「くっ!キリがない…!」 「本当にな…!全く…!」 襲い来る魔物を一組の男女が切り伏せて進んでいく。 後、少し。 後少しで、魔王の元へと辿(たど)り付ける。 「全く、雑魚とはいえっ!  こうも多くちゃ、やってられないッ!」 しかし、敵の数は多く、 切り伏せても切り伏せても津波のように襲い来る。 「本当にね…!  貴女と一緒じゃなかったらとてもここまでこれなかった…感謝してる!」 「ハッ、感謝は生きて帰れたらに――」 ――パキィン―― (――しまった!) 生きて帰れたらにしろといおうとした女の剣が折れる。 剣の寿命、だ。 これだけの敵を相手にしてきたからには、 そうなったとしても仕方のない事だろう。 「…チッ。ここまで…か。いいさ…  振り向かず、真っ直ぐ進んでいきな!  ここは私1人で食い止めてみせる!  あんたが1人でたどり着ければ、  それで終わり!  それで平和が戻ってくるんだ!」 「…!馬鹿な事を、貴女を置いていくわけには――」 「いいから行くんだ!  あんたの背負ったものは私1人だけの想いじゃない!  そうさ、この世界全ての人の願いを背負っているんだろう!  ――なら、進みな。  心配いらないさ、武器が無くても…」 折れた剣を捨て、拳で魔物を殴り倒し、女は魔物達へと立ちふさがる。 そう、前に魔物はいない。 目の前の扉を開けば魔王がいる。 気がつけばこんな所まで…来ていたのだ。。 ここで女が立ちふさがれば、男は魔王に邪魔をされずに辿り付ける。 「――結構強いのさ。  だから――いけ!  行って全てを終わらせて来い!  ここは私が引き受けた。  ――何人だろうと、私があんたをおわせはしない!  さぁ、早く!」 「…ッ!」 歯を食いしばり男は扉を開けて進む。 「それでいい。それでいいんだ。勇者様。  さぁ…かかって――」 男を見送る為に一瞬油断したのだろう。 完全にその隙をつかれた。槍が女に突き刺さる。 血が零れ落ちる。 直感する。これは致命傷だと。 命を奪う一撃であると… 「…ぐ…ち。油断…しちゃったかねぇ。  …だが、ここは通しはしないさ。  その為の用意は…してあるんだから…ねぇッ!  ――は、こんな時だから言えるけど…  愛していたよ、勇者様。心の底からね。  ――さようなら、願わくば平和の世を一目…ッ!」 覚悟を決める女。 懐に忍ばせた爆薬全てに点火する。 最初からこのつもりだった。 もし何かあれば迷わずにこうして―― 勇者の為に――死のうと。 炸裂する爆薬。 閃光が部屋を満たす。 響く爆音、 そして炎が全てを包み込んで―― ――女は気がつけば浜辺に打ち上げられていた。 「…ん…」 目を覚まし身体を起こすと激痛が走る。 「〜ッ!死んだのならせめて痛くないように…あれ?」 ほっぺたをつねる。痛い。 怪我をしたはずの場所をみる。 大分塞がって致命傷ではなくなっている。 心臓の音を確かめる。 心臓の音はある。 「…チッ、私も悪運が強いね。  あれだけやって生き延びるなんてさ。  あーあー、カッコつかないね。  あんなけやって生き延びるなんて。  …で、ここは何処だい?」 彼女は知らない。 ここがどこなのか。 そしてここがどんな島なのか。 それはこれから知っていくこと。 ――更にこれから出会う仲間達にこの島に来た理由を聞かれ、 恥ずかしさの余りいえなくて赤面することも――