『???な羽』



穏やかな夕陽が差し込む宿屋の一室らしき部屋の中。
そこには一組の少年と少女がいた。

少女の名はサクラ。
記憶を失った玖楼国の姫。
少年の名は小狼。
飛び散ったサクラの「記憶の羽」を求めて次元を旅する少年。

今、サクラはベッドの上で安らかな寝息を立てて眠っており、小狼はベッドに腰掛けてそれを見守っている。
この眠りはただの眠りとは違う。
『記憶の羽』がサクラの中に還った時に陥る深い眠り。
しばらく目を覚ますことはないだろう。

小狼たちはこれまでいくつもの世界を巡ってサクラの羽を取り戻してきた。
時には怪物を倒し、時には羽を悪用する者達と戦って羽を取り戻した。
今回の世界でも羽の力を悪用する領主と戦ってなんとか羽を手にすることができた。

その羽はもう、サクラの身体の中に還っている。
まるで水面が波打つようにサクラの胸が震え白く輝く羽が吸い込まれていく。
いつ見ても幻想的で不思議な光景だ。

玖楼国を旅立ってから、どれだけの時が流れたのか。
幾つの世界を巡ってきたのか。
もう小狼にもわからなくなっている。

何枚の羽を取り戻したのか。
どれだけサクラの記憶を取り戻せたのか。
あの胸に吸い込まれていった羽はこれで何枚目だったろう?

あの胸に。
あの胸のふくらみに。
あの柔らかそうなふくらみに。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


(サクラの胸・・・いつの間にあんなに大きく・・・)

ありゃりゃ?

小狼くん、なんか胸を見つめすぎちゃったみたいですね。
ちょ〜っとばかりよろしくない方向に考えが向いちゃったみたいです。
ま、お年頃の男の子がこんな無防備な女の子と二人っきりでは無理もないですが。
おまけにこの世界のサクラの服、胸元がかなり露出されてます。
小狼くんでなくても見入ってしまうでしょう。

ちなみに大人組&モコナは買出し中です。
これも自分とサクラを少しでも二人っきりにさせてあげたいという優しい思いやり・・・だと小狼くんは思ってますが

「ねえ、モコナ。ああして二人っきりにしてたら小狼くん、サクラちゃんに手を出しちゃうかな?」
「う〜ん、どうかな。小狼、ファイと違って真面目だからな〜」
「ファイと違ってはひどいよ〜モコナ。でも、真面目な子ほどああいう状況だとつい、魔が差しちゃうかもよ?」
「・・・あるかも」
「どう?今日はちょっと帰るの遅らせてみない?小狼くんひょっとしたら・・・(ニヤリ)」
「ふふ、面白そう(ニヤリ)」

などとセクハラおやじな会話があったことなど知る由もありません。
ファイは見た目はカッコいいお兄さんですが、中身はオッサンですので言うことも完全にオッサンです。
モコナは創造主(クロウ&侑子)がオッサンくさいからでしょうか?
微妙におっさんくさいところがあります。


――――――――――――――――――――――――――――――


(クロウ国にいた頃からあんなにふくらんでたっけ?ひょっとして羽の影響で・・・いけない、何を考えてるんだオレは!)

小狼くん、かろうじてエッチな考えを振り切りました。
やっぱり真面目ですね〜。この小狼くんは。
同じ名前のどっかの世界のヘタレ&エロ男とは大違いです。

と、そこへ

「・・・の・・・いい・・・」

サクラの声が聞こえてきました。
しかし、目を覚ます様子はありません。
寝言のようです。

これまで羽を取り戻してきた時の経験からすると、今回取り戻した羽にあった記憶の夢を見ているのでしょう。

「いつごろの夢を見ているのかな・・・」

あの時か?それともあの頃か?
小狼くん、二人で過ごしたクロウ国の思い出に浸っています。
本当のところは「セピア色の想い出モード」になることでさっきのエッチな気分を追い払おうとしているのですけど。
いや〜本当に真面目な子ですね〜。

