『眠り姫 その2』


世界迷作劇場その6改 眠り姫

キャスト
眠り姫:小狼
王子様:さくら
黒い魔女:苺鈴
魔女の手下:山崎
?:エリオル

アニメ版オリジナルキャスト ※一部を除く

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むかしむかしのその昔。
森の中の小さな王国に一人の王子様お姫様が生まれました。
とても可愛らしいお姫様です。
なかなか子供に恵まれなかった王様は大喜び。
さっそく、国中におふれを出してお姫様の誕生パーティを始めました。
パーティに呼ばれた森の精霊たちがお姫様に祝福の言葉をかけていきます。
このままお姫様は皆に祝福された幸せな人生を約束されるかに見えました。

しかし。
そこに現れたのはただ一人、パーティに呼ばれなかった黒い魔女。
魔女は呼ばれなかった腹いせにお姫様に呪いをかけてしまいます。

「この子は16歳になったら糸車に指を刺されて永遠の眠りについてしまうわ! ふふっ、そうすれば木之本さんに目移りすることもない。小狼は永遠にわたしのもの。おほほほほ〜〜」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

さて。
トンでもない呪いをかけられてしまったお姫様。
幸いなことに最後に残った月のの精霊が呪いを打ち消す言葉をかけてくれました。

「めんどうな・・・・・・。姫は100年眠り続けるが、100年目の日に王子の口づけで目覚めるであろう。ま、こんなところか。くだらない用事でわたしを呼ぶな」

月の精霊、今一つやる気がありませんね。
どうやら、お姫様は月の精霊の好みに合わないようです。

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さてさて。
それから16年後。
お姫様は精霊たちの祝福通り、とても素敵な男の子女の子へと成長いたしました。
ですがこのお姫様、一見は聡明そうに見えるのですが、ちょっとばかり抜けたところがあります。
この日も、

「糸車っていうのはね。昔はオモチャだったんだよ」
「そうなのか? でも、こんなもので一体、どうやって遊ぶんだ」
「それはね〜〜。ふふっ、李くん。ちょっと手をだしてくれる?」
「これでいいか」
「うん。どうやって遊ぶのかっていうとね。こうやって・・・・・・えいっ!」

ぷすっ

「い、痛っ! 何をするんだ、山崎! ・・・・・・って、あ、あれ? 急に眠く・・・・・・」

ぽてっ。

すぅーっ・・・・・・ すぅっー・・・・・・

魔女の手下の口車にのせられて、糸車を指に刺してしまうのでした。

「よくやったわ、糸目! 見事よ」
「ぼくも魔女役がやりたかったな〜〜。原作ではぼくが魔女役だったのに〜〜」
「そんなことはどうでもいいでしょ! うふふ、これで小狼は永遠にわたしのもの。お〜ほっほっほっほほほ!」

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さてさてさて。
それからさらに100年後。

「ここが眠り姫の塔ね」

眠り姫の塔に姿を見せたのは、隣の国のさくら王子。
眠り姫の伝説を耳にしたさくら王子、その呪いを打ち破るのは王子はわたしよ! とばかりに意気込んで李王国に乗り込んできたのです。

「えいっ! とぉっ! やぁっ!」

秘伝の星の杖を奮い、イバラを切り開きながら進むさくら王子。
そして、ついに塔の最上階、眠り姫の部屋までやってきました。

「姫!」

扉を蹴り開けて勢いよく部屋に飛び込むさくら王子。

(やれやれ。ようやく来てくれたか。100年は永かったな・・・・・・)

ベッドの上に横たわったままさくら王子を迎える眠り姫。

「これが眠り姫・・・・・・。おぉっ、なんという美しさだ」
(そう言われると、ちょっと照れるな)
「今、ここに誓おう! わたしはこの姫君を生涯愛することを! さあ、姫よ。誓いのキスを・・・・・・」
(うぅっ、緊張する。ドキドキドキ・・・・・・)

ゆっくりと近づいていく二つの唇。

しかし!

ガシィッ!!

唇が触れ合おうとしたまさにその瞬間、何者かがさくら王子に襲いかかって来ました。

「だ、誰!? えっ? め、苺鈴ちゃん!?」
「やっぱり来たわね、木之本さん!」
「どうして、ここに!? 魔女の出番はもうないはずだよ?」
「甘いわね。わたしが大人しく引き下がるようなタマなわけないでしょ。小狼は渡さないわ!」
「くっ! わ、わたしだって負けないよ! 小狼くんはわたしのなんだから!」

ガンッ!!
バシィッ!!

眠り姫をめぐって、激しく剣を交える王子と魔女。

(何やってるんだ、苺鈴! 邪魔するな! まぁ、そこまでオレのことを想ってくれるのはうれしいけど)

予想外の展開に困惑しつつも、美少女二人が自分を巡って争うというシチュエーションにまんざらでもない様子の眠り姫。

そんな眠り姫の耳に聞こえてきたのは

「おぉっ、なんと美しい姫君だ」

予想もしなかった第三者の声。

(!? だ、誰だ?)

「姫よ、わたしは貴方に心を奪われてしまった。もう、貴方抜きで生きていくことはできそうもない」
(こ、この声は・・・・・・ま、まさか!?)
「今、ここに誓おう! わたしはこの姫君を生涯愛することを! さあ、姫よ。誓いのキスを・・・・・・」
(うわぁぁぁ〜〜〜〜! や、やめろぉぉぉ〜〜!!)


ぶちゅっ


「どわわわわわわわわ〜〜〜〜!!」

突如として部屋中に響き渡った眠り姫の絶叫。

「え?」
「な、なに!?」

あわてて振り返るさくら王子と魔女。
その目に映ったものは・・・・・・

熱い口づけを交し合う、エリオル王子と小狼姫の姿。

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

凍りつく時。
一人、場違いな笑顔を浮かべるエリオル王子。

「小狼くん・・・・・・」
「小狼・・・・・・」
「ち、ちがうんだ。こ、これは・・・・・・」

「「やっぱり女の子より男の人の方がいいのね!!」」

「なななな!? なんで、そうなる!? やっぱりって、どういう意味だよ!」

「「うわ〜〜ん」」

泣きながら走り去るさくら王子と魔女。

「あ、待て! 待ってくれ〜〜」

あわててその後を追いかけようとする小狼姫。
その姫の身体に軟体動物のようにぬちゃりと絡みつくエリオル王子の四肢。

「どこへ行こうというのですか。逃がしませんよ、姫」
「は、はなせ!」
「はなしませんよ。貴方を目覚めさせたのはこのわたし。貴方はもうわたしのものだ。永遠にね。ふふふふふ」
「ぞわわわ〜〜! さくらぁぁぁ〜〜、苺鈴〜〜、待ってくれ〜〜。っていうか、助けてくれぇぇぇ〜〜! オレを置いていかないでくれぇぇぇぇ〜〜〜〜」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

こうして目覚めた眠り姫はその後、王子様のねっとりとした粘液質な濃ゆい愛に包まれて幸せに暮らしたそうです。
めでたし、めでたし?

あと、

「もう、男の子なんか信じない!」
「そうよ、木之本さん。男なんか信じちゃダメよ。男になんか、女の子のことはわからないんだから!」
「苺鈴ちゃん・・・・・・」
「木之本さん・・・・・・」

眠り姫に裏切られた王子様と魔女が道ならぬ恋へ走ってしまったそうですが、それはまた別の機会に。


拍手お礼ストーリーの再掲です。

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