日本の政治システムにおける純粋装置は象徴天皇制です。一方、政府は実力主義・能力主義です。これが『太平記』後に生まれた「象徴天皇制」のモデルです。一方、幕末の天皇親政モデルは、朱子学の正統論と国学が習合することで生まれたイデオロギーで、思想的には別物だと山本七平は指摘しています。でも、この後者のイデオロギーがなければ明治維新もなかったわけで、歴史は必ずしも一直線に進むわけではないということですね。
実は、今日の象徴天皇制は、この前者の伝統を引き継いでいるのです。ところが後者の伝統も根強く残っており、これを思想史的に精算する必要があると山本七平は言ったのです。そこが理解されてないから、氏に対する左右からの批判が生まれているのです。また、政治家が「人間の命を大切にする政治」などという、純粋さをてらう言辞を吐くのです。それは政治に委ねられた仕事じゃないのに。
そして、「コンクリートから人へ」などといいながら、小沢幹事長が12月16日、民主党が政府に提出した要望書の中には、「高速道路の整備」という題目で、道路公団時代にタイムスリップしたかのような時代錯誤のプランが紛れ込んでいた、と猪瀬直樹氏が「時評コラム」で指摘しています。純粋をてらう言葉と実際の行動に意図的な使い分けが依然としてなされているのです。
それにしても、小沢氏の純粋天皇制を自己の政治的支配下におくかのような言動は”マズイ”すね。象徴天皇制を壊すことになりますから。キリスト教批判以上に致命的です。
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