『■第一回 文章コミュイベント■』

(お題:初雪)

「…レイナさん。」
「あれ、魅月、おはよう!」
レイナが目を覚ますと、そこに魅月が立っていた。
「で、どうしたの?こんな朝早く?」
そう、レイナが魅月に尋ねると、
魅月は無言で横に移動しテントの入り口を指差す。
その指につられるように入り口を見てみると、
レイナの目に飛び込んできたのは、立派なつらら
「つらら!?さむかったからなぁ。で、これが?」
どうしたの?と首を傾げるレイナ。
「ええ。立派なつららだし、
 何かもったいなくて保存方法ないかしら、と思ったの。」
「なるほど!
 でも、無理じゃないかなー。ってもしかして…」
不意につららを避けるように移動してテントの外に出るレイナ。
そこでレイナが見たものは一面の銀世界。
木々にもびっしりと霜が張り、
そして、降り注ぐほのかな雪の雨…
「うわぁ、雪だ…」
「…雪は珍しい?」
感動して声を出したレイナの背後から魅月が声をかける。
「珍しいっていうより、
 なんか懐かしくて嬉しくなっちゃうんだよね。」
魅月の方へすぐさま振り向き照れ笑いを浮かべるレイナ。
「…はしゃいでしまう…と。分からないでもないけど…」
「けど?」
不意に沈黙する魅月。
 「…」
「けど、何?」
もう一度尋ね返しても無表情で黙り込む魅月。
微妙に怖くなった所で、不意に、魅月が口を開いた。
「…さっき筋骨粒々の奴等が水着一丁でランニングしてたのをみたのよ。
 …ないと思うけど、絶対真似しないでね。」
「真似しないよ!?
 っていうか真似出来ないよ!?
 そ、そんな風にみられてるってちょっと心外…」
いじけるレイナにクスクス笑う魅月。
そして、レイナは気づく。自分はからかわれたのだと。
「も、もう!からかったでしょ!?」
気づいて怒るレイナに、クスクス笑い
「ごめんなさい。つい。ね…
 それにしても、綺麗な雪。まるで全てを白で包み込んでしまいそう。
 …ねぇ。レイナさん?」
不意に空を見上げたかと思うと、
真面目な顔でじっとレイナの瞳を真っ直ぐ貫くように見る魅月。
「…何?」
ちょっと不機嫌になりつつも、
真剣な話である事に気づき答えを聞こうとするレイナ。
「…雪っていいわよね。
 儚くて綺麗で…そして冷たくて…
 まるでここは幻想の世界。
 でもね。私雪で遊んだ事がないの。
 誰かと一緒には、ね。
 良かったら、遊びましょ?」
微笑む魅月。つられて笑顔になるレイナ。
2人無邪気に遊ぶのを、片隅の雪だるまがそっと見ていた――

(お題:プレゼント)

「ねぇ。気になっている事があるのだけど…」
不意に魅月がエモに声をかける。
首をかしげるエモ。
「…エモさんの誕生日っていつ?」
暫く流れる無言。
…無言。
暫く待っても首をかしげたままで反応が無いので、
魅月は思いついた一つの答えを聞いて見る事にした。
…正直、この答えが正解では無い事を心の片隅で願いつつ。
「…エモさん、自分の誕生日知らないの?」
その疑問に一つ頷き、
「わたしはうまれたばかりだから…」
ふぅっと、その言葉を聞いてため息を一つつき。
「…それじゃ、今日が貴女の誕生日という事にしましょう。
 …暫く待っていて。」
そんな言葉をエモに指を突きつけ宣言し、立ち去る魅月。
突然の事に驚き、声もなく、エモはただ呆然と立っていた――

――その夜の事。
エモがテントに戻ると…
『御誕生日おめでとう!』
ぱーんっと鳴らされるクラッカー。
そして拍手で出迎える仲間達。
驚きの表情で硬直するエモ。
「…という訳で、皆を集めて企画してみたわ。
 皆も乗り気で助かった。
 ま、食事もあり合わせ…とはいえ、海の家なんかよりは、
 遥かに良い御馳走と、
 今から編み物とかはさすがに皆出来なかったものの、
 お手製のプレゼントを用意してあるの。
 …受け取って貰えるわよね?
 精一杯楽しみましょ?」
硬直するエモにそっと近づき、
優しく頭を撫でて気分を和らげる魅月。
人の温かみ優しさ、
それを感じ取ったエモは…
「…うん!」
満面の笑顔を浮かべ、宴の中へ。
楽しい楽しい誕生パーティ。
彼女の心の大切な思い出として心に刻まれたのであった…


