「聞こえない」という状況は誰でも直ぐに判ると思います。
例えば、手で耳を塞いだ状態ですね。
それでは「聞き取り難い」とはどういうことなのでしょうか?
「聞こえない」と「聞き取り難い」は、似てるようですが微妙に違います。
難聴の種類を説明する前に、耳の構造から説明します。
伝音性難聴は機能的な障害、言ってみれば外耳道の大きな耳垢や鼓膜・中耳骨等の部品の不具合で、大抵は具体的な病名がついており薬や施術で回復するようです。しかしながら、例えば小耳症・無耳症のように外耳道が完全になかったり、耳小骨の癒着など、頭部を切開して手術をしたり穴を開けなければ回復しない場合があります。これらは例えば単に耳穴をスッと開けるというような一見簡単な手術のように思えますが、実は重要な神経や血管を傷付けてしまう高いリスクを抱えています。つまり仮に難聴は治ったとしても、それとは別に重い障害を抱えてしまう可能性が高いということです。理論上はともかく、現実面ではまだまだ問題を抱えている場合があるといえるようです。
感音性難聴というのは内耳〜聴神経における故障、言わば神経性の難聴であり、内耳で音が上手く処理されなかったり、音の電気信号を脳へ伝える神経が上手く働かないため、音の内容がハッキリしないということがあります。すなわち単なる「聞こえない」という音量の問題に加えて、「聞き取れない」という音質の問題が加わります。場合によっては、音量は普通に聞こえているのに言葉の内容がさっぱり判らないという症状もあるようです。
感音性難聴の聞こえの仕組みを判りやすくアニメーションにしてみました。この場合は内耳に故障があるという設定です。耳の穴から入ってきた音は内耳までは普通に伝わってきますが、内耳で上手く電気信号に変換されず、いびつな形で脳に伝えられてしまうため、相手が何を言ってるのか上手く聞き取れません。
従って、補聴器を使って音を大きくしたり、大きい声を出して話してもらっても、音量に見合った聞き取りが出来ない場合があります。「大きい声で話してるのに。。ヽ(`Д´メ)ノ」「聞く気がない」「気持ちがたるんでる」と誤解を受け易い傾向があります。
補聴器をつけた場合の聞取りの様子をアニメーションにしてみました。この場合は判りやすく耳穴式にしていますが、耳掛け式でも同じことです。補聴器によってより聞取りやすく加工された音は中耳まではそのまま伝わりますが、内耳でいびつな電気信号に変換されてしまいます。それでも言葉としては聞き取れますが、場合によっては聞き違いが起こったりします。
感音性難聴の場合、残念ながら現時点では治療の方法がないとされています。おそらく世の「難聴者」の大部分は残念ながら治せなかった人、つまり感音性の難聴者なんではないかなと思われます。
しかし科学の発達に伴って、最近では神経細胞の培養に成功したというニュースが報道されています。SE細胞という、何の細胞にでも適応する細胞の研究が盛んになってきています。また、今のところ余り表に出てくることはありませんが、研究機関においては内耳の聴覚細胞を再生する研究が進められています。これまではおよそ無理と考えられていたことが覆って、内耳性の難聴については治療出来る時代がその内やって来るのではないかと期待されるところです。
内耳に関するものでは人工内耳というものがありますが、これは殆ど聴力がないような場合においては有効とされているようです。しかし、例えば自分のような中度の感音性難聴だと余り効果はない、むしろ頭部の手術なのでリスクの方が上回るというのが現状のようです。
最近マスコミなどで話題になっている突発性難聴は、難聴の種別としては感音性に分類されます。原因としてはストレスからくる血行障害説、またはウイルス説もあるそうです。いずれにしても、突発性難聴の場合は適切な処置が大事です。対処が早ければ治る見込みが高いようですが、放置しておくと回復は不可能になるようです。早目に耳鼻科に受診しましょう。
伝音性難聴 | 感音性難聴 | |
故障部位 | 外耳・中耳 | 内耳・聴覚神経 | 治療法 | 理屈的には外科的手術で回復可能とされている | 現時点では治療法なしとされている |