『新・赤ずきんちゃん』


世界迷作劇場その2改改 新・赤ずきんちゃん

キャスト
赤ずきんちゃん:小狼
オオカミ:さくらいぬ
お母さん:お姉さんS
お婆さん:夜蘭さん
猟師:?

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昔々のその昔、あるところに赤ずきんちゃんというとても可愛らしい女の子?がおりました。

「赤ずきん、掃除は終わったの」
「はい、ただいま」
「赤ずきん、お昼ごはんはまだ?」
「はい、これから準備いたします」
「赤ずきん、買い物はすんだの」
「はい、食事の準備がすみ次第向かいます」
「赤ずきん、肩が凝ったわ」
「はい、ここでしょうか」
「赤ずきん」
「赤ずきん」
「赤ずきん!」
「はいはい! ただいま」

なんか赤ずきんというよりシンデレラっぽい感じもしますが。
赤ずきんちゃん、4人のお姉様たちにこき使われててんてこまいの毎日です。

さて、そんなある日のこと。

「赤ずきん」
「はい、なんでしょうか」
「いいこと赤ずきん。このお荷物をね。お婆……もとい、お母様のところまで届けて欲しいの」
「はい、わかりました」

赤ずきんちゃんは森の奥に住むお婆……もとい、お母様のところへのおつかいを頼まれるのでした。

「では、用意してまいります」
「頼んだわよ。お母様によろしくね」

いそいそとお洋服を着替えて出かける準備を始める赤ずきんちゃん。
しかし!
その赤ずきんちゃんに窓の外から怪しい視線を向ける影が!

「うふふふ〜〜。聞いたよ〜〜。赤ずきんちゃん、お出かけだね〜〜。よ〜〜し、先回りして赤ずきんちゃんを美味しくいただいちゃうからね!」

そう、森に住む悪いオオカミさんです。
ちょ〜〜っと、ちっこい気もしますけどオオカミです。
なんかまるっこくてぽにぽにしてる気もしますがオオカミさんです。
お手手も爪よりもぷにぷにした肉球の方が目立ちますがオオカミさんていったらオオカミさんなんですってば!
このオオカミさんは純然たるニホンオオカミ(絶滅種)の血を引く立派なオオカミさんなのです!
赤ずきんちゃんよりも先に森に続く道へと姿を消すオオカミさん。
いったい、どうするつもりでしょう。

作戦その1 落とし穴

「ふぅ〜〜、これくらいでいいかな」

一足早く森の道へ向かったオオカミさん、何をするのかと思いきやどうやら落とし穴を掘っていたみたいですね。
まあ、オオカミさんのちっこい身体を思えば直接ぶつかるよりかは勝率が高いような気はします。
オオカミさん、少しは頭をつかってるようです。

「赤ずきんちゃん、まだかな〜〜。もうすぐ来るかな〜〜。もうすぐ……来た!」

そうこうするうちに赤ずきんちゃんがやってきました。
森の中は一本道なので道を逸れようもありません。
てくてくと歩いてくる赤ずきんちゃん。
その足はオオカミさんの作った落とし穴へと向かいます。

てくてくてく
てくてくてく
てくてくてく
てくてく……ひょいっ

「あ、あれえ〜〜??」

赤ずきんちゃん、オオカミさんの作った落とし穴をひょいっと乗り越えてすたすたと先に進んでいってしまうのでした。
まあ、そりゃあそうでしょうね。
オオカミさんの作った落とし穴、見るからに落とし穴! って感じになってましたから。
一目でもろばれです。
それにいくらがんばったといっても所詮はちっこいオオカミさんの掘った落とし穴。
たとえ落ちてもどうにもならなかったでしょう。
作戦1、失敗です。

作戦2 狙撃

「これからは飛び道具の時代だよ、とびどうぐ! これで赤ずきんちゃんもいちころなんだから!」

どこぞでなにやら妙な知識を仕入れてきたらしいオオカミさん。
今度は飛び道具に頼るみたいです。
手にしているのはオオカミさんお手製らしい弓。
きっと一生懸命がんばって作ったのでしょう。
かわいらしいお手手にちょっぴり傷があるのはきっとその時ついたものでしょう。
オオカミさん、がんばり屋さんです。

がんばり屋さんのオオカミさん、森の中をすたすたと走り抜けて赤ずきんちゃんの前へと位置どります。
飛び道具は射撃地点が重要ですから。

「よ〜〜くねらって……たあっ!」

ぱしぃっ

オオカミさんの弓から勢いよく飛び出る矢!

ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜
………………
…………
……

ぽてっ

「ん? なんだ」

オオカミさんの放った矢は見事、赤ずきんちゃんに命中!
が、赤ずきんちゃん、何事もなかったかのようにオオカミさんの矢を払い落としてしまうのでした。
ま、これまたしょうがないでしょう。
オオカミさんの可愛いお手手でそんな強力な矢が放てるわけありませんから。
それに矢の方もどう見てもささりそうもありませんし。
オオカミさん手作りだからしょうがないっちゃあそこまでですが。

「えい! えい! この、この! えいっ!」

それでもめげずに矢を射続けるオオカミさんでしたが、当然のことならがどれも赤ずきんちゃんには通じず。
作戦2、またまた失敗です。

作戦3 アタック!

「もう、めんどくさいのはやめだよ! やっぱりオオカミだもん。この牙と爪で赤ずきんちゃんなんかイチコロだもんね!」

度重なる失敗に業を煮やしたオオカミさん、ついに直接攻撃に出るようです。
いや、そもそもそれがダメそうだからいろいろやってたんじゃなかったのですか?
オオカミさん、こんなことで大丈夫でしょうか。

「わぅ〜〜、わぅわぅ!」

赤ずきんちゃんの前にさっそうと飛び出たオオカミさん。
うなり声で赤ずきんちゃんを威嚇します。
それに対する赤ずきんちゃんの反応は。

「ん、なんだ。この犬は」

全く動じず。
ま、これも当たり前といえば当たり前ですが。
こんなちっこいオオカミさんがうーうー唸っても普通の人はなんとも思いませんよね。
むしろ、あ、可愛いとか思っちゃうかもしれません。
赤ずきんちゃんもどちらかというと後者のようです。

「犬じゃないもん! さくら、オオカミだもん!」
「オオカミ? そういえば森に悪いオオカミが住み着いたと聞いたけど。お前のことか? 聞いてたのとずいぶん違うな。小さいし」
「う、うるさ〜〜い! 赤ずきんちゃん、覚悟〜〜!!」

バッと赤ずきんちゃんに飛びかかるオオカミさん!
赤ずきんちゃんを襲う牙と爪!

ぺしっ、ぱしっ、ぺしっ
ぺしっ、ぱしっ、ぺしっ
ぺしっ、ぱしっ、ぺしっ……

「こ、このっ! えい、えい! やぁぁぁ〜〜!!」
「…………。なんだ、こいつは」

必死になって赤ずきんちゃんに牙と爪を突き立てるオオカミさんでしたが、赤ずきんちゃんには全く通じず。
はた目にはどう見ても仔犬がじゃれついてるだけにしか見えません。
実際、まさにそんな感じですし。
ついには疲れ果ててへたりこんでしまうオオカミさんです。
やっぱりダメっぽいですね。

「はぁはぁ。お、おかしいな」
「もういいか? お婆……もとい、お母様のところに行かなきゃならないんでな。急いでるんだ」
「お婆ちゃん? それだ!」

お婆ちゃんと聞いてオオカミさん、何か閃いたようです。

「お婆ちゃんの家に先回りして待ち伏せ! これこそ赤ずきんだよ。よ〜〜し、それ!」
「あ、おい! お母様のところにって。おい!」

赤ずきんちゃんの制止も聞かずに一目散に走り去るオオカミさん。
いや〜〜早い早い。
へたりこんでいたのがウソのような速さです。
この辺はさすがにオオカミさんといったところでしょうか。
見る見るうちに赤ずきんちゃんを引き離し、お婆ちゃんの家へと突き進んでいくのでした。

「わぅ! ここがお婆ちゃんの家だね! さ〜〜て、と。どこから入ろうかな〜〜。うん、ここが開いてるよ。ここから!」

あっという間にお婆ちゃんの家までやってきたオオカミさん、ちょっと開いていた戸のすき間からスルッと家に侵入。
キョロキョロと可愛いお目目を動かしてお婆ちゃんを探します。

「お婆ちゃんは……いた!」

お目当ての人物はすぐ見つかりました。
窓のそばのベットに女の人が腰を下ろしています。
これが赤ずきんちゃんのお婆……もとい、お母様でしょう。
しかし、これまたなんといいましょうか。
その凛とした視線。
ピンっと部屋中に漲る凄愴の気。
さすがはあの赤ずきんちゃんのお母様。
お姉様たちが畏れていたのもわかるというもの。
どう考えてもオオカミさんの手におえるようなお方ではありません。
絶対に手を出してはダメなお人です。
普通なら一目でわかりそうなものですが。
このオオカミさん、ちょ〜〜っと天然でぽやや〜〜んなところがありまして。
そんなこと全く気にせず、抜き足差し足忍び足でお母様に近寄ります。

「そ〜〜っと、そ〜〜っと、そ〜〜っと、と、と。ん? あれ? ほ、ほぇぇぇ〜〜〜〜!!」

バシィッ!

