『悪戯(中学生編)』

※別名義で発表した作品の再掲になります。



「う・・・・・・ん・・・・・・あれ? ここ、どこ?」

ここは・・・・・・小狼くんの部屋?
なんで、わたし小狼くんの部屋で寝てるの? う〜ん、むにゃむにゃ。なんか眠いな〜〜。
これって昔、さくらカードを変えてた時みたい。
魔力を使いすぎたってこと? なんでそんなに魔力を使ったんだっけ。

え〜〜っと。ああ、そうだ。

たしか学校から帰る途中、子供が急に道路に飛び出して。
そこに車が突っ込んできて。
あわてて『時(タイム)』で時間を止めて。
でも、もうギリギリなくらい車に挟まれちゃってって引っ張り出せなくて。
『力(パワー)』も使って車を動かして。
なんとか子供を引っ張り出して。

その後、小狼くんが

「大丈夫だ。すり傷だけだ。大した怪我はしていない」

って言ってくれたところまでは覚えているんだけど。そこでわたし、眠っちゃったのかな?

魔法を使ったのは久しぶりだったもんね。それに『時』さんはものすごく魔力を使うし。
『時』さんと他のカードさんを一緒に使うのはやっぱり無理があったかな。
小狼くんには

「日ごろから自分を鍛えてないからだ。カードの主として自覚が足りないぞ!」

って言われちゃいそうだけど。

ふふっ、でも。
こうしてるとカードさんを変えていた時のことを思い出すよ。
あの頃もあったよね。こんな風に小狼くんのベッドで目を覚ましたことが。
あれは『雨(レイン)』さんを変えた時だったっけ。
あの時の小狼くん。
とっても優しくて。わたしのこと初めて「さくら」って呼んでくれて。

すごく嬉しかった。

あの時はわたしまだ小狼くんのことを好きになってなかったけど、すっごく嬉しかったよ。
ううん。
きっと、あの時にはもう小狼くんが「わたしだけの一番の人」になってたんだね。
だって、そうじゃなきゃあんなに嬉しくならなかったよね。
あんなに喜ばなかったよね、わたし・・・・・・

トントントントン・・・・・・

ん? 小狼くんが来たのかな。なんか、これもあの時と同じだな〜〜。ほんとうに懐かしくなっちゃう。

あっ、そうだ!
いいこと考え付いちゃった! うふふっ・・・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「さくら。まだ目を覚まさないのか」

ブーッ。ハズレ〜〜。
本当はもう、起きてるよ。
でも寝たふり。
えへへへ〜〜。

本当に小狼くんは騙されやすいんだから。そんなんだからいつも山崎くんに騙されちゃうんだよ?
そこが小狼くんのいいところかもしれないけど。

あ、べつにわたしは小狼くんを騙してるわけじゃないからね。あの時みたいにからかってるわけでもないよ。
ただ最近の小狼くん、ちょ〜〜っとわたしにキビシイんじゃないかな〜〜っと。

「お前はカードの主なんだ! カードたちのために常に己を律する義務がある!」

とか

「なんだその様は! そんなことでカードたちを守れるのか!」

とか。

それもわたしのことを本当に想ってくれてるからだっていうのはわかるんだけど・・・・・・
でも、やっぱりたまには優しい小狼くんも見たいな〜〜って思っちゃうの。
女の子なんだもん。しょうがないよね?

わたしはまだ覚えてるよ、あの時の小狼くんの顔。
小狼くん、あんなに優しい顔するんだって驚いちゃったんだから。
今はもうわかってるよ。
あの優しい顔が小狼くんの本当の顔なんだって。
いつものキビシイ顔は李家の跡取りとして責任を感じてるからなんだって。
わたしに厳しくするのも、何か事件が起きても無事に切り抜けられるようにするためなんだよね。
今の状態じゃあ小狼くんに厳しくされてもしょうがない気もするけど・・・・・・でも、でも!
たまにはいいでしょ小狼くん。あの時みたいに優しい顔を見せてよ!

あ、近づいてきた。
ベッドに腰掛けて・・・・・・また、体を拭いてくれるのかな?

「いけないな。このままだとスカートが皺になりそうだ。脱がさないと」

そう、まずはスカートから・・・・・・って、え?
スカート? 脱がせる??

ぽちっ
するするする・・・・・・

ほ、ほぇぇぇぇ〜〜〜!
スカート脱がされてる〜〜〜!
なにやってるのよ〜〜〜小狼く〜〜〜ん!!!

そりゃあ、たしかにこのまま寝てたら皺になっちゃいそうだけど・・・・・・
そんなところに気を回さなくてもいいよ〜〜〜!

「今日はクマさんパンツか。可愛いのを着てるんだな。さくら」

うぅっ、恥ずかしい・・・・・・
今日はこんなことになるなんて思ってなかったから可愛いのを着てきちゃったよ。
小狼くんに見られるとわかってたら、もっとちゃんとしたやつを着てきたのに・・・・・・って、なに考えてるの、わたし!
今日はそんなつもりじゃないでしょ!
寝たふり、寝たふり。

さあ、小狼くん!
早くあの時みたいに優しい顔を見せてよ!

