教育基本法改正問題について韓国の教育基本法
私は、教育基本法の基本的性格は、市川昭午先生も言われるように、「理念法」ではなく「施策法」とすべきだと思います。つまり、国民教育に国家が関与する場合の基本原則を定めるものであって、教育理念を高らかに謳いあげるものではない、地味なもので良いと思うのです。 その点、韓国の教育基本法は、その第1条において次のように規定しています。 つまり、あれだけ、儒教的道徳規範意識の強い国において、それを教育基本法に明記する必要を感じていないということです。このことに注目すべきです。つまり、その必要がないほど規範意識が国民一般に根付いているということで、逆に言えば、日本の場合は、脱宗教意識が徹底しすぎていて、無規範状態に陥りつつあるということかもしれません。 しかし、だからといってこれを、法律で決めて、守らなければ罰するぞということで外面的な強制力でもって教え込むことができるでしょうか。また、その弊害はないでしょうか。 実は、日本人は江戸時代にも似たようなことをやりました。それは、キリシタン弾圧の一方策として徳川幕府は日本人を強制的に仏教信者にし、戸籍登録という形で寺の檀家制度に組み入れたこと、「いわば宗教が政治の下請けをするという関係が生じたのである。太田錦城は(明和2年・1765年生まれ)は、『梧窓漫筆拾遺』という本の中でこの関係を次のように記している。 この事態が今日に及んでいることに慄然とするのは私だけでしょうか。 ところで、私は年来、我が国の教育改革の基本的視点として、「教育をする側と受ける側の権利義務関係を明確にすべき」と主張してきました。というのは、義務教育といえども、児童・生徒、保護者に権利だけがあるのではなく義務もあるのだということを、明確する必要があるのではないかということです。 この点、韓国の教育基本法は、「施策法」としての性格が明確であると同時に、教育を受ける側(学習者)の義務も次のように明記しています。 第12条 (学習者)学生を含んだ学習者の基本的人権は,学校教育又は社会教育の過程で尊重され,保護される。 |