お母様まであと少しというところまで近づいたオオカミさんでしたが、そこで仕掛けられていたトラップが発動!
あっという間に縄でグルグル巻きにされて吊り下げられてしまうのでした。

「ほ、ほぇぇぇ〜〜〜〜」
「そろそろ来る頃かと待っていましたよ。お前が最近、話題になっている森のオオカミですね」
「そ、そうだよ。さくら、オオカミだよ」
「素直に認めるとはいい度胸です。それなら覚悟もできてるのでしょうね」
「か、覚悟って」
「お前のようなものは野放しにしてはおけません。かわいそうですが、ここで狼鍋になってもらいます!」
「ほ、ほぇぇぇぇ〜〜〜!! いや〜〜、さくら、おいしくないよ〜〜 食べないで〜〜」

う〜〜ん、どうやら今回の夜蘭さんのキャストはお婆さんではなくて猟師さんだったみたいです。
それに気づけなかったオオカミさん、ちょっと迂闊でした。
ごとごとと鍋や包丁の用意を始める夜蘭さん。
オオカミさん、絶体絶命!

というところで赤ずきんちゃんようやく登場。

「はぁはぁ。やっぱりこうなってたか」
「おや、赤ずきん。どうしました」

赤ずきんちゃん、グルグル巻きのオオカミさんを見てすぐに状況を理解したようです。

「お姉さまの言いつけでやってまいりました。それにしてもお母様。そいつは」
「これですか。これは森の悪いオオカミです。二度と悪さが出来ないようにここで狼鍋にしてしまいます」
「たすけて〜〜。さくら、狼鍋はいやだよ〜〜」

オオカミさんの哀れげな泣き声にはあ〜〜っ、とため息の赤ずきんちゃん。
どうやらオオカミさんに情が移ってしまったようですね。
きっと、何事にも一生懸命のオオカミさんになにか通じるところがあったのでしょう。

「あの、母上」
「なんです、赤ずきん」
「その、そいつはですね。そいつは最近、おれが拾った犬なんです」
「犬? お前が拾った?」
「はい。その、どうも自分のことをオオカミだと思い込んでるらしくて。なにかおかしなことを言ったかもしれませんが、そいつはただの犬です。オオカミじゃありません」

嘆願する赤ずきんちゃんをしばらく見つめていたお母様でしたが、赤ずきんちゃんの気持ちが通じたのでしょうか。

「そうですか。それならさっさと連れ帰りなさい。あまり野放しにするのではありませんよ」
「はいお母様。ありがとうございます」

オオカミさんを縄から解き放って赤ずきんちゃんに手渡すのでした。

「はぅ〜〜〜〜。助かったぁ〜〜〜〜」

オオカミさん、まさに九死に一生です。
運はいいのかもしれませんね。

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……………………
…………

「ふぇ〜〜〜〜ん。怖かったよ〜〜〜〜」
「まったく。ほんとうに危なっかしいやつだな。しばらくおれのところにいろ。お前を一人にしてると何をしでかすかわかったもんじゃない」
「うん! わかったよ。よろしくね、赤ずきんちゃん。わたしはさくらっていうの」
「おれの名は小狼だ。よろしくな」
「小狼くんだね。さくら、おぼえたよ!」

こうして赤ずきんちゃんに預けられることになったオオカミさん。
さすがに懲りたのかオオカミさんも少しは大人しくしているようです。

「うふふふ〜〜〜〜。こうして油断させて〜〜。いつか小狼くんをぱくっ! っていただいちゃうんだもんね〜〜」

密かな野望はいまだに捨てていないみたいですけれど。
しかし、それが叶う日がいつかくるのでしょうか。
どう見ても無理っぽい気がするのですが……?

とりあえず、めでたしめでたし?

END


元ネタはまんがタイムに載っていた赤ずきんちゃん。
あれを見ててなんとなく思いつきました。

しかし、10周年記念がこんなアホ話か……。
うちらしいといえばそこまでですが。

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