「胸元が苦しそうだな。少し楽にしてやるか」

は?
小狼くん何を言ってるの??
胸? 別に苦しく・・・・・・

ぽちぽちぽち

〜〜〜〜〜〜!?
しゃ、小狼くん!?
なんで、胸のボタン外しちゃうの〜〜? 胸は苦しくなんかないよ〜〜!!

だ、だめ〜〜〜!

そんなに襟を開いたら胸が見えちゃうよ〜〜!!
やめて〜〜

ふぁさっ

あぁ、小狼くんに見られてる・・・・・・
いくらブラジャーしてるからって、こんなの恥ずかしすぎるよ〜〜

「これでだいぶ楽になったろう」

全然楽になってないよ! 恥ずかしくて顔から火が出ちゃいそうだよ!!
だいたい、なんでわたしが見られる側になっちゃってるの? わたしが小狼くんを見たいのに。
なんでこうなっちゃうのよ!
トホホ。

でも・・・・・・小狼くんに見られてるって思うと・・・・・・
なんか変な気分になってきちゃった・・・・・・
小狼くんは真面目だから今でもいつも通りの顔をしてるんだろうけど、わたしの方はなにかこう・・・・・・
ダメダメ! 平常心、平常心。

小狼くん! ここまで我慢してるんだからもういいでしょ?
早くあの時の顔を見せてよ!早く!!

「さくら。今日は大変だったな。あんなに魔力を使って。苦しかったろう」

たしかに大変だったけど、こうして寝たふりを続ける方が苦しいよ〜〜
魔力はいいから、早く優しい顔を見せて!

「待ってろ、さくら。オレの魔力を分けてやる」

だから魔力はいいんだって。もう、小狼くんってば。気が利くようできかないんだか・・・・・・え?

むにぃっ

な、なに!?
小狼くん!?
どこ触ってるのよ〜〜〜!!??
なんでおっぱい触ってるのぉ〜〜〜??

ふぁ? あ・・・・・・この感じ? 魔力?

魔力だ。小狼くんの手から魔力が流れてきてる。
そっか。今日は魔力を使いすぎたから小狼くんの魔力を分けてくれてるんだね。
ん・・・・・・小狼くんの魔力・・・・・・とっても暖かい・・・・・・。とっても優しい・・・・・・。
わたしの体中に小狼くんの魔力が染み込んでいくのがわかる・・・・・・小狼くんの力が・・・・・・わたしの体の中に・・・・・・
やだ、もう本当に変な気分が我慢できない。これ以上されたらわたし・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

あれ? もう終わり?
もう少し小狼くんの魔力が欲しかったのに。

「イマイチ魔力の通りが悪いな。やっぱり直に触らないとダメか」

通りが悪い? そうかな。わたしとっても気持ちよかったけど。直に触ってるともっと気持ちいいの?

・・・・・・ん? 直に触る?
それって・・・・・・ひょっとして・・・・・・?

ぽちっ
ぱさぁ・・・・・・

や、やっぱりぃぃぃ〜〜! ブラジャー外されちゃったよ〜〜!!
うぅっ、知世ちゃ〜ん。

「これからはフロントホックブラの方が何かと都合がよろしいでしょうから」

って言ってたのはこういうことなの〜〜???

「さくらの胸、とってもキレイだ」

ほぇぇぇ〜〜小狼くん、そんなにまじまじと見ちゃだめぇぇぇ〜〜!! もう、やめ・・・・・・

むにぃっ!

うぁぁ・・・・・・なに、この感じ・・・・・・
さっきまでと全然違う・・・・・・直に触られると・・・・・・小狼くんの手の柔らかさがハッキリわかる・・・・・・
小狼くんの手・・・・・・あったかくて・・・・・・やわらかくて・・・・・・すごく気持ちいい・・・・・・
あ・・・・・・あぁぁ・・・・・・魔力も・・・・・・。さっきよりもずっと強く魔力が流れ込んでくる・・・・・・すごい・・・・・・
こんな・・・・・・こんなの・・・・・・もう、ダメ・・・・・・。もう、我慢できない・・・・・・だ、ダメぇっ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「きゃぁぁぁっっ!!」
「やっと起きたか」

やっと起きたかって当たり前でしょ!
こんなことされたら誰だって起きるよ!
もう、小狼くんは強引なんだから。

・・・・・・??

なに、小狼くん。その顔は。なにがそんなに可笑しいの?
この笑い方、誰かに似てるような気がするけど・・・・・・?
あ、わかった。山崎くんだ。山崎くんが小狼くんをからかってる時の笑い方にそっくりなんだ。

ん? ・・・・・・ということは?

