激しい攻撃で、
一方的展開を繰り広げる私達。
凄まじい速さでうねりをあげて敵を攻撃し続ける霊達。
そして、唐突に辺りを埋め尽くすが如く広がる。

「さぁ、黄泉路への道が繋がったようよ?
さようなら――」


それを見て、ぽつりと呟く。
すると…広がった霊達が敵を包み込み…、
全ての敵が霊に飲み込まれていく――
ああ。だから、私はいったのに…
私に近づかないで――…と…
何度いっても伝わらない。
…はたして、何故襲い続けてくるのだろう。
勝ち目のない戦いであっても…
本当に不思議。
護るものがあるのかしら?
…だとしたらそれは――
この島に眠る宝?
……興味がどんどん深くなっていくわね。

ともあれ、見事勝利を果たし、
森の中を歩みゆく。
森の中は中々心地が良い。
足場は悪いけれど、
これくらいならば余裕ね。
しっかり歩み、
森から抜けた処でキャンプをする事になった。
…明日は何が待ち受けているのかしら…?
気になって眠れない…が、
瞳を閉じてじっとしていると次第に眠気が襲い、
深い眠りへ――


* * * * * * * *
私に突きつけられた刃。
私はそれを見て、
とても、温かかった。
恐怖は無かった。
ただ、ただ、
温かかった。
どうして?
どうしてこんなにも温かいと感じるの?
それは想い。
親が子を想う、純粋な思い。
単純にして明快、そして絶対なる力――



「さぁ、答えて下さい――」
震えもなく刀を突きつける八音さん。
――クッ…
其れを見て、私は笑っていた。
静かに、とても可笑しくて…
何故可笑しいのかは分からない…
いえ、分かってはいる。
でも、これは…他人にはきっと理解出来ない。
「何が可笑しいのですか――?」
笑っているのを見て、
八音さんの顔が険を帯びる。
「フフッ…ああ、ごめんなさい、
 いえ、私に害意は無いわ。
 …友達になろうといってくれて、
 とても嬉しくて…
 彼女の顔がとても優しくて…
 私も友達になりたいと思った。
 だから、
 友達になった。それだけの事。
 そこには何の損得も無い…いえ、
 得はあったわね。
 彼女というかけがいの無い友を得れたのだから――」
険を帯びたのが見てとれたので、
笑いを抑え、静かに語る。
暫く流れる沈黙。
まるで時が止まったよう。
そんな時奥から――
「魅月ー、おとーさーん!
 早くこないとお茶が冷めちゃうよ?」
九音の声が届く。
どうするの?と首を傾げる私に、
首をふって刀を仕舞い、笑顔になる八音さん。
「ああ、今行くよ――!
 …娘の友達である貴女を誤解していたようです。
 失礼しました。
 どうぞ、ごゆっくりしていって下さい。
 …事情は知りませんが、
 後で…もしよければ、
 私にもっと貴女について知る機会を与えていただけませんか?
 何か事情があるのでしたら、
 差し出がましいかもしれませんが、
 力になれるかも知れません。
 さ、どうぞ。」
そういって踵を返し、後をついてくるよう促す八音さん。
「――ありがとうございます、
 それでは、お邪魔致します――」
静かに一礼をして、後をついていく。
…とても優しい人。
そして、温かく強い人。
本当に良い親だと想う。
羨ましいけれど、それ以上に…
私の友達…九音が輝いて見える理由、
それが少し分かって、
とても嬉しかった。
八音さんに案内されて、
奥の部屋へ。
八音さんがふすまを開けると、
九音と、
もう1人、巫女服を来た女性が座っていた。
静かに微笑む優しそうな女の人。
顔立ちは九音に似ている。
恐らくは、彼女の母親なのだろう。
そして彼女達2人と、
空白の座布団の前にお茶と羊羹が用意されていた。
「もう、魅月もおとーさんも遅い!
 待ちくたびれたよ!」
「ははは、ごめんごめん。
 ちょっと、九音の学校での様子を聞いていてね…」
「ちょ、おとーさん!?」
そして、入るなり交わされる親子の会話。
本当に仲の良い事。
私はクスリと微笑み…
「…大した事は話してないわ。」
と、一言だけ答えた。
すると、九音が照れくさそうにこちらの方を見て、
頭を軽く下げ…
「それなら良いけど。
 あ、ほら、お母さん、
 この人が友達の魅月さん。
 今日はお泊りしてくれるんだよ!」
と、横にいる女性に私を紹介する。
「伊賦夜 魅月と申します、
 この度はどうも、お世話になります。」
それを受けて自己紹介をし、一礼する。
すると、静かに両手を地面につけて、
静かに頭を下げる九音の母親。
「これはこれは…ご丁寧に。
 如月 雫と申します。
 今後も末永く娘と仲良くしてあげてください。」
とても丁寧な挨拶で返される。
…礼儀正しい人。
そして、4人で談笑する。
話す話題は色々あった。
学校での事、
家での事、
遊びに行った時の事。
楽しい時間。
あっという間に過ぎていく時。
…家族って本当に良いわね…

