『知世ちゃんお誕生日記念話・G』


キャスト
ゴルゴ13:国籍、年齢、本名、その他一切不明
依頼人(クライアント):大道寺知世
標的(ターゲット):ひがし某

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おたおめ・・・お誕生日おめでとうの略語である。
この語がいつごろから使用されるようになったのかは定かではないが、近年のインターネットではたびたび見かける単語である。
おもに二次元キャラの誕生日を祝うのに利用されている。
特に人気のあるキャラの誕生日近くにはpixivなどのソーシャルサイトがこの単語で埋め尽くされるほどである・・・・・・


ゴルゴ13 第1151話

『忘却の報い』



PART1 ある学園の風景
―――20XX年10月2日 12:30 東京都友枝町友枝小学校―――

「スイス銀行メーリッヒ支店、と。口座番号は1313・・・・・・」
「知世ちゃん、何やってるの」
「あら、さくらちゃん。別に大したことではありませんわ。銀行振り込みです。最近はスマフォからでもできるので便利ですわね」
「ふ〜〜ん。スイス銀行って外国の銀行にも振込みできるんだ。・・・・・・ん? あれ? と、知世ちゃん!? なんか凄い金額になってるけど間違いじゃないの?」
「いえあってますわ。日本とスイスでは通貨の単位が違いますから。たいした金額ではありませんわ」
「そ、そうなの?」
「そうですわ。ほんの・・・・・・」
「ほんの?」
「ふふっ、さくらちゃんが気にすることではありませんわ。ほんとにたいした額ではありませんので(そう・・・・・・ほんの50万ドル。“あの男”の相場としては安い方ですわ・・・・・・)」

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PART2 忘却の報い
―――20XX年10月3日 08:30 台東区江南ビル19階―――

プルルル〜〜〜〜

「ひがしさんお電話です」
「ん、誰からだい?」
「それが。名前を名乗ろうとしないんです。何かの勧誘じゃないですか?」
「まあいい。でるよ。もしもし、ひがしですが」
『・・・・・・・・・・・・』
「どちらさまですか」
『・・・・・・・・・・・・』
「もしもし!?」
『今日は何日だ・・・・・・』
「はぁ?」
『今日は何月何日だ』
「今日は10月3日ですが。それがどうかしましたか」
『ちょうど1ヵ月だ。おぼえていないのか』
「さっきから一体、なんの話をされているのですか。1ヵ月前っていうと9月3日ですか? あなたと何かお約束でもしていたでしょうか。記憶にないのですが」
『・・・・・・どうやら完全に忘れているようだな。確認したかったのはそれだけだ・・・・・・』

ガチャ
ツー、ツー、・・・・・・・・・・・・

「あ、もしもし!?」
「どうしました。ひがしさん。やっぱり何かの勧誘でしたか」
「いや、なんだったんだろう。わけのわからないことを言って勝手に切られちゃったよ。1ヵ月前がどうのこうの言ってたけど」
「1ヵ月前っていうと9月3日ですね。どなたかと会う約束でもされてたんじゃないですか?」
「そんな記憶はないんだけどなあ。ん? 待てよ。9月3日? ま、まさか!? まさかあの娘の・・・・・・」

ズギューン!
ガシャァァァン!
ビシィッ!

「!!」
「うわっ、なんだ!?」
「ひ、ひがしが!!」
「ひがしが撃たれた!」
「狙撃だ!」
「ど、どこから!? この周りには同じ高さのビルなんかないぞ!」
「まさか、あのビルか?」
「バカを言うな! あそこまでどう見ても500m以上は離れてる! あんなところから狙撃できるはずはない!」
「し、しかしあそこ以外には」
「そんなことができるわけがない! もしもそんなことができるとしたら・・・・・・そいつは人間じゃない! モンスターだ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

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PART3 少女からの依頼
―――2日前 23:30 都心某所―――

「以上が今回の依頼です」
「おたおめか・・・・・・。それほどに重要なものなのか?」
「もちろんですわ! 生誕の日を祝われることはわたしたち二次元キャラにとって1つのステータス! 特に二次創作においてはおたおめ作品の仕上がりがキャラへの愛の深さを測る物差しと言っても過言ではありません。それをこの男は! もう1月経とうというのに何の作品も出していないばかりかブログでも一言も言及していません! この屈辱、貴方にはおわかりになりませんか!」
「見解の相違だな。まあいい。仕事の話を続けてくれ・・・・・・」
「1つだけ条件があります。この男が本当にわたしのおたおめを忘れているのか、それを確認してほしいのです。なにか特別な理由があっておたおめを祝えないのか、それとも忘れているだけなのか・・・・・・。もしも、本当にただ忘れているだけだった時は・・・・・・その時こそ貴方のお力であの男に正義の裁きを!」
「わかった。やってみよう。報酬の振込みを確認次第、仕事にうつる・・・・・・」
「あぁっ、感謝します! ゴル・・・・・・いえ、ミスター・デューク東郷!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

おたおめは架空の二次元キャラの誕生日などと軽く考えられるようなものではない。
この日、キャラを愛する有志は様々なイベントを企画、実行に移している。
それは、作品の上映会であったりワンドロ企画であったりと様々な分野に及ぶが、一部ファンの暴走による事件も多数報告されている。
このあたりの事情は『少年よ耽美を描け -Boys be tambitious-』(新書館)に詳しい。
これを行き過ぎた描写とみなすべきなのか。
判断は読者諸氏に委ねたい・・・・・・

END(2014年作品)


知世嬢のお誕生日、忘れていたわけではありません。
ただ、ツバサの連載再開がありましたのでそちらのお話を優先しただけです。
けっして忘れていたわけでは・・・・・・すいません、本当は完全に忘れていました。
まあツバサの連載再開とかあったし。
知世嬢も許して・・・・・・

ズギューン・・・・・・………

はぅっ!

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