『シンデレラ・後編』


世界迷作劇場その5 シンデレラ

キャスト
シンデレラ:さくら
意地悪な継母:大道寺園美
意地悪な継姉:大道寺知世
親切な魔法使い:ケルベロス
王子様:小狼

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さて、舞踏会の当日。
シンデレラが一人、寂しくお留守番をしていると・・・

・・・?

訂正。
家にいるのはシンデレラ一人じゃないですね。
意地悪な継母も継姉もいます。舞踏会に行かなかったみたいです。
どうしたのでしょうか。

「あの〜〜。お母様、お姉様」
「あら、なに? シンデレラ」
「なにかしら」
「今日はお城で舞踏会ですよね」
「そのようね」
「お母様たちは舞踏会に行かれないのですか?」

素朴な疑問を口にするシンデレラ。
ちゅーか、ぶっちゃけたところ

(お母様たちがお城に行ってくれないと、魔法使いさんが来てくれないんだけどな〜〜)

とか考えてたりするのですけど。

ですが。
この質問はちょっと、いや、かなりよろしくありません。
牙を研ぐ餓えた獣の前に、裸で突撃するに等しい愚行と言えましょう。
意地悪な母子はシンデレラがそうツッこんでくるのを今か、今かと待ち構えていたのですから。

「まあ、知世! 今のを聞いた?」
「聞きましたわ、お母様!」
「シンデレラったら、私達なんかいない方がいいって思ってるみたいよ!」
「この顔はさっさとお城に行って、帰ってくるなって顔ですわ!」
「え? いや、その〜〜。そうじゃなくて・・・」
「じゃあ、どういう意味なのかしら?」
「お城に行けば素敵な王子様に会えたりするんじゃないかな〜〜とか」
「やっぱり! 王子様に捕まって二度と家に帰ってこなければいいと思ってるのね!」
「なんてヒドイ子なの! わたしはこんな子に育てたおぼえはないわ!」
「お母様! ここは一つ、わたしたちで厳しく躾け直してあげませんと!」
「シンデレラ! そこへお直り!」
「え? え? えぇっ? ・・・ほ、ほぇぇぇ〜〜〜っっ!!」

疾風のようにシンデレラに襲い掛かり、裸に剥いて縛り上げる母子。
まさに野獣の如き迅さ(はやさ)。
いや、その目、その口、その表情、まさしく野獣そのもの。

「さあ、覚悟はいいかしらシンデレラ。今日のオシオキはいつもとは一味違うわよ」
「あぁぁ・・・そんな・・・。誰か〜〜誰か助けて・・・んぐぅっ!?」
「おほほほ。そんな大きな声を出されては困りますわ。しばらくこれでも銜えててくださいな」
「ふぐ〜〜、んぐぐ〜〜!!」
「フフフ・・・逃がさないわよ、シンデレラ。お前を預かるために藤隆さんには大枚をはたいてるんですからね」
「実のお父様に売られるなんて、可哀想なシンデレラ・・・。でも、悲しむ必要はありませんわ。わたしたちがたっぷりと愛して差し上げますから」

う〜ん。なるほど。
シンデレラがこの母子のもとにいるのはそういう理由でしたか。
研究費用欲しさに実の娘を売るとは藤隆さん、CLAMPキャラの名に恥じぬ外道っぷり。
さすがに高校生の教え子に手ぇ出す男は違います。

「ふぐぐぐ〜〜っっ!!(お父さ〜〜ん、そんなのないよ〜〜・・・ん? あれ? 窓の外に誰かが・・・?)」

父親の非道っぷりを嘆くシンデレラでしたが、ふと窓の外に目を向けると、そこに何者かが潜んでいるのを見つけました。

「(あれは! 魔法使いさん! ・・・・・・かな?)」

窓の外にいたのは黄色いぬいぐるみ・・・じゃなくて親切な魔法使いさん。
だと思います。
多分。
どう見ても魔法使いさんには見えませんが。
そうじゃないとお話が進まないので、魔法使いさんということにしておいてください。

「(魔法使いさ〜〜ん! 助けてぇぇぇ〜〜〜!!)」

外見はアレですが、(他に誰もいないので)藁にも縋るつもりで魔法使いさんに助けを求めるシンデレラ。

が。

「んん〜〜?? この家はみんな仲良しやな〜〜。わいの助けがいりそうな可哀想な子はおらへんようやな。次の家に行くか」

魔法使いさん、シンデレラの魂の叫びを完全にシカト。
お前にはこの惨状が仲良しに見えるのか! どこに目ぇつけてんだ!
と言いたいところですが、この魔法使いさんの判断基準は

幸せ = 美味しいものがいっぱい食べられる!
不幸せ = 美味しいものが食べられない!

ですので。
食べ物には不自由していないシンデレラは、魔法使いさんのお助けリストには入れてもらえないのです。

(おほほほほ〜〜。栄養管理はバッチリですわ〜〜。さくらちゃんにジャンクフードなんか食べさせませんわ〜〜 by 意地悪な継姉)

「(魔法使いさ〜〜ん! どうして行っちゃうの〜〜! 早く助けてえええぇぇぇ〜〜!!)」
「シンデレラ! どこを見てるの! お前はまだ自分の立場がわからないの!」
「お母様。これはきっと、責めが足りないのですわ。この程度の責めではシンデレラは堪えないのですわ」
「そう・・・そうなの。シンデレラ。この程度では満足できないのね? だったら・・・とことん責めてあげるわ!」
「(ほ、ほえええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜ッッ!!)」

・・・・・・・・・

(残念だったわねぇ、さくらちゃん・・・。誰もさくらちゃんを助けにはこないわよ。フフフ・・・)
(おほほほ。そう簡単にさくらちゃんを逃がしはしませんわ。誰もお城に行かなければ何も起こらない・・・。あのヘタレ王子の出る幕もない・・・。完璧ですわ! おほほほほほ〜〜)

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

こうしてシンデレラは意地悪な継母と継姉の過剰な愛を受けて、幸せに暮らしたそうです。
めでたしめでたし?

END

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(・・・おい。キャストに『王子様:小狼』て書いてあるのにオレの出番がないんだが)
(そうやったかいな。ま、細かいことは気にせんほうがええで)
(細かくないだろ! オレの出番はどうなってるんだ!)
(うるさいやっちゃな〜〜。ほな、小僧の出番を追加した続編を書いちゃるわ。待っとれ!)

to be continued?


このお話は、本当は拍手お礼用に書いていたものです。
が、今年はハロウィンでうまいネタが思い浮かばなかったので、ハロウィン話に変更しました。
シンデレラ→カボチャの馬車→カボチャ→ジャック・オ・ランタン→ハロウィン!
完璧!
カボチャの馬車が出てないように見えるのは気のせいです。

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