教育委員会制度論改革論

教育委員会制度はどうなる2

2007年1月 1日 (月)

教育委員会制度改革のゆくえ(「宮事研」ホームページ過去ログです)

地方自治と学校経営(2005.7.9)

義務教育費国庫負担制度の存廃に関する議論にも出口が見えてきたようです。(出たとたんに大きな山が!ですが)中教審義務教育特別部会の第22回議事録には次のような意見が出ています。
「また、現場の学校や市町村から見ると、仮に国の権限を都道府県に移したとしても、縛る主体が国から都道府県に変わるだけならば、現場の裁量拡大という点では意味がない、むしろ、教育の主役である学校や市町村が具体的な権限と責任を持つことがで
きるように具体的な仕組みを検討すべきであるとの意見が出された。
○ 市町村の権限を大幅に拡充するための方策として、教職員人事権と給与負担を市町村に移譲する場合に、小規模自治体の状況を考慮し、人口50万人程度の広域連合による「教育機構」を地方に整備し、この教育機構が義務教育の受け皿となることを検討すべきである。ただし、具体的な制度設計をどうするかについて、引き続き検討する必要がある。」
このことについては、中核都市とそれに準ずる都市に権限委譲することや、小規模自治体の場合は広域連合で対応すること等が検討されているようですが、いずれにしろ、義務教育学校の経営管理主体は市(町村)であるということを実質的なものとすべく必要な権限委譲を行う方向で、問題の決着がはかられると思います。
その場合、市町村教育委員会の役割権能が見直されることは言うまでもありません。つまり、その経営体としての専門性や人事の流動性をどう確保するかが課題となります。
地方自治体の場合、サブカルチャーとしてのインフォーマルな「身内主義」が牢固としてありますからね。新しい学校経営体の制度設計に当たっては、この弊をどう克服して機能的・民主的かつ効率的な組織を作るか・・・。
教育界の最大の問題点は、専門職制の建前とこの「身内主義」が癒着している点にあります。これを打ち破るには、強力な政治力が不可欠です。昭和31年以来の「地教行法」体制の抜本的改革が必要だと思います。郵政に次ぐ改革課題だと思いますね。

「50万単位で広域連合」は地方の提案
先に、中教審義務教育特別部会の議論に「人口50万人程度の広域連合による「教育機構」を地方に整備し、この教育機構が義務教育の受け皿となることを検討すべきである。」という意見が出されていることを報告しましたが、私は、文科省側の提案かと思っていましたが、議事録(速報版第20回)を見てみると、これは、地方6団体側の提案のようで、次のようになっています。
「○地方が十分実施できるような体制と仕組みを考えるべき。県教委を廃止し、人口50万人単位で教育機構、広域連合を作ればよい。具体的なことについては今後地方で協議をする。その後、改めて御説明したい。
○人事権とともに給与負担を移譲した場合の場合分けとは別に、50万人単位の連合体が負担主体になるという案があるということか。
○そうである。
○50万人単位の機構については初めて聞いた。これは町村会の一致した意見か。それとも個人の考えか。どういう形で意思形成されたのか。
○一つの在り方を示しただけ。意を通じる者とは協議している。町村会は正副会長会、常任理事会、理事会、政調会での協議を経て意見の合意に至る。基本的なことについては、既に常任理事会の了解を得た。具体的なことはこれから検討する。
○地方六団体が本当に地方自治体を代表して意思決定しているのかが重要だ。正副会長会とか一部の上位下達のやり方ではいけない。地方六団体は国民に対して、義務教育についての意思決定のプロセスを明らかにするべき。手続きの透明性、公平性について町村会でも過去の経緯をまとめて公表してほしい。
○50万人の自治体連合という発言についての質疑を行っている。それぞれの町村の自治を返上するわけだから、それについての意思決定を問うのは当然である。50万人の自治体連合というアイディアには賛成だが、地方六団体の代表として発言しているのかは別問題である。

以上の議論を受けて第22回の議事速報では(2005.7.12)

「地方に移譲後どうするのかという質問があったが、現時点では移すかどうか審議中なので、基本的な方向を示す。小中学校の設置者である市町村が名実ともに主体となって義務教育を実施できる制度の構築を目指す。県費負担教職員制度の段階的な改正を行うべき。任命権をどうするか。給与負担は将来的には市町村が負担すべき。小さな市町村については、市町村の教育連合、機構を形成する。単独で任命、給与負担を担うのが困難であれば、共同実施する。人口50 万人程度が適当ではないか。こうしたことは検討の余地が十分あるが、最終的には市町村が実質的な義務教育の運営を行っていくべき。」
広域連合に統一的に学校経営権を移すという案に地方が賛成だとすると、当然文科省も乗ってくると思います。その場合、国庫負担は残って広域連合に下りることになります。地方の側の「思いつき」でなければいいのですが。

以下、8月5日の中教審の「義務教育特別部会」での中核市教育長連絡会の意見です。

(2) 国と地方、都道府県と市町村の関係・役割について
・ 教育の根幹をなす部分については、国として定め、その上で地方の裁量を拡大することが必要であります。学級編成、教職員配置など、地域の実情に応じた対応ができるようになれば教育の活性化につながると思います。
・ 教職員の人事権移譲については、まず中核市以上の都市への移譲を実施すべきと考えます。しかし、財源措置の裏付けがなければ、形だけの人事権の移譲に終わる心配もあり、国が責任を持って財源の確保をした上で、弾力的な運用が可能となる人事権移譲をすべきと考えます。
(3) 義務教育費に関わる財源措置の在り方について(2005.8.10)
・ 中核市教育長連絡会では、確実かつ安定的な財源の確保を目指し、先の総会(平成17年7月8日開催)において、義務教育費国庫負担金制度を堅持することを採択しました。この制度の基本的役割である義務教育の根幹(機会均等、水準確保、無償制)を国が責任を持って支える制度という観点で堅持を支持していますが、一方で、近年の国自体の負担割合の減少や、都道府県、市町村の負担増などに対する懸念もあります。義務教育の根幹を支える制度として一層の義務教育推進のため、財源保障の仕組みを確立し、確実かつ安定した財源が措置されることを強く希望します。
・ 公立学校施設整備費負担金・補助金について、義務教育諸学校の施設は基本的な教育条件であると考えます。近年では地域住民の避難場所としても重要視されてきています。子どもたちの生命・安全に直結するだけでなく、バリアフリー化、情報環境の充実、環境との共生など、施設整備を取り巻く様々な課題が山積されている中で、廃止または一般財源化すべきではないと考えます。特に、地震対策としての学校施設の耐震化は、一地方自治体の問題ではなく、国が積極的に関わっていく課題であると認識しております。国の緊急課題として早急に国主体で取り組んでいただくとともに、地方の自主性・裁量性を高めるための補助金改革を望みます。
市町村の場合は「全額国庫負担」という意見を出しているそうです。都道府県との意見のズレはどう調整するのでしょうか。