魔力を渡す時って相手に触ってないとダメなんだよね」
「まあ、そらそうやな」
「それってどこを触ってればいいの?」
「別に。どこでもかまわんやろ。相手に触ってさえいれば。手を握り合うのが一番簡単やな」
「そうなの?たとえば胸とかお腹とかだと渡しやすいとかそういうのはないの?」
「そんなのあらへん。どこでも同じや」
「じゃあさ。たとえばわたしが小狼くんから魔力をもらうとしたら、どんな風にすればいいのかな」
「はぁ?あの小僧から?そんなん好きにしたらええがな。小僧とさくらくらい魔力が強かったら指一本でも触っとればええやろ」

やっぱり!
胸からじゃないとダメとか、服を脱がないといけないとか全部ウソだったんだね!
エッチなことがしたかっただけなんだね、小狼くん!!

「そう!やっぱりそうなんだ!やっぱり・・・」
「やっぱりって、小僧となんぞあったんか?」
「!?な、なんにもないよ!」
「だいたい、なんであの小僧から魔力をもらわんとあかんのや」
「え?でも、ほら。カードさん変える時っていっぱい魔力を使うでしょ?だから、その分の魔力を小狼くんに分けてもらえばわたしの体も楽になるんじゃないかな〜っとか」
「その必要はないやろ。今のさくらの魔力は充分に強うなっとる。ユエも兄ちゃんの魔力もらって安定しとるさかいな。小僧に魔力をもらう必要なんかあらへん」

えええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!?!?!?
わたしの体が無理してるっていうのもウソだったの〜〜〜?
全部、エッチなことするためのウソだったの〜〜〜??
しゃ〜〜お〜〜ら〜〜ん〜〜く〜〜ん!!

怒怒怒!!

もう、許さないよ!
この次にあんなことしようとしたら、コテンパテンにやっつけちゃうんだから!

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「やったな、さくら!今日は4枚もカードを変えたで!」
「うむ。見事だ。主の魔力は日に日に強くなってきているな」
「あぁ、着実に世界最高の魔法使いに近づくさくらちゃん・・・素晴らしいですわ〜〜〜」

ふぅぅ。
今日は4枚もカードさんを変えられたよ。さすがに疲れたな〜〜〜。

・・・さてと。
小狼く〜〜〜ん。
ここは小狼くんの家に近いよね?今日はなんて言ってくるのかな〜〜。また「オレの家で休んでいけ」?
お生憎様。今日はケロちゃんもユエさんもいるんだからね。
もしも、そう言ったら今までのこと二人に全部バラしちゃうんだから!
ユエさん達にお仕置きしてもらうんだから!

「さくら。今日は疲れたろう。ここならオレの家の方が近い。少し休んでいけ」

来た!
くすっ。小狼くん。それはもう通じないよ?
さあ、ケロちゃん!ユエさん!このエッチな小狼くんを懲らしめてあげて!

「うん・・・ありがとう、小狼くん」

あ、あれ?
やだ、わたし何を言ってるの?小狼くんの家に行ったらまた、エッチなことされちゃうのに。
ここでケロちゃんとユエさんに小狼くんを懲らしめてもらわないと・・・

「ケロちゃん、ユエさん。わたし、小狼くんの家で休んでいくから。先に戻っていて。知世ちゃんも」
「そうか。ならば先に戻らせてもらおう」
「では李くん。さくらちゃんをお願いしますわ」

なんで??
ここでみんなに言わないといけないのに。小狼くんにエッチなことされてるって。
なんで言えないの?なんでぇぇぇ〜〜〜???

「じゃあ、さくら。行こうか」
「うん・・・」

どうして?どうしてわたし、小狼くんに逆らえないの?
それにわたし・・・すっごくドキドキしてる。
わたし、何を期待してるの?何を嬉しがってるの?

「今日は4枚もカードを変えたからな。魔力もずいぶん使ったろう。その分、オレがたっぷりと補充してやるよ。さくら・・・」

ほ、ほぇぇぇ〜〜〜!!カード4枚分もあんな風に魔力を流し込まれたら、わたし壊れちゃうよ〜〜〜
逃げなきゃ!逃げないと小狼くんにメチャクチャにされちゃう!

なのに。

なんで、わたし逃げようとしないの?
小狼くんだから?
相手が小狼くんだから逃げないの?
小狼くんにだったらメチャクチャにされてもいい、って思ってるの?

どうしてぇぇぇ〜〜〜???
はぅぅぅ〜〜〜〜〜〜

―――――――――――――――――――――――――――――――――

さくらは気づいていない。
自分の頬が喜びの笑みを浮かべていることに。
小狼に従うことに悦びを感じている自分に。

そして、また始まる。
二人だけの秘密の時間が・・・


END


小狼鬼畜話。
実は自分、まじめな話を書くのはすごい苦手です。
【Love-Icha 1-2-3】アンソロジーの原稿もまじめな話でまとめようとしたら非常に苦戦しました。
じゃあ、どんな話なら書きやすいんだ言われると、見ての通りアホ話が書きやすいのですがもう一つ、小狼鬼畜話も書きやすかったりします。
この話を書き終わった後にさる所で、某絵師様のドS小狼絵を見てしまいました。
拘束したさくらをゆるゆると責めて、さくらの口からおねだりを強要するという鬼畜ぶり。
さすがはS様。素晴らしいドS小狼です。
次はこのシチュエーションでいってみようかと思います。

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