「それで――ラストよ!」
最後に残った歩行雑草を叩き伏せる仲間達。

「も、モッサァァァァァァァッ!!」

そして同じような声をあげて倒れる歩行雑草。
それにしても、
この歩行雑草という緑の怪生物、
もっさー以外喋れないのだろうか?
そういえば、ヒカルさんが動植物に詳しい。
早速聞いて見る事にした。
「…という訳で、
 歩行雑草ってもっさー以外いわないのか、
 是非意見を聞かせて欲しいの。」
単刀直入に。
「んー。ウチがしっとる限りでは、
 それ以外言いまへんなぁ。
 かといって、
 まだ研究を始めてまもないから、
 ひょっとしたらそういうのもいるかもしれへん。
 ちょい調べてみるのもおもろいかもしれへんな。」
すると少し首をかしげながら、
微笑みを浮かべて返事を返してくれた。
…この島には本当に、謎が多すぎる。
「それより…魅月はん。
 魅月はんの使うてる霊についても、
 ちょい調べてみたいから、
 今度機会作ってくれへんやろか?
 って、聞いてます?」
そう、考え事をしている姿が、
ボーっとしているようにうつったらしい。
いけないけない。
頭を軽くふり考えを払い。
「ええ、聞いているわ。
 ごめんなさい。少し考え事をしてしまったの。
 …機会はいくらでも作るけど、
 私が制御している訳じゃないから、
 くれぐれも気をつけて欲しいわ。
 それと、後もう一つ…
 どうも、ここの島の生物、
 襲ってくる時間、タイミングがいつも同じ気がするのだけど、
 それって何か意味があるのかしら?」
…折角なので、
もう一つ抱えていた疑問もぶつけてみた。
「んー、
 そっちも分からへんなぁ。
 でも、何か分かったら知らせるから、
 待っててもろても宜しおすか?」
その答えに一つ頷き、握手をして、それぞれの行動へと戻る。

やはり、分からない事が多すぎる。
この島のこと。もっと深く詳しく調べないと。
それにしても…
…島も変だけど、
それに加えて、この島に居る人々も妙ね。
この霊達が見えている人が多い。
ここの場所のせいもあるかもだけど、
それにしても、皆の力は凄まじいのは元々のものだろう。
……
世の中広いのか。
それとも…
いえ、何か大きな意志が絡んでいるとしても、
今はまだ情報が少ない。
仲間達と一緒にさぐる事にしましょうか。

仲間って本当に良いものね。
でも、必要以上に親しくならないようにしないといけない。
…親しくなっては…
………

静かに黙々と移動する。
そして魔法陣がある場所に出る。
今日はここで一泊する事になった。
魔法陣を調べてみると、
どうやら転移のマーク地点で、
次からはここから移動出来るらしい。
これで行動範囲が広がる。
はたして次は何が待ち受けているのか。
一つため息を漏らすと、
夕食を食べ、静かに1人眠る事にした。
瞳を閉じるとすぐに睡魔が襲って来て、
静かに、静かに、
意識が深い闇の底へと沈んでいく――

* * * * * * * *

夢を見た。
それは古い古い記憶。
昨夜過去を振り返り、
夢に見た日の続きの記憶。
ああ…
あの頃に戻れたら…
そう願わずにいられない。
でも、それは叶わぬ夢。
過ぎ去りし日々は戻らない…



