裸の王様


世界迷作劇場その12 裸の王様1

キャスト
王様:小狼
仕立て屋:エリオル
大臣:山崎
純真な子供:さくら
純真でない子供:知世

キャストだけでオチがわかるというツッコミは禁止。

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昔々のその昔。
ある国に新しいお洋服が大好きなとてもおしゃれな王様がいました。
王様はいつも新しいお洋服を欲しがっていましたが、そのためにお城の人たちはいつもお洋服の裁縫にふうふう言っているのでした。

「王様のお洋服好きにも困ったものねえ」
「あれがなければいい王様なんだけどねえ」

とぶつくさ文句を言う宮女たちの前に出てきたのはこの国の大臣様。

「本当にちょっと困るなあ。よ〜〜し、ここは僕がなんとかしてみようか」

などと言いながら細い目をわずかに広げてニヤリ。
どうやらよからぬことを考えているみたいですね。
いったい何を企んでいるのでしょうか。

その翌日。

「王様王様、ああ、いいところにいらっしゃいました」
「なんだ大臣。なにかあったのか」
「いえ王様。実は今、この国にとても素晴らしい技を持った仕立て屋がきておりまして。ぜひとも王様にお目にかかりたいと申しております」
「仕立て屋だと? そんなのはいくらでもいる。会う必要はないな」
「それが。なんでもその仕立て屋は世にも不思議なとても珍しい布地をつくれるという話でして」
「ほう。それは楽しみだな。すぐにも呼んでくれ」
「はい。かしこまりました」

こうして王様の前に呼び出されたのは眼鏡をかけた仕立て屋さん。
少し不思議な神秘めいた雰囲気をかもし出した仕立て屋さんです。
これならば不思議な布地も作れるかと王様も少し信用する気になったみたいです。

「仕立て屋。お前は世にも珍しい布地を作れるそうだな。いったいどんな布地なんだ」
「はい王様。これは世に二つとない魔法の布地でございます」
「魔法の布地か。さぞや美しいのだろうな」
「はい。それはもう、この世のものとは思えぬ美しさでございます。ですが王様。この布地の秘密はそれだけではありません」
「ほう。他にもなにかあるのか?」
「はい。実はこの布地、『バカには見えない布地』なのです」
「なに? バカには見えないだと?」
「はい。バカには見えない特別な魔法のかかった布地、そしてそれゆえに特別に美しい布地なのでございます」
「そいつは面白い。よし、早速そいつで新しいお洋服を作ってくれ」
「かしこまりました」

王様の前にひざまづいてうやうやしく頭を垂れる仕立て屋さんと大臣。
でも、王様から見えない二人の頬に浮かんでいるのは例のニヤリ顔。
なんかこの二人、どこか雰囲気が似通っていますね。
まあ、ようするにそういう人たちということで。
どう見てもよからぬことを企んでいるようにしか見えない二人組。
人を疑うことを知らない王様にはちょっと危ない人選な気がしますが……?

さて、こうして王様のためのお洋服を作ることになった仕立て屋さん。
お城の一室に毎日、こもってトンからりん、トンからりんと忙しそうに働いています。
王様は気が気ではありません。

「おい、大臣。どんな様子かちょっと見てきてくれないか」
「はい、かしこまりました」

大臣を仕事場への視察に向かわせます。
しばらくしてから戻ってきた大臣、

「見てまいりました王様」
「どんな様子だった?」
「はい。それはもう実に素晴らしい布地です。まさにこの世のものとは思えません」
「おお、そうか。そいつは完成が楽しみだ」

などと調子のよい報告を。
どう見ても向かわせる人の人選に問題があるような気がしてならないのですが。
まあ、この王様は人を疑うということを知らないのでしょうがないですね。

そうこうしているうちについに迎えたお洋服完成の日。
すでに城下には王様が新しいお洋服を披露するとのお達しが出ているので多くの人が集まっています。
わくわくしながら仕立て屋のもとに向かう王様でしたが。さて。