(お題:木枯らし)

底冷えのする寒い夜、
1人の人影が寝床を抜け出し、海に向かう。
海に向かった人影を追いかけて今、
もう1人の人影もまた、海へと向かう。
追いかけた人影が海に到着すると、
既に1人の人影が砂浜に座り込んでいた。
そっと追いかけていた人影が座り込んでいる人影の肩を叩く…
「…どうしたの。奏さん。」
肩を叩かれた人影…奏は、驚いたように後を振り向く。
そこにいたのは…
「なぁんだ。魅月さんかー。
 いや、ちょっとね。」
苦笑いを浮かべ煙草をふかす奏。
「…そう。…横いいかしら?」
そう、尋ねるもう1人の人影…魅月。
ん、ああ良いよとでもいうように、一つ頷き少し横に移動する奏。
それに微笑み、魅月は横に座った。
「…ところで、どうして追いかけようなんて?
 別にほっときゃいいだろう?」
「…そうね。どうしてかしら。
 ただ。ちょっと気になったの…
 フフ、それにしても、風が冷たくなって来たわね。
 …
 こういうのを木枯らしとでもいうのかしら?」
煙草を吸いながら尋ねる奏に対して、
そんな問いなどどうでもいいというように、
髪をかきあげながら、静かに海を見つめる魅月。
「………」
魅月の真意を測りかねて、静かに魅月を見る奏。
暫く流れる静寂。
そこには動きすらなく、
煙草の揺らめく煙だけが静かに空へと舞い上がる。
「…海って良いわよね。」
不意にぽつりと魅月が言葉を漏らす。
「…ん?」
少し小首をかしげる奏。
そんな奏を見ずに、魅月は言葉を紡ぎ続ける。
「夏になれば、人が賑わい、
 泳ぎにサーフィンにと、騒がしい。
 けど、その賑やかさが…
 人と人との交流がとても楽しいる
 冬になれば、人が無くなり、
 寂寥の場所。
 1人で想いにふけるのに丁度良い。
 …奏さんはどんな想いを此処へ運んで来たのかしら?」
静かな言葉に、参ったとでもいうように、奏は首をふり…
「…やれやれ、
 まるでなんでもお見通しといった感じだね。
 私は…無免許医でヤブでさ。
 色んな患者を助けてきたけど、
 色んな患者を助けられなかった。
 時折想うのさ。
 もし、自分がどうしていれば患者を助けられていただろう。
 ってね。
 …私に出来る事があったんじゃないかとか、
 ま、私らしくない後悔って奴さ。」
ぽつり…ぽつりと言葉を呟く。
それをじっと聞き続ける魅月。
その吐露を酷く静かな顔で最後まで聞きとげて、立ち上がる。
「…それでも、奏さんがその時に全力を尽くしたのなら…
 きっと患者は嬉しかったと想うわ。
 …きっと、ね。
 …今日はこんなにも木枯らしが吹きすさぶから…
 体を壊さないように、ね。先生――」
それじゃ、というように手を振ってさる魅月。
吸い尽くした煙草を海に投げ捨て奏も立ち上がる。
暫く月を見上げ、奏は元の場所へ帰りゆく。
―― 一つの決意を胸に抱いて。


(お題:こたつ)

