「うっはぁ、強いねぇ。」
怨霊の作り出した風がエルビラを吹き散らす。
されど、
私の作り出した風では、
それでも翻弄(ほんろう)されているエドは兎も角、
サニーとサニーの呼び出したサバス。
そして…
リトルウィザードまでは止まらない。
霊達の数も少なくなってきた。
それにエモさんの疲労し戦線離脱。
奏さんが倒れた事も考えると、
継続して戦闘するのは危険すぎる。
霊数は恐らく数百。
非常に、不味い。
私自身の戦闘力では相対するのは無謀。
だが…上手く流れに乗ればまだ勝機はある。
果敢に攻める。
攻める…
だが、届かない。
彼等の壁を打ち砕くには力が足りない。
足りなさすぎる。
されど諦めはしない。
必死でもがく。
相手の攻撃を逸らし、
直撃を避ける。
ダメージを受けて霊が散っても問題ない。
時間さえ、
時間さえ稼げば…!
だが…
「全弾発射あぁぁっ!!」
そんな私の願いさえ打ち砕かれる。
リトルウィザードより無数の弾が発射される。
流石にどうこう出来るものではない。
全ての霊を集中し、
己の身を守る。
だが…そこにサバスの一撃も加われば防ぎようもなく――
「残念でした!」
「脳ミソ入れなおしてきたら?」
「……ふむ。」
「うぅ、ひっ…く、ひっ…うぅ……」
吹き散る霊達。
その衝撃に吹き飛ぶ私。
意識が飛んでゆく。
消える意識の中、
そんな声が聞こえ――
――私の意識は其処で途絶えた――
「これで六話目。
…
長いようで短いような感じだな。」
蝋燭(ろうそく)がまた一つ消える。
これで残った蝋燭は一つ。
弱弱しい光が照らし、
終りを感じさせると同時に、
不気味な空気や、
不穏な気配が漂ってくるよう。
私に分かるのは…
それが、錯覚などではない事。
だからこそ、
今ここで切り上げようとすると、
思いがけない人物から静止の声がかかった。
「さて、七話目は僕が話すわけだけど、
…
ここでやめにしないか?」
「え?
今更?」
「なんでだよ。」
それは、七話目を知る人物。
不満の声をあげたのは半数、
残りの半数は私も含め、
少しほっとしている。
「…危険、だからだよ。」
「…迷信だろ?
いいから話せよ。」
「…仕方ないね。」
だが、
不満の声を上げた一人、
そう六番目の話をした子が突っかかる。
その剣幕に呆れたように首を振り、
七話目は語られる。
まるで予定調和のように。
きっと…
逃れられはしない。
何故なら、
私は見たのだから。
七話目を語る彼が一瞬笑みを浮かべたのを――
気がつけば寝かされていた。
体を起こし周囲をみると、
他にもやられた人達が大勢いる。
奏さんもエモさんも晃さんもレイナさんも藤九郎さんも。
まだダメージは抜けきっていないようだが、
命には別状ないようだった。
…
どうやら、やられても…
その戦う意志と、
戦う力が枯渇しない限りは…
何度でも立ち上がり戦う事が出来るらしい。
まだ動ける。
まだ戦える。
「がんばるのねぇ…
…でも大丈夫かしら?
こんなにマナを浴びせて。」
「ヒヒッ…ご明察。
いやいや、
この島に対抗し得る力を模索したのですがね…
…やはり強大な力にリスクはツキモノのようですッ!
…まぁそれは、お互い様でしょう?
…ククッ!!」
「……その前に、力尽きるのはそっちよ。」
「貴女の領域下に長居はしたくありませんからねぇ…
…一気に行きますよッ!!」
一つ頷き、
ふとカエダと榊の方をみやると、
2人は高見の見物を決め込んでいる。
だが、
こちら側の状況を見かねたのだろう。
榊が手を広げ、
更にマナを更に放出する。
どうやら短期決戦に持ち込むらしい。
確かに強い力。
これだけの力があれば、
相手を打ち破るのは難しくはなくなるだろう。
されど、
それ故の消耗も倍増する。
…長期決戦には向かない。
だが…
勝てなければ短期決戦も長期決戦だろうが意味はない。
確率が高いのならばそちらに賭ける方がいい。
判断としては最善。
後問題があるとすれば――
相手の組み合わせ…
だろう。
強い相手。
だが、それだけでは今まで戦ってきた相手もそう。
問題になる事でもない。
逆に純粋な力が弱い存在は弱体化する事を考えれば、
苦労は減るだろう。
問題があるとすれば…
純粋な力こそ弱けれど、
厄介な存在。
純粋な力を得た厄介な存在ほど面倒な相手はない。
…
まさに私達が今回戦ったサニーなどもそれにあたる気がする。
最も、
それは相手にとっても同じだろうが…
はたして次の相手は私達にとって、
どんな結果をもたらすのだろうか。
奏さんとエモさんと合流し、
準備を整え、
戦場へと再び向かう。
現れるのはやはり葉で模られた強敵。
純白の髪を持つ女性。
水色の髪を持つ女性。
そして…
銀色の髪の男性。
男は鍛え抜かれており、
純白の髪の女性は冷たく神聖な空気を。
水色の髪の女性は冷たい水のような印象を受ける。
前衛に後衛。
そして冷たい水…
凍れる力を操るのだろうか。
強敵には違いない。
組み合わせとしても悪くはないのだろう。
そして…
その力は私達が負けた相手と変わらないように思える。
だが、
今の私達は前とは違う。
無論…
力を得たが故に長期戦は出来ないとはいえ、
これを倒して終わりではない。
後々を考えて戦うとなると厳しい戦いになるのも事実。
だから…
一切の油断はしないし、
出来ない。
無様な戦いもしたくはない。
私自身の気は充実している。
そして…
散っていった霊達も再び集まり始める。
そう。
まだ…
まだ戦える。
なればこそ――
「何度でも立ち上がり、
風の力を味あわせてあげるわ。
私に戦う意志と…
戦う力が尽きぬ限り…ッ!」
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