「ついに完成したそうだな」
「はい、王様」
「よし、そいつを着てパレードをするぞ。すぐに用意してくれ」
「では、これをどうぞ」

膝をつき、うやうやしく両手を掲げる仕立て屋さんでしたが。
王様は困惑してしまうのでした。
なぜなら、王様の目には仕立て屋の手の上に何も見えなかったからです。

「お、おい。これは」

狼狽する王様でしたが。

「おぉ、ついに完成しましたか。いやぁ、思ったとおりの素晴らしい出来栄えですね、王様」
「そ、そうか?」
「はい。この色艶といい、デザインといい、まさに王様のための逸品! これぞ王のための衣装でございます」
「そ、そうだな」

すり寄って来た大臣にこう言われては話を合わせるしかありません。

「では、早速これをお召しになられてくださいな。城下の者どもも待ちかねております」
「そ、そうだな。行こうか」

大臣に手伝われてお洋服を着替える王様。
大臣と仕立て屋がお洋服を着させてくれるのですが、たしかに見えはしませんがなんとなく洋服があるような感じもします。
ひょっとして見えないのは自分だけなのかと気にはなってしまいますが、今さら後には引けません。

「では、まいりましょう」

大臣にひかれて城下の大通りを進んでいきます。
並み居る民衆を前に行進する王様ですが、なにしろ自分には服が見えずに裸で行進しているようなものですので恥ずかしさで顔は真っ赤です。

「王様! 王様!」
「あぁ、やはり王様は素晴らしい!」
「王様!」

城下の者たちが王様を讃える声が届いてきますが、王様、もう内心ではそれどころではありません。
みんなには見えているのか、やっぱり見えないのはオレだけなのかと恥ずかしさでいっぱいです。
そのまま進んでいくと沿道のそばに一人の少女の姿が。
少女は王様をしばらく眺めていましたが、不思議そうな顔でこう言いかけます。

「あれ〜〜。おかしいなあ。王様なにも着て……」

が、それを言い終える前にその口をもう一人の少女ががばっ、とおさえてしまうのでした。

「むむむ〜〜、と、知世ちゃん?」
「ダメです、さくらちゃん! それを言ってはなりません!」
「な、なんで〜〜? むむ〜〜」
「いいですか、さくらちゃん。さくらちゃんにはわからないかもしれませんけど、あれはああいう『プレイ』なのです」
「プレイ?」
「そうです。大人にはいろいろと心に鬱憤が溜まります。それを晴らすためにああいうお遊び、プレイが必要になるのです」
「え、じゃあ王様のあれは」
「もちろん、裸なのは王様もわかっていますわ。ご自分の裸体を人々にお見せになられる、それに喜びを感じられる、王様はそういう方なのです。皆さまにもそれはよくわかっています。その証拠に見て御覧なさいな。周りの方々を」

そう言われて周りを見てみると、たしかに周りの人たちは誰も不思議がっていません。
それどころかみんな、目をキラキラさせて王様に見とれています。

そう、そうなのです。
ようするに、この国の人たちはみなそういう趣味の方々だったのです。
王様がお洋服をとっかえひっかえするのが許されていたのもそういうことです。
みんな王様が大好きだったのです。
いろいろな意味で。

「ふ〜〜ん。そうなんだ〜〜」

と、納得してしまう純真な少女。
この少女も人を疑うことを知らない子ですね。
このまままっすぐ育って欲しいものです。
間違っても、隣の子のようにはならないでください。

こうして無事? お洋服お披露目のパレートを終えた王様。
その後も仕立て屋と大臣は王様のためにいろいろな趣向を凝らして王様を困惑させ、その度に国民は大喜びしたそうです。

めでたしめでたし?


小狼でググると関連後のトップに「受け」と表示されていた頃が懐かしい。

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