ちゃぶ台で1人の仮面を被った老人と1人の女子高生がお茶を飲んでいた。
ずずず…
静かな空間。
そしてちゃぶ台の上には蜜柑の山とお饅頭の乗った皿が二皿。
「……美味しいお茶ね。」
そう呟き、コトリ…と湯のみをちゃぶ台に置く女子高生――魅月。
「ふぉふぉふぉ☆
 そうぢゃろう、そうぢゃろう!
 わしの秘蔵☆のお茶じゃからな!」
そういって、愉快そうに笑う老人――藤九郎。
「…堪能させてもらっているわ。
 一つ…難をいえば…」
「難をいえば?はっきりいうてみい!」
喋りながら目を瞑る魅月に、体を乗り出して続きを聞こうとする藤九郎。
少しの間がおいて、
魅月はしずかに瞳を開き…
「――これがコタツでは無い事。
 惜しい、実に惜しいわ…
 これがコタツならこの季節ぬくぬくと蜜柑を食べながら、
 猫さんと一緒にころころすると気持ちいいかと想うと――
 …コタツにしてもいいかしら?
 このちゃぶ台。」
少し顔をしかめ本当に悔しげに言った。
しばし流れる沈黙。
「…何をいうかと思えば、
 ちゃぶ台にはちゃぶ台のよさがあるっ!
 だからコタツにせんでもいいのじゃッ!
 っていうか、魅月ちゃんは、コタツ至上主義者か!
 おのれ…!
 やらせはせん、やらせはせんぞー☆」
そして、正気を取り戻し、
どんっとちゃぶ台を叩いて反論する藤九郎さん。
その言葉に一つ頷く魅月。
「別に至上とまでは。
 ちゃぶ台にはちゃぶ台のよさがある事は分かっているつもり…
 でも…コタツ便利とおもわない?
 浮き輪をつければ、水上仕様に。
 気球をつければ、空中仕様に。
 いつでもぬくくて中になんでも入れられる。
 まさに夢のアイテムだと想うのだけど。」
そんな事を真顔でいう。
再び流れる沈黙。
「…さすがに浮き輪や気球でどうにかなるもんではないとおもう…
 と言いたい処じゃが、
 理不尽なコタツは以前にも見た事があるので、
 否定出来ないのぅ。」
一口お茶を飲み落ち着いた所で話す藤九郎。
「あら、以前にそんなコタツを拝見した事があって?
 流石ね。私も見てみたかったわ。
 さすがは、藤九郎さん。
 物知りね。」
藤九郎さんの話を聞いて、クスクス笑う魅月。
「ふぉっふぉっふぉ☆そうじゃろう、そうじゃろう。
 ムッ…」
笑いながらお茶を飲んだ所で急に沈黙し、
震えだす藤九郎。
それを見て逃げるように離れる魅月。そして…
「茶がぬるいわーっ☆」
そんな言葉と共にちゃぶ台返しを行う藤九郎。
ちゃぶ台の上のお茶が、蜜柑が、饅頭が空を舞う――。
今日も藤九郎のちゃぶ台返しは絶好調なのであった☆


(お題:クリスマス)

それは12月23日の事だった。
「…という訳で、クリスマスパーティするわよ。」
『は?』
毎日の会議の終わりに、唐突に魅月はそういって締めくくった。
あまりにも唐突な発言の為、
思わず声を上げる5人の仲間達。
「は?ではなくて、
 クリスマスパーティ。
 知らないのかしら?そういう習慣は無かった?」
何を今更とばかりにため息をついて言う魅月。
「いやいや、クリスマスくらい知ってるけど、
 なんでまた、とーとつに。
 っていうか、料理とかツリーとかどうするのさ!?」
先陣を切って突っ込んだのは奏。
最もな話である。
全く何も用意出来ていない状況でこれなのだから。
「そこをなんとかして。
 ああ。料理についてはレイナさんとヒカルさんに任せるわ。
 ただし、ケーキと七面鳥は欠かさない事。
 材料は…まぁ、手分けして探すわ。
 残りのメンバーはクリスマスツリーの用意ね。
 後、各自プレゼントの用意。
 最後はプレゼントの交換会っていった所ね。」
だが、魅月は何でも無い事のように、
あっさりと反論を切って捨て有無を言わさず推し進める。
「なんやえらいやる気どすなぁ。
 楽しそうやから、かまへんけど・・・
 なんでそないに気合入ってますんやろか?」
「楽しそうだから全然OK!
 腕によりをかけて料理作るね!」
一つ頷いて首を傾げるヒカルさんと、楽しげに腕まくりするレイナさん。
まぁ、楽しそうだし、いっかと他のメンバーも賛同する。
それを見て満足気に頷く魅月。
「…それじゃ、よろしく。
 私はちょっと人を呼んで来てから手伝うから。
 まぁ、多少楽をするのは、
 私への12月25日の誕生日プレゼントという事にしといて。」
そして、スタスタと魅月は呆然とする仲間達を尻目に外へと出て行った。
次の目的を果たす為に…