「小狼くん・・・・・・ひょっとして、わたしが寝たふりしてるのに気がついてたの?」
「いつまで我慢できるのかと思ってたんだけど。結構がんばったな」
「ひど〜〜い!! さくらのことからかってたのね!」
「それはお互い様だろう。全く。オレがどんなに心配したと思ってるんだ」
「うぅっ、それは・・・・・・ごめんなさい」

はぅ〜〜。そうだよね。やっぱりわたしのこと心配してくれてる小狼くんをダマそうなんて思っちゃったのがいけないんだよね。
わたし、あの時から全然進歩ないなぁ〜〜。とほほほ。
それにしても小狼くん。一体、いつから気づいてたの?

「で、でも! いつ寝たふりだって気づいたの?」
「最初に呼びかけた時だ。『さくら』って呼んだ時、瞼をピクピクさせたろ。あれでわかった」
「そんなことで気づいたの?」
「それに薄目でチラチラこっちを見てたろ。バレバレだったぞ」
「う〜〜ん、そうだったかなあ。あの時はうまくいったのに」
「あの時? なんの話だ」
「えっ、あ・・・・・・(しまったぁぁぁ!)」

いっけな〜〜い! 口が滑っちゃった。う・・・・・・小狼くんジト目でこっちを睨んでる・・・・・・
ちょっとヤバい・・・・・・かも。

「さくら。あの時っていったい何の話だ?」
「あ、あのね、そのね・・・・・・あの・・・・・・え〜〜っと」
「・・・・・・どうやら、ゆっくりと話を聞く必要があるようだな」

ほえええぇぇぇ〜〜!口は災いの元だよ〜〜〜〜

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「ほぉぉぉ〜〜(怒)。あの時のあれも寝たふりだったのか」
「あ、あははは・・・・・・」
「こっちはあんなに心配してたっていうのになあ。お前はのん気に寝たふりか。ふ〜〜ん」
「お、怒ってないよね? あんな前のことだし。あの・・・・・・小狼くん?」

小狼くん、怒らないよね?
小学生の時のことだよ?
もう時効だよね?
あ、あれ?
小狼くん、なんでそんな怖い顔するの?
わたしが見たかったのはそんな小狼くんじゃないよ?
ねぇ小狼く・・・・・・

「きゃっ! しゃおら・・・・・・んん〜〜〜っ!?」

〜〜〜っっ!
小狼くん!?
いきなりそんな深いキスは・・・・・・んんっ! 舐められてる!
お口の中を小狼くんに舐められてる〜〜〜! だ、ダメェっ!
力が抜けちゃう・・・・・・小狼くんに深いキスをされるといつもだけど・・・・・・なんでだろう?
キスをしてるだけなのに・・・・・・んんっ!

「ふ・・・・・・ぁ・・・・・・小狼くん・・・・・・」
「男をダマそうとするなんて悪い女の子だな。さくらは」

あぁ・・・・・・この冷たい声。冷たい瞳。
もうダメだ。わたし、小狼くんの「スイッチ」を押しちゃったみたい。
「優しい小狼くん」と「冷酷な李家の当主様」を切り替える秘密のスイッチ。
今、目の前にいるのはわたしのことを心配してくれる優しい男の子じゃない。
とっても残酷な李家の当主様だ。
残酷で冷酷で・・・・・・わたしのことをメチャクチャにして喜ぶイジワルな小狼くんだ。

「こんな悪い女の子にはお仕置きが必要だな。覚悟しろよ、さくら。男を甘く見るとどんな目にあうのか、たっぷりと教えてやる」

ほぇぇぇ〜〜! なんでこうなっちゃったの〜〜?
わたしは優しい小狼くんが見たかっただけなのに〜〜
小狼くん、こうなっちゃうと手加減してくれないんだよね。
またメチャクチャにされちゃうよ〜〜
はぅぅぅ〜〜!!

・・・・・・でも。
わたし、この小狼くんもキライじゃないの。
優しく愛してくれる小狼くんも、イジワルで激しい小狼くんも、どっちも大好き。
一人の男の子で二通りの愛され方が味わえるなんて贅沢?
どっちの小狼くんにも愛されたいって思っちゃうわたしは欲張りな女の子?

ね、小狼くん。どうかな。わたしって欲張りかな・・・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――

夕日に染まる部屋の中に女の子のすすり泣く声が洩れ始める。
甘く、切ない泣き声が。悦びと媚を含んだ泣き声が。

二人だけの『悪戯』の時間が再び始まる・・・・・・

END


このお話は以前、別名義でイベントで発表したものです。
実はちょっと複雑な経緯がありまして、最初は以前に掲載した「秘密の時間」をそのイベントで発表しようと思っていたのですが、Hなお話ばかりなのはいかがなものかと急遽思い直してイベントではこっちのお話を発表して、「秘密の時間」の方はHPに掲載しました。
なので、「秘密の時間」とかなり似通ったお話になっています。

実はこの悪戯シリーズはもう一編あるのですが、そっちは内容がアレすぎるお話なのでpixivあたりにでもこっそり投稿しようかと思っています。

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