スキーと怪我
                          
スキーによる怪我のお話
  私はこれまで記憶にあるもので過去4回外科のお世話になった。 そのうち一度は深夜酒に酔って自転車から転落し顔面を負傷したものである。(右写真) スキーとは関係が無いようであるが飲み相手がスキーの大先輩のTさんであったからあながち無縁でないようにもおもえる。怪我の翌日負傷した傷も瘉えるまもなく東京に出向き、所用を済ませ当時船橋にあったザウスでスキーを楽しんできたので何かとスキーがらみである。2002年の夏のことであった。

今回は4度目の純粋にスキーによる受傷であり、そろそろ考えなければいけないときに来たようである。(とっくの昔に来ているのだが)一連の経験を通じてなにか共通した要因がありそうである。ご覧頂いた方の参考になる部分があればと思い次第である。話が暗くならないように軽めの記述に努めたが決してスキー事故を軽視しているわけではないので御了解いただきたい。 



その@ 腰

  一度目は溝の滑走中、スキー板のトップが春の軟らかい雪に刺さり腰をひねって転倒。「どのようにして溝を低速で滑っているのですか」といった仲間のリクエストに答え、スローモーション溝滑走のデモンストレーション中の出来事であった。使用していた板はS社のPというコンセプトのアーチを描きやすい板であった。本来ならばビンディングが解放されるべきところをスキー板の性能も加味されてか更に衝撃力が緩和されたようで、きわめてゆっくりと転倒したためビンディングの開放が行われなかった。実際見ていた人は激しい転倒ではなかったので心配していなかったようである。スキーが逆ハに開きエッジが噛んだまま情けなくカエルつぶしのように前に転倒してしまった。顔面をかばったためか一回転して後頭部を強打し、首筋と肩にダメージをあたえたようだ。一瞬意識がもうろうとし、起きあがろうとしても手も足も自分の意志に反して動かず。宙に浮いたようになったのには正直驚いた。神経系統がどうにかなったことは素人にもわかり、思わず「まずい!」と感じた。後から滑ってきた仲間にスキー板をはずしてもらい体の向きを立て直しストックを握ることができるまで待って皆のところまで滑り降りた。上腕から肩に掛けて焼けるような皮膚の痛みが走るのを感じた。不用意に体を動かすと激痛が走り、就寝時は寝返りもできず、また起き上がるために時間をかけて体制をととのえゆっくりと立ち上がる。幸い整形の受診では事無きに終り、1週間後にはスキーに復帰できた。シーズンも終に近づいた4月21日、春のキロロスキー場人気の長峰コースのコブ斜面での2001年の出来事であった。


そのA 肩
  二度目は背後からボーダーに激突され肩を痛めた。斜度変化のするところでボーっと立っていた私にも非があった。相手がスキーヤーにせよ、ボーダーにせよ背後に無防備な状態は危険である。これは良くありそうな事故である。その後バイクの専門店で肩やひじにパットを入れることのできるシャツを購入し、今は常に肩パットを常用している。場所は札幌国際スキー場 詳細は記録がないがまだシーズンの中くらいであった。この事故では整形ではなく職場の近くの外科を受診した。2002年シーズンであったと記憶している。



そのB 肋骨骨折
  まずは右のX線写真をご覧いただきたい。肋骨が5本ほど折れている.下から2本目の骨折は素人目にもわかるほど折れた断面に食い違いがみられる。。肋骨は容易に折れると聞いていたが実際経験してみるとよく実感できる。(あまりしたくないが)

2007年はいろいろしっくりこないことが多く、スキーも楽しさを感じていないときであった。気分転換に購入したA社のMというコンセプトの板を使用しての事故である。この板はトップから128-76-112とミニファットみたいな形状のスキーである。深雪、ハードなバーン、カービング何でもこなすすぐれものの板である。


事故はこうして起きた
  止せば良いのに若い仲間と体をどこまで倒せるか?と夕方4時過ぎのゲレンデで遊んでいたときのこと、切りかえ直後一気に斜面にほうりだされた。運悪くウェーブの下であったからたまったものではない。頭も強打したらしく救護室へ運ばれたがわけのわからないことを言っていたそうで、周囲はかなり心配したようである。幸い?頭は悪いところはなく(もともとよくない)写真のように肋骨を折っただけで終わった。2月25日のアクシデントからおよそ1月ほどおとなしくして3月31に復帰した。
 それにしても1m50cm程度の長さの板ではあるが、ターンによって蓄積したパワーは強烈なものである。体重は60kgを超えていた私を容易に斜面に放り出し、挙句の果てに肋骨を5本も折るけがを負わせたのである。A社のMは恐るべき能力を秘めた板のようである。 この板のコンセプトは高度な技術が無くても新しいスキー板の滑走感覚を楽しめるものであったように記憶している。谷まわりがどうの、クロスオーバーがどうのと言わなくてもスキーヤーに十分な楽しさをもたらしてくれるのである。従って谷周りから切り込んでゆくことのできるスキーヤーには過度にスキー板が反応する特性があると言えよう。 これには気が付いていたのであるが・・・・ 希薄な反省意識のため次の事故へと続くのである。


そのC ついに前十字靱帯断裂

  その日は何かの予選前で若い人たちが練習のため大勢滑っていた。みな元気があるが判で押したように左右上腕を振り込んでターンを誘導する。器用といえば器用な滑りである。その流れに逆らうかのように体を落としこみ縦長に滑走した。斜面はところどころイレギュラーになっていた。今朝までの降雪のせいで整備が追いつかない状態であった。愛用のフォルクルのSLからゲレンデコンディションにあわせて急遽先の事例Bに述べたA社のMに板をチェンジした。 
  斜面2/3程度の少し斜度がゆるくなったところで右ターンに入ろうとした。斜面下方向に体を落とし込んだその瞬間外足(左)のトップをとられた。始動を開始した谷足(右足)は左足を残して深い内足のターンを持続。やがて
何か折れるような剥がれるような異様な音を聞いた。その直後転倒して止まった。スキー板は解放されることはなかった。立ち上がってみると左足にかなり激痛が走る。下で待っていた仲間のところまで右足で滑り降り、自力で帰宅した。