………

魅月が次にやってきたのは3人組のいる場所だった。
1人は長い槍をもった男…岩絃。
1人は蒼い髪の女性…リゼ。
そしてもう1人は…長い刀を持つ女天狗…雷鼓。
「あ。どーも。今日はどうしたんだ?」
「こんにちは、魅月さん。どうしたんですか?」
「よう。魅月じゃねぇか。どうしたんだ?」
三者三様の挨拶。
それを聞いて優雅に一礼をする魅月。
「今日は皆々様方にお願いがあってやってまいりました。
 実はこの度、クリスマスパーティを開く事になりまして、
 是非参加を、と。
 それで、岩絃さんと雷鼓さんには、飾りつけのお手伝いを。
 そしてリゼさんには聖歌を歌って頂きたいのです。
 お礼はごちそうで…で、どうでしょうか。
 それから、パーティの最後にはプレゼント交換会を予定してますので、
 是非プレゼントを持参して参加して下さいませ。」
そして、用件を率直に言う。
「ん。手伝える事があるなら手伝わせてもらうよ。
 ごちそうも出るみたいだし、喜んで。」
笑顔で快諾する岩絃。
「え、えと、私の歌でよろしいのでしたら、
 喜んで、1人聖歌隊だってやってみせますよ!」
慌てながらも快諾するリゼ。
「飾りつけぇ?チッ、めんどくせぇな。
 ただ、まぁ、
 礼も出るみたいだし、別にかまわねぇぜ。」
渋々に一見見えるが、笑っている所からすると、
快諾してくれてはいるのであろう雷鼓。
「…ありがとうございます。」
それを見て、クスクス笑いながら礼をいう魅月。
「…何がそんなに可笑しいんだよ?」
「いえ、ただ…
 お三方の反応がそれぞれ違って面白くて…
 他意は無いので気になさらず…
 それでは、また明日の昼頃に来て下さいませ。」
キョトンとした3人を尻目に踵を帰して立ち去る魅月。
…クリスマスパーティに期待を膨らませながら…

………

それからの準備は割と簡単に済んだ。
ツリーは帰ってみると、見事な物が見つかっていたし、
料理の方も明日に備えて仕込みは万端らしい。
さらに翌日の飾りつけも、岩絃、特に雷鼓の活躍もあって、
凄く早く済んだ。
巨大なツリーの上に星をつける作業なんて雷鼓がいてこそだったろう。
後は祝うだけ。

「それでは、皆さん、メリークリスマス!」
『メリークリスマス!』
魅月の声と皆の声が揃った処で、
キャンドルが12本ささった大きなケーキを中心に、
ご馳走が並ぶテーブルを囲んでパーティが開かれた。
料理を食べたり会話をする合間に、
響き渡るリゼの歌声。
まるで、その歌声は1人だというのに聖歌隊が存在しているかのよう。
何でも本人の話によると…
「私は八つの声をもっていて、使い分ける事が出来るんです。」
との事。
他のメンバーを見てみると、
雷鼓が岩絃をからかいながら、
七面鳥を豪快に食べてたり、
エモがもの珍しそうに色んなものを見て歩いていたり、
藤九郎が何故かちゃぶ台でお茶を飲んでいたり、
ヒカルとレイナが談笑していたり、
奏が色んな料理をつまんでいたりしていた。
そんな中、1人魅月はその片隅でにこやかに様子を見…
楽しい時間が過ぎていく。
そして、最後のプレゼント交換を経て…
――楽しい時間は終わりを告げた。

その夜の事、
1人、プレゼントを開け中身を月にかざす魅月。
そこにあったのは…
皆からの温かいメッセージが書かれた色紙と、
小さなブローチが一つ。
そっと胸に抱きしめて、
魅月は1人、涙をこぼした――




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