私が過去に失ったもの。
それがそこにはあった。
九音と、その両親。
私は…
傲慢かもしれないけれど、
3人と一緒にいるだけで、
家族の1人であるように錯覚出来た。
失ったはずのものが、ここにはある。
…けれど…
私には、
それを望む資格すら無かったのかもしれない――

* * * * * * * *



――目が覚める。
ゆっくりと朝の日課をこなそうとした時、
不意におきだして来た奏さんと目があった。
「ちょっと――」
そして私の方へ駆け出してくる奏さん。
…用件は、分かっている。
「血だらけじゃないか!
 どっか怪我したのかい!?
 まさか、何かに襲われた…!?
 だから1人で寝ずに皆と…!」
まくし立てる奏さん。
このままでは何いわれるか分からないので、
そっと手で制する。
「…気にしないで。
 いつもの事。」
そして静かに告げる。
これは仕方の無い事。
どうしても避けられない事――
「まぁ、いいから、傷を見せてみなっと!」
だというのに、
彼女は私の腕をしっかり掴んで真っ直ぐ私の瞳を見た後、
私の傷の具合を見始めた。
抵抗してもいいが、
ここは、大人しくしておこう。
…口よりも見せた方も速いのは確かだから。
「…傷が無い?
 でもあの出血なら、大きな怪我を…」
そして、傷が無いのを確認し、
1人呟く奏さん。
「…本当に、大丈夫だから。
 また、後で。」
納得したのを見計らい、踵を返し、朝の日課…
即ち…洗濯をはたしに移動をはじめる。
が、それを呼び止める奏さん。
「待った。」
「…?何?」
「…正直、私にはよく分からないけど…
 えーと…
 ああもう!
 何かあるならいつでもいいから、私達に言って欲しい。
 それだけは…お願いしたい。」
…心に痛いほど響いてくる言葉…
そう、いつかは…仲間達にいわなければならない。
それは分かっている…
「…そうね。」
だから、振り返って一つ頷く。
「…ありがとう。之はお礼よ。」
そして、懐から煙草を取り出し一本差し出す。
そして私も一本吸う。
少し驚いた表情をして受け取り吸い始める奏さん。
「や、驚いたね。
 まさか、魅月さんも吸うとは。」
そんな奏さんの言葉にクスリと微笑み、
再び踵を返す。
「…たまには吸いたくなる事もある。
 …それを知っている。
 それだけの事よ。」
そして、後を向いたまま答え、悠然と歩み去る。
………本当にありがとう。
その言葉を胸の内にしまって――

朝の食事を終えて、会議を始める。
今度の移動先には魔法陣がある。
そこで魔法陣から遺跡の外へ出るという寸法になった。
それにしても、この遺跡…島は変わっている。
遺跡で日々を過ごし、
訓練…といっても私は大して何もしないけど――
するたびに、どんどん強くなっていく。
そして、遺跡に出ないと、
持久力や使える技を失っていく…らしい。
残念ながら、私には実感が無いのだが、
本当に不思議な島。
…まぁ、歩行雑草なんてものがいる時点で、
不思議なのは当たり前とはいえ、
改めて実感させられる。
歩行雑草とて最初は強敵だった。
今では比較的楽に勝てるとはいえ…それに…
日々と共に敵も強くなっている様子…
ならばこそ、準備は常に万端であるようにしないといけない。
装備だってそう。
もっと良質のものがないと先にいくには厳しいらしい。
…考える事が一杯ね…
また、外に出る理由はそれだけではない。
寧ろ、こっちの問題の方が重大といえるだろう。
それは、食料の枯渇。
パンくずや美味しい草等があれば、
立派な料理が出来るけれど、
無ければ料理が出来ないというか…
何故か食材が手に入らなくなる。
敵から奪う…という方法はあるとはいえ、
本当にどうなっているのかしら。
興味深くて調べたいという人が多いのも頷ける。
しかし…
この島は何故こうして存在し、
奥には何があるというのだろう。
求めたものがあるのだろうか。
考えれば考えるほど、
一つの事にたどり着く。
叶わぬ願いと知って尚――
この島ならば――
そう、感じさせてならないものを、
この島は持っているのだと――
…とりあえず、この後、
必ず何かが襲い掛かってくる。
それを打ち破り、前に進もう。
戦闘では足手まといの私でも、
前に進む事は出来る。
不安も心配も沢山ある。
でも、私には仲間がいる。
仲間達とであれば…
きっと必ず上手くいく…
そう信じて――
ただ、真っ直ぐと…前に――


会議も終わり、
1歩を踏み出す。そして道へ入ろうとした瞬間、
現れるのは一匹の巨大な蟻。
…蟻とはいえ、強い。
が、負けるわけにはいかない。
こちら側はヒカルさんと2人での戦い。
力を合わせればきっと――勝てる!

「私達の道のいく先を、
誰にも邪魔はさせない…
だから…
邪魔者は退きなさい!」



※■第一回 文章コミュイベント■
サービス御題「島」
日記のごく一部じゃないかというのは内緒。


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