膝崩れ-giving way- の恐怖
  帰宅後は降り積もった家の前の駐車スペースの除雪を余儀なくされた。スコップから雪が離れる瞬間、私は雪面に崩れ落ちてしまった。一瞬何が起きたか想像できなかった。気がついたら雪面に倒れこんでいた。初めての経験でもあり非常に恐ろしい経験であった。右利きの人がスコップで雪を遠くに放り投げるところを想像して頂きたい。このとき少なからず膝にはひねりの力が加わり、右足から左足に重心が移動することは想像に難くない。前十字靭帯は膝関節の中にあって大腿骨(だいたいこつ-太ももの骨)と脛骨(けいこつ-すねの骨)を結んでいて脛骨が前方へずれることを防ぐ働きをしているという。前後のつながりが無くなったため膝から下の骨が外れてしまうのである。簡単にいえば私の左足は体を支えることができなくなったのである。このような現象を「膝崩れ-giving way] ということを後に知った。

前十字靭帯断裂の診断
  土日月の3連休の初日の事故であったため明けて火曜日整形を受診。初めに診てくれた医師のレントゲンと徒手検査では「メジャーな靭帯は大丈夫」と診断された。しかし、前述の膝崩れや断裂音のこともありMRI検査による精査をお願いした。次回のS医師はスポーツ医学が専門で特に膝のエキスパートと聞いていた。御自身もスキーを趣味とするとのことで、患者の立場をよく理解してくれると聞き及んでいた。徒手検査の後、MRI画像の説明があり「左前十字断裂」との診断がなされた。完全に切れているとのことで「やはり」と思い知らされた。

温存療法
  診断の後「手術は必要ないことと」「2月になったらスキーしてみてください」とのことで大いに驚いた。これは1月後にスキーが可能であるとの予告と同等である。「手術はしなくてもよい」「スキーはできる」でも「靭帯は完全断裂」である。私は混乱した。更に、S医師は 「切れた靭帯は2度とつながる可能性は皆無と考えて差し支えない」と説明してくれた後、私の場合はリハビリーによって周辺筋肉の補強によりスキー(リクリエーションレベルの)は可能であると説明を加えてくれた。 靭帯断裂は大怪我であるが、幸いなことに膝は安定しているようである。このように手術によらずその後の生活を持続する療法は温存療法と呼ばれるようである。まさに、温存である。

復活!
  それから1月後、週一回のリハビリの後、再度MRI検査による復帰前の診断をお願いした
その結果靱帯の状況は悪い方向に行っていないとのことであった。その週末、仲間と共に私は久々に雪の上に立った。ちょうどS先生の予告した1月後である。初めての装具(⇒)をつけての滑走に不安は大きい。恐る恐る滑り始めたが一日で不安は無くなった。 ただ時折左足が不安定になったときはかすかな恐怖感がよぎったが。 

復帰後のスキー
 復帰後4回目のスキー、受傷後6週間目のその日は
小雪の降る寒い日であったが記録のため写真撮影を行うこととした。雪のせいでピントの定まらない写真となったが復帰後の様子をうかがい知るには十分とおもわれる。斜度は緩斜面であるが、雪面状況がよくスキーは比較的滑りスピードを得て滑走することができた。足元が貧弱なのは事故のせいではなくスキーヤーとしての私自身の限界と感じている。ブーツを履くと装具の圧迫感は気にならず実際の滑走でも装具着用を強く意識することは無い。膝をこすり合わせるほどの密着の滑りだと多少は気になるがこれもあまり問題はない。 コブ、溝の不整地滑降を行わない限りまだまだ楽しめそうである。


 受傷した脚が山足
 受傷した脚が谷足
 
回顧
  この10年の間、スキー絡みの怪我が多いことに気がつく。更に還暦を過ぎてから前十字靭帯はかなり問題といえよう。若い仲間に「前十字ですか?若いトップアスリートみたいですね」などと冷やかされても反論の術がない。 明らかに用具と技術のミスマッチングと思われるのが後者のBCの事故である。

禁断の実
 たしかに技術と板の性能によって非日常的な楽しみを手にすることが可能となった。しかし、本質的にスピードが要求されることも事実である。 当然身体能力に依存する部分は大きい。一連の事故は多分に技術とスキーヤーの身体能力の間の”乖離”、平たく言えばギャップ・隔たり、ミスマッチングといったものが存在することに起因していると思われる。 怪我から回避するにはそのような(体を落としこむクロスオーバー)ターンをしなければ良いといわれそうである。しかし、なんども述べたがクロスオーバーに伴ってスキー板とスキーヤーの入れ替わる運動感覚、あるいは落下感覚を伴ってスキーが体の下を走り抜ける感覚を一度でも味わったスキーヤーは
禁断の実を食べてしまったスキーヤーといえよう。


反省?
とりあえず次のことに留意して滑走に望むようにしている。前提としては十分なスペースを確保した上での話であるが・・・・

@ インスペクト で1本目(斜面を変えた時も)
A 外脚荷重で 条件に対するバランス感覚を確認で 2本目
B 面を多用した滑りでその日の雪面対応を確認で  3本目
C スピードを出しても滑走可能なコースを確認して 4本目以降
D 7〜8本滑って休憩

午後3時には滑走を終える。

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