けれども。

「・・・あはは・・・のオ×ンオ×ン、ちっちゃくて可愛い〜〜〜
「ぶぅっ!!」

そんな小狼くんの努力はサクラの声で次元の彼方にぶっ飛んで行ってしまいました。
サクラの言葉は小狼くんの記憶にもあるものだったからです。
あの時だ。
サクラは今、あの時の夢を見てるんだ・・・


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・回想開始・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


『小狼〜〜〜なにやってるの〜?早く来てよ〜〜〜』
『で、でも姫!その・・・男の子と女の子が一緒にお風呂に入るのはダメなんじゃないでしょうか?』
『なんで?わたし、いつもお父様とお兄様と一緒に入ってるよ?』
『そ、それは王様と桃矢様は姫の家族ですから・・・お、オレと一緒っていうのは・・・』
『わたしは小狼のこと家族だって思ってるよ?小狼は違うの?』
『姫にそう思っていただけるのは嬉しいですけど・・・やっぱり・・・その・・・』
『もう!そんなことどうでもいいよ!早く来てよ小狼!』
『は、はい!では参りま・・・あ!?』

ツルッ!

すって〜ん。

ぱさっ。(注:小狼がXXXを隠していたタオルが落ちる音)

『・・・!!(さ、サクラに見られた???)』
『・・・・・・』
『あ、あの・・・ひ、姫・・・?』
『あはは〜小狼のオ×ンオ×ン、ちっちゃくて可愛い〜〜〜
『(ガガ〜〜〜ン!!!)』


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・回想終了・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


あの情けない想い出。
「サクラの記憶は全て取り戻す!」と意気込んでいた小狼くんですが、本音を言うとこの記憶だけは戻ってきて欲しくないな〜と思ってました。
幸いなことに今、サクラの夢の中には自分の姿は写っていないはずです。
それが次元の魔女に渡した対価。
今まで小狼を苦しめてきた対価ですが、今日初めて次元の魔女に感謝してしまう小狼くんなのでした。

それにしても。

(あの時は自分と全然変わらなかったのに・・・いつの間にこんなに大きくなったんだろう・・・)

おっと。
追い払ったエッチな気持ちが蘇ってしまったようです。
取り戻した記憶がよくなかったみたいです。
それどころか、

(いや、あの時だって・・・サクラの胸、ぺったんこだったけど真っ白で・・・すごくキレイだった・・・)

さらにエッチッチな気分になってしまいました。
記憶の中にあるよりもずっと大きくなった胸。
でもわずかに見える肌の白さは昔のまま。

・・・ゴクリ。

サクラの今の服は胸元をボタンで留めるタイプ。
あのボタンを外せばサクラを起こすことなく胸を見ることができそうです。

(あれを外せばサクラの胸が・・・いや!そんなのダメだ!・・・で、でも・・・見たい・・・)

見たい、でも眠ってるサクラにそんな卑怯なことするなんて・・・
葛藤する小狼くん。
手がぴくぴく動いて今にもサクラの胸に伸びて行きそうです。

しばらく悶々としていた小狼くんですが、これが若さというやつでしょうか。
ついに我慢しきれなくなってサクラの胸に手を伸ばしてしまいました。

「ち、違うぞ!オレはエッチな気分で姫の胸を見るんじゃない!ただ、羽がちゃんと吸い込まれたかを確認してるんだ!エッチなことなんか考えてないぞ!」

その理屈はちょっといや、かな〜り無理があると思いますよ、小狼くん。
そうまでして理由をつけないと胸を見ることもできない小狼くんの境遇には同情しますけど。

ぽち。

ぽち。

一つ一つ外されていくボタン。そして

ふぁさっ

押し広げられる布地。

あらわにされる白い二つのふくらみ。

大きすぎず、かといって小さくもない絶妙なバランス。

小狼の予想を遥かに上回る素晴らしい美の結晶・・・

(サクラ・・・キレイだ。本当にキレイだ・・・)

