一読者

2010/04/11(日)

レスが送れて申し訳ありませんでした。
ここ数日、少し忙しかったものですから。

>私たちの韓国理解に歴史的観点を入れるべき事の重要性を提示しているのではないでしょうか。つまり、横軸の情報ばかりでなく縦軸の情報も考慮し総合判断することが必要だと。

一般論として、韓国理解に歴史的観点が必要なことはその通りだと思います。とくに朱子学的伝統のマイナス面を直視することは重要でしょう(今まではこのことを軽視し過ぎましたから)。
ただ、個人のレベルならいいのですが、日々現実の韓国と向き合わなければならないビジネスマンやジャーナリスト、政治家などは、韓国社会の現状を把握して的確に対応すべきであり、歴史的観点からの情緒的な対応が正当化される余地はほとんどないように思います。

参考:中韓を知りすぎた男
http://kkmyo.blog70.fc2.com/
※最新のエントリーとして、韓国ビジネス記1~3が連載されています。もっとも、現在のネット上には、こうした中韓とのビジネス体験記は無数にあります。
私は、たまたま十数年以上前から、中韓ビジネス上の様々なトラブル事例を知っていましたが、日本のマスコミは、こうした問題だけでなく、中韓に不都合な国内問題もほとんど報道しないという傾向があります。一昨年の「毒餃子」問題にしても、そもそも香港返還前に起こった「毒菜」問題がキチンと報道されていれば、その後の日本における中国野菜輸入ブームも「毒餃子」問題も起こらなかったかもしれません。
韓国の漢字教育廃止も知る人ぞ知る問題で、司馬遼太郎氏は、70年代(?)の対談集でこの問題に触れ、将来の日本人と韓国人は英語で意思疎通をするようになるのではないか、と述べていたと記憶しています。

>見つけたら、参考までに教えて下さい。
>「現人神の創作者たち」の見出しに「政治が宗教になる世界」があります。…

『全集』で確認しました。ご教示ありがとうございました。
私が山本氏の書籍を集中的に読んでいたのは、十数年以上も前のことですから、やや記憶が曖昧になっている点もありますが、ざっと読み返してみて、当時考えていたことをいくつか思い出しました。
ただ、違和感を感じた部分については、その他の書籍をすべて読み返すわけにもいかず、見つけられませんでした。

>…これは、上記の「政治的大義への忠誠」とどう違うか。
>…処刑台にあがる直前、氏は、立ち会いの片山氏に「私は悪いことはしなかった。死んだら真っ直ぐ神様の所に行くよ。だから何も心配するな」といったそうです。

山本氏は、「自らの信仰(神)への忠誠」から殉教へ、という西欧の伝統的な精神史に関する理解から、それと同質のものを、ドグマたる朱子学の「政治的大義への忠誠」から殉難へ、という過程の中に見出し、その一変容を洪思翊中将の「自らの決断への忠誠」という考えに見たのではないでしょうか。
これらは、ともに「自らの主観的信念に対する忠誠」に基づき迫害や受難を甘受するという態度で、同じ『型』だと言ってもよいのではないでしょうか。
こうした観点からは、洪思翊中将の最期の言葉は、まさに「殉教者」の言葉と同様のものと受け取ることができるような気がします。

なお、「自らの○○への忠誠」という表現は、翻訳書などでもしばしば見かける表現で(思想や自尊心を入れて否定的な意味で使われることも多い)、欧米にはそれに対応する慣用句的表現が存在するのかもしれません。

>この人物を、山本は、韓国の人びとに紹介する義務を感じていたのではないかと思います。…

その通りだと思いますが、現在の韓国でその想いを受け取ることができるのは、おそらく70代以上の日本語世代に限られることになるのでしょうね。

>韓国の古典は漢文でしょうが、それをハングルだけにしたと言うことは、中国の呪縛から解放されたいと思ったからでしょうか。それにしても、漢字は日本のように残して漢字ハングル混じり文にする方が良かったような気がします。

「漢字ハングル混じり文」は『日帝残滓』ですから、日本の呪縛からも解放されたいと思ったのでしょう。北朝鮮でも、当然、漢字は廃止されていますし、ベトナムでも漢字を廃止し、フランスが残したベトナム語の発音記号を元にした文字を使っていると聞いています。
一知半解さんも紹介なさっている呉善花さんは、10歳頃にそれまで限定的に行なわれていた漢字教育が廃止になったと述べていましたから、60年代中頃に漢字教育が全面廃止になったということだと思います。したがって、現在の韓国では、50代以下の世代は、ほとんど漢字の読み書きができないということになります。一部では、漢字教育の復活を望む声もあるようですが、こうした状況では相当に困難でしょう。