九音と友達になってから、
私の生活に変化が見え始めた。
見えない霊が私に取り巻いているせいで、
人は本能的に怖いと察する。
故に、私に声をかけようと思う人間は少ないし、
私も積極的に人と関わろうと思わなかったので、
九音という友達以外関わる人はいないだろうと思っていたのに、
クラスメイトが最初こそ声をかけるのに躊躇するものの、
私に積極的に関わろうとしてくるようになった。
曰く。
「魅月さんとは前からお話がしてみたかった。」
「くーちゃん(九音さんの事らしい)が友達が出来て喜んでて、
 誰って聞いたら魅月さんって答え帰って来て、
 びっくりすると同時にこれがチャンス!
 と思ったんだ。」
「前と比べて刺々しい感じがやわらかくなった。」
などなど。
…どう反応すればいいのか、微妙だけど、
まぁ、喜ばしい事…なのかしら?
未だによく分からないけど。
戸惑っていた私の肩が不意に後から叩かれる。
振り向いてみると、
そこにいたのは…
「授業終わったね。
 一緒に帰ろうよ、魅月さん。」
笑顔の九音さん。
「え、ええ。そうね…」
少し混乱していた為、
歯切れ悪く答えてしまった私。
「どうしたの?
 魅月さん、具合でも悪い?」
あまりにも歯切れの悪い答えに心配をする九音さん。
…心配させるつもりは無かったのだけど…
ともあれ、誤解は解かねばならない。
「…いえ…
 今までこんなに皆に話しかけられた事が無かったから
 戸惑ったのよ。
 九音さんが友達になってくれたとはいえ、
 こう…皆も私に関わろうとするなんて思わなかったから。」
その言葉に、九音さんはんー、と首をかしげ…
「そうかなぁ?
 皆わりと魅月さんと話したいって前々からいってたし。
 ただ、ちょっと話しかけづらいのは確かだったから、
 誰も話しかけなかっただけで、
 こう、思い切って話かけるのってきっかけ無いと難しいから…
 あ。一緒に帰るのはいいけど、
 魅月さんってどの辺りに住んでるの?
 私はさ、学校から5分ほど
 山の方へ歩いた所に神社があるじゃない。
 あそこの神社が私の家なんだよ。」
なんで不思議なのか分からないといった風にきりかえされた。
思わず、悩んでいた私が可笑しくて、クスリと笑ってしまう。
「ど、どうして笑うの!?」
私の笑いを見て慌てる九音さん。
「いえ、なんでもないの。
 私が住んでいるのは、そうね。
 神社の近くのあの古ぼけた屋敷よ。
 だから帰りは神社まで一緒になるわね。」
住んでいるというより、
仮初の宿といった感じだけど、それは口には出さない。
が…
「え゛!?
 あの幽霊屋敷!?
 うわぁ…今度遊びにっていおうと思ったけど、
 なんか怖いなぁ。」
露骨に驚いて、ちょっと引く九音さん。
まぁ、仕方の無い事。
古ぼけてただでさえ出そうなのに、
私がいる事で確実に出る幽霊屋敷。
…好んで来たいなんて人は居ないでしょうね。
「…私もいるし、昼間なら大丈夫よ。
 それに慣れたらなんて事は無いわ。」
軽くため息をついて答える。
其れを見て、あはは、と照れくさそうに笑い。
「それもそうだね。
 ごめんね。
 それじゃ、一緒にかえろ?」
私に向かって手を差し出す九音さん。
クスリと私は微笑んで、
気にしてないわと囁いて手をしっかり握り返す。
そして、2人手を繋いで帰路へとついていった…

夕日が2人を照らす。
手を握り合って帰る姿を照らす。
2人は確かに友達だった。
まだ親友となるには時間が必要だが、
きっと2人は親友になれるだろう。
最高の友達に…
でも、それから?
それからどうなったのだろう?
その答えは――



* * * * * * * *



――目が覚める。
まだ夜空に日は昇っておらず、
ほの暗い。
起きてしまったのはしょうがないし、
目が覚めて起き上がると。

ボトリ…

何かが落ちる音。
何が落ちたのか確認してみると、
…手?
左手を見る。ちゃんとついている。
右手を見る。千切れている。
…どうやらこれは私の右手らしい。
左手で拾い上げて抑える。
そうしているうちに、日が差し込んできた。
日が差し込むと同時にすっとくっつく右手。
…便利なのだか、
不便なのだか…よく分からないわね。
ともあれ。皆がおきだす前に、
日課の洗濯とお着替えを済ませてしまう。
そして、皆で会議。
次、どう移動するのか、
敵に襲われたらどうするのか。
様々な事を話し合い、朝食をとる。
それにしても、
パーティ換えか。
変える事でどうなるか…
楽しみではあるわね。

そして、この後練習試合があるのだが…

……
………
…やっぱりね。
でも、私に出来る事、何かないだろうか。
いつも私は戦っていない。
戦いは私に集まる霊が全てやってくれるから。
だからこそ、私に出来る事も探さないといけない。
…何か、何かあるはず。

そして、いつものように、敵が現れる。
小悪魔と猫と…
壁?
しかも、歩いてる…!?
…生き物なのか、それとも、機械みたいなものなのか…
何れにせよ、この島の生物は明らかに可笑しい。
でも、負ける訳にはいかない。
立ち向かえるだけ、立ち向かう!

「例え、どんな壁が行く手を阻もうと、
 私の歩みを止める事は出来ない…!
 それでも抗うのならば、
 見事、霊の全てを打ち砕いてみせなさい…!」




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