あまりのキレイさに声も上げられずに見入ってしまう小狼くん。

さ、小狼くん。
胸を見るという目的は達成しましたね?
羽も(当たり前ですが)ちゃんと吸い込まれてましたし。
そろそろサクラのお洋服を元に戻しましょうか。
そうでないと、ホントにエッチな展開になっちゃいますから。
ね、小狼くん。


あれ?小狼くん?
もう、いいですよね?
もう充分見ましたよね?
小狼くん?
小狼く〜ん??


「胸の谷間に羽が引っかかってるかも・・・確かめなきゃ」


・・・。
さあ皆様ご一緒に。


「そんなこと、あるわけないだろ!」


これがアレですか。
ファイの言ってた「真面目な子ほどつい、魔が差しちゃって」ってやつですか。
小狼くん、顔は真面目ですけど目つきはエッチッチです。
手つきも完全にエロモードになってます。

むにぃ!

サクラの柔らかな胸を小狼くんの指が押しのけます。
それでもサクラが目覚める気配はありません。
この柔らかい感触。

むにむに。
もみもみ。
ふにふに。

う〜ん。
小狼くん、完全にサクラの胸の虜になっちゃったみたいです。
もう羽もへったくれもなしでサクラの胸を触りまくりです。

(こ、このままゆっくり触るだけなら・・・大きな音を立てなければ・・・)


・・・・・・・・・


「おい、小僧!今、帰ったぞ!!!」


そう願うと大きな音がするのはこの手の話のお約束です。
次元を超えたKY男、黒鋼が帰ってきました。

「う、う〜ん・・・ここは・・・え・・・?あ?・・・!?しゃ、小狼くん!?」

あらら。
今の黒鋼の大声でサクラ姫、目を覚ましちゃいましたね。

ベッドの上に横たわる自分。
その傍に小狼くん。
ここまではいつも通りです。

けど。

あらわになった自分の胸。
その上に置かれた小狼くんの手。

何をされてたのか一目瞭然。
小狼くん、言い訳のしようがありません。
サクラちゃん、大きな目をまんまるにして小狼くんを見てます。

「いや、あの、その・・・は、羽が姫の体にちゃんと吸い込まれたか確認しようと思いまして・・・」

BAD!
小狼くん、それはBADな言い訳です。
ここは有無をいわさずキスで口を塞いで

「姫があまりにも可愛かったので我慢できませんでした」

とやるのがGOODな選択です。
まぁ、小狼くんにそんな気の利いた台詞が言えるわけはありませんか。


「小狼くんのバカーッ!!!」


びった〜〜〜ん!


案の定、サクラちゃんからキツ〜イ一発を喰らってしまうのでした・・・


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


「お帰りなさい」
「お帰りなさい・・・」
「おう、今帰ったぜ。ん?どうした小僧。ずいぶん愉快な顔してるな」

そりゃあ愉快な顔でしょう。
右頬にくっきりと真っ赤な手形がついてるんですから。

(貴方のせいでこうなったんでしょうが!!)

とは言いたくても口に出せませんし。
それに小狼くんを睨みつけるサクラちゃんの目つきとこそこそと顔を逸らす小狼くん。
ファイとモコナには何があったのかバレバレです。

(モコナ〜〜〜小狼くん、やっちゃったみたいだよ?)
(みたいだね、ファイ。でもうまくいかなかったみたい)
(小狼くんだからね〜〜〜。ま、そんなところも小狼くんらしいよ)
(そうだね)
(あははははははははは〜〜〜)×2


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


「聞いて下さいよファイさん!モコちゃん!小狼くん、わたしが眠ってる間にエッチなことしようとしたんですよ!」

さてさて。
ここは宿屋のにゃんこ組のお部屋。
サクラちゃんがファイとモコナに怒りをぶちまけてるところです。
でも、この二人を選んだのは人選ミスかもしれません。
この二人、どう見てもサクラちゃんの様子を面白がってます。

