『BL(小狼×山崎)』
(※この先、少年同士の同性愛的表現を含みますので苦手な方はご遠慮ください)
「ん・・・」
小狼はベッドの中で目を覚ました。
朝と言うには少し早い時間だ。
窓の外はまだ薄暗い。
目を横に向け一緒に寝ていたはずの存在を探す。
だが、そこには誰もいない。
もう起きているのか。
「アイツ」と違って朝が早いんだな。
そう思った時、隣の部屋から誰かが入って来た。
「おはよう、李くん。目、さめた?」
「おはよう、山崎」
「まだ、おねむみたいだね。ハイ、コーヒー」
「すまない」
山崎の差し出すコーヒーを受け取り一口すする。
砂糖もミルクも入っていないブラック。
小狼の好みをよく知っている。
「おいしい?」
「あぁ。山崎の淹れてくれるコーヒーはうまいな」
「そう言ってもらえるとうれしいよ」
「だけどオレはコーヒーよりもこっちがいいな」
コーヒーカップをテーブルに置くとおもむろに山崎の唇を奪う。
口腔内をねぶる恋人同士でしかありえないキス。
舌の絡み合ういやらしい音が室内に響く。
数秒間、そのまま山崎の舌を味わってからようやく唇を離した。
糸をひく唾液の線が二人の唇を結ぶ。
「ふぅ。李くんは本当にキスが上手だね。木之本さんにもこんなキスするの?」
「ここでさくらの話はするなよ。お前こそ三原とはどうなんだ」
「千春ちゃん?千春ちゃんとはね」
言いながら小狼にキスを返す。
「こんな感じかな?」
ここは小狼の自室。
小狼が二人きりで朝を迎えコーヒーを一緒に飲む、そんな相手はさくらだけのはずだ。
しかし、今小狼の前にいるのはさくらではない。
山崎だ。
『二人きりで一つ部屋の中で朝を迎える』
小狼と山崎は『そういう関係』になっていた。
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山崎と『そういう関係』になったのは何時からか。
小狼も憶えていない。
小学生の時からさくらと千春という親友同士の二人を彼女に持つ仲。
人一倍元気な彼女たちに悩まされる仲。
互いの彼女について話し、悩みを打ち明け、相談し合い・・・気がついたらこういう関係になっていた。
もちろん小狼も山崎も「一番好きな人」はさくらと千春だ。
それは認識している。
そしてお互いの「一番好きな人」を裏切って身体を重ねている。
ここでさくらと千春の名前を出したのはそれを再認識するためだ。
逢瀬の仲でさくらと千春の名を出す。
それが小狼と山崎の間の暗黙のルール。
愛する者を裏切っている。
それを忘れないために。
それが二人の身体を余計に燃え上がらせるから。
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「ふふっ」
「なんだ?いきなり」
「いや〜小学生の時だっけ?奈緒子ちゃん僕たちのこと小説にしてたよね。なんかその通りになっちゃったな〜って」
「そんなこともあったな。それより山崎、もう一度・・・いいか?」
昨夜は狂おしいほどに激しく求めあい、お互いの身体の奥に何度も精を放ちあった。
なのに、先ほどのキスに反応したのか小狼の男性自身はもう力を取り戻している。
「・・・」
そんな小狼の要求に山崎は応えを返さない。
受け入れるでもなく、拒否するでもない眼差しを向けている。
「山崎?」
「まだ僕のこと『山崎』って呼ぶんだね。二人っきりなのに。名前では呼んでくれないの?それに僕も『小狼くん』って呼びたいんだけど、ダメなのかな?」
「ダメだ。それだけはダメだ」
「名前で呼び合うのは木之本さんだけの特権?ちょっと妬けるなあ」
身体はあずけ合っても心はあずけない。
そんな、どうでもいい矜持ともいえない何か。
さくらへの最後の言い訳。
「どうでもいいだろ、そんなことは。今度はオレからでいいか?」
「どうぞ」
小狼は山崎の返事も待たずにその身体に覆いかぶさっていった。
END
元ネタはチェリーダンスでののうちらす様の作品「冬空の下、その手の温もりを……」です。
(※もちろん、元の作品はBL小説ではありません)
「一緒に明け方のコーヒーを飲む小狼と山崎」という一節が気に入っていたので再現してみました。
なにか激しく方向性を誤ったような気もしますが・・・。
これもこのサイトのバカギャグの一つと思っていただけると幸いです。