また、本家である中国においても、現在は簡体字が主流になっており、30代以下の世代では、大学卒でも簡体字しか理解できない人が増えているそうですし、日本も戦後は新字体が広く普及し、旧字体が分からなくなっている人も増えているように思います。
私の経験からは、同じ漢字文化圏にあると思えたのは、繁体字を採用している臺(台)湾だけでした。

こうした点を見ても、漢字文化圏だとか「同文同種」などという幻想に基づいた『東アジア共同体』構想が、いかに空疎なものか理解できるのではないでしょうか。もっとも、それ以前に、倫理感や価値観があまりにも違い過ぎることが問題なのですが(このことは、上記のビジネス体験記等に如実に描かれています)。

>その歴史的観点が「自虐的」であってはダメだということですね。

そうではありません。

河野談話の問題点は、旧日本軍の強制性を証明する資料も根拠も無いにも拘わらず、あのような談話を出してしまった点にあります。

いわゆる従軍慰安婦問題は、もともと吉田清治なる詐話師の証言をもとにした朝日新聞の誤報がその発端ですが、それが韓国国内にも波及し、慰安婦と女子挺身隊との区別もつかない状況のまま、デマゴーグ等によって大騒動になったため、韓国政府から「日本側から何か声明を出して貰わないと収まりがつかない。そうすれば国内を抑えることができる」と要請され、あのような談話が出されたという経緯があります。

河野氏は直接戦後教育の影響を受けた自虐世代だから当然でしょうが、当時から私が最も問題だと思っていたのは、宮沢元首相のナイーブな対韓(対中)姿勢であり、それを念頭に、以前のコメントでは「歪んだパターナリズム」に基づく情緒的対応と批判したのです。

参考:河野・慰安婦談話と石原元官房副長官の証言
http://abirur.iza.ne.jp/blog/day/20060828/
※他にも資料は沢山あると思いますが、一例として。

>なお「従軍慰安婦」の問題については同意見ですが、村山談話については、私はおおむね妥当だと思っています。

村山談話は、河野談話と同等かそれ以上に問題があります。

なぜなら、村山談話は、政権に就いたために、日米安保と自衛隊を認めるという党の基本に関わる部分で譲歩を余儀なくされた旧社会党の党内や支持者の不満を逸らすために、抜き打ちだまし討ちで閣議決定されたものだからです。

内容についての賛否は様々でしょうが、かつてこのようなくだらない理由で、このような重大な歴史問題に関する談話を出した馬鹿な政府があったでしょうか。

参考:村山談話を破棄せよ!
http://hanausagi.iza.ne.jp/blog/entry/785637/
※当時の関係者の証言は見つけられませんでしたが(確かあったはずです)、一応参考として。

>だから私は小泉談話も支持しますし、靖国問題については中国の干渉には反対します。

小泉談話に関する私の評価は、やや否定的です。要するに、「場違いで必要なかった」のではないか、という気がするからです。

参考:村田良平元外務次官が村山談話の取り消しを求める――「無用の自虐行為」と
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/790287/
※私も、村山談話の評価の延長線上の問題として、小泉談話には、村田元外務次官と類似した感想を持ちました。

私は、以前から、小泉外交の良さというのは、結局は“反射神経”の問題だろうと考えていました。
国内で中国の内政干渉に関する反発が強まっていると感じれば、直ちに靖国参拝を断行する。9.11事件が起これば、即座に哀悼の意を表する。アメリカがイラク攻撃を宣言すれば、直ちに支持を表明する…

イラク戦争については、異論があるかもしれませんが、現状の日本では、どう考えてもアメリカを支持する以外に方法が無かった以上、いち早く支持を表明することは、むしろ日本の負担を減らすことに繋がったのではないでしょうか。
これは、ぐずぐずと対応を引き延ばした挙げ句、莫大な金を支払うことになった上に、国際的にほとんど評価されなかった、第一次イラク戦争時の対応を主導した某与党幹事長とは真逆のやり方です。

ただ、小泉氏の問題点は、国内問題の場合と同様に、中長期的なビジョンが無いところです。
また、小泉氏の対応が可能だったのは、国際的に漠然と「面倒な最前線に立つのは止めて、二番手で美味しいところだけを頂く」という日本の外交姿勢が(おそらく莫大なODA等と引き換えに)受け入れられる土壌があったからですが、現在では、もはやそうしたやり方が成り立たなくなっています。

最近、暫定とはいえ唐突に常任理事国入りという話が出てきたり、G7復活の話が出てきているのは、たぶん今後の経済動向を含む国際情勢の変化を睨んだ「中国外し」の動きの顕在化であるとともに、日本に対する主体的な行動要求であるという見方が出てきています。その場合、好むと好まざるとに関わらず、日本は最前線に立たざるを得なくなりますし、日本の国益に基づくビジョンを明確にする必要が生じるでしょう。

民主党に対応できるでしょうか? 言うだけ無駄かもしれませんが