教育改革の行方

教育再生会議の提言を検証する2

2007年2月10日 (土)

(3)すべての子供に規範意識を教え、社会人としての基本を徹底する

 ここでは、「道徳の時間」の確保と充実、高校での奉仕活動の必修化などが提言されています。これについては、前回のエントリー「山崎正和氏、次期「中教審」会長に内定」で紹介したとおり、道徳教育については、「国語教育や歴史教育の充実」を通して子どもたちの規範意識を育てていく外ないと思います。

 特に、歴史教育のあり方については、外国の視点でなく「比較的犯罪が少なく納税意識が高く、衛生や交通の秩序が守られている現在の日本」を維持・発展させていくという観点から、徹底した議論を積み重ねていくことが大切だと思います。福沢諭吉のいう「独立自尊」の精神に支えられた愛国こそが求められていると思います。

(4)あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てる

 ここでは、2割を社会の多様な分野から教員に採用することや、優れた教員の優遇、指導力不足教員の認定及び分限の厳格化が提言されています。
私のこの問題に対する意見は、「教員免許を国レベルの統一試験にする」ということです。(「私の教育再建策」参照)そのことによって、教員の質を高め一定水準以上に保つことができると同時に、その受験資格制限を撤廃することによって、社会人からも意欲有る人材を幅広く教師に登用することができます。

 現在の単位取得による免許制度では、その専門職としての能力保証が十分でなく、いきおい採用試験がそれに代わることとなり、それを突破しさえすれば、その後は専門職能の成長というより官僚制的なキャリヤアップを図ることが常識となります。その結果、県レベルの排他的かつ権威主義的な教員閥が形成される、これが問題なのです。

(5)保護者や地域の信頼に真に応える学校にする

 ここでは、「教育水準保障機関」による外部評価、副校長・主幹等の新設、民間人校長など管理職に外部の人材を登用が提言されています。
ここでの課題は、要するに、教育委員会レベルの学校経営権を確立するにはどうしたらいいかということです。これに手をつけないで、現行制度のままで文科省や外部機関による評価や統制を強化をしても、私は決して「保護