「あははは〜〜〜。ま、小狼くんも健康な男の子だからね〜。それくらいしょうがないよ」
「それくらいって、ファイさん!それはファイさんが男の人だからそう言えるんですよ!モコちゃん!モコちゃんだったらわたしの気持ち、わかるよね?」
「うん、わかるわかる。小狼はヒドイ!小狼はエッチ!」
「そうだよね、モコちゃん!」
「でも、サクラ」
「なに?モコちゃん」
「もしも小狼が真面目な顔で『サクラ姫。姫のおっぱいを見せて下さい(※小狼の声真似)』って言ってきたらどうするの?」
「!?も、モコちゃん!小狼くんの声で変なこと言っちゃダメ!!」
「でもサクラちゃ〜ん。実際のところ、小狼くんにそう言われたらどうするの〜?いつかは本当に言われちゃうかもしれないよ〜〜〜?」
「ファイさんまで何を言ってるんですか!」
「あるいは『この羽が欲しかったら対価として裸を見せて下さい』なんて言われちゃったりして」
『サクラ・・・オレはサクラの全てが見たい・・・(CV:入野自由)』
「え・・・?わたし・・・小狼くんなら・・・小狼くんになら見られても・・・って何を言わせるんですか!!」
「あははは〜。(モコナ、まだまだ楽しめそうだね〜〜〜)」
「(そうだね、ファイ。うふふ、今度はどんな風にしようか。モコナ、楽しみ!)」

サクラちゃん・・・
やっぱりこの二人を相談相手にしたのは人選ミスですよ。
他に相手がいないからしょうがないですけどね・・・


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


さて。
一方のワンココンビの部屋。

ベッドの上では小狼くんが暗〜い顔で体育座りをしています。
めちゃくちゃ気まずいです。
さすがにこういう方面には鈍い黒鋼にもどういう状況だったのか見当がついたみたいです。

「小僧、さっきは悪かったな。いいとこ邪魔しちまったみたいで」
「いえ、いいんです。黒鋼さんのせいじゃありませんから」
「そうふて腐れるな。よし!こんな時こそ修行だ!体を動かせば気もはれるだろう」
「黒鋼さん・・・はい!お願いします!」
「よし!それじゃあ今日は・・・(にやり)。柔術の修行といくか」

柔術??
なんでまた???

・・・気のせいでしょうか。
なんか黒鋼さんの目がいや〜んな感じになってるような・・・?
小狼くん、ピンチ!

ぐぃっ!
どさっ!

「これが縦四方固め!」
「あぅっ!」

むにむに

「そしてこれが襟絡みだ!」
「うぅっ・・・あ・・・?」

もみもみ
ふにふに

黒鋼さん・・・。
寝技ばかりとはまたベタなことを・・・

「あ、あの、黒鋼さん?これ、修行なんですよね?」
「あたりまえじゃねえか」
「そ、そんなところ触るのが修行なんですか!?」
「あんな姫のことは忘れさせてやるよ、小僧・・・」
「黒鋼さん!?あぁ、そこは!!あ、あぁーっ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

こうして異世界の夜はどっぷり更けていくのでした。

END


ツバサ完結記念話その3。
何を書いてる!というツッコミは例によってスルーとさせていただきます。
前にもちょっと書いたのですが、黒鋼×小狼(写し身・前半)と小狼(写し身・前半)×龍王のペアはお気に入りでした。
いつか機会があったら書いてみたいと思います。
特に小狼×龍王。
アニメ版第2期1〜3話でのこの二人の組み合わせがすごく好きで、アニメ版オリジナル話でもう一度龍王出てこないかな〜と期待してました。
どこかにないですかね。小狼(写し身)×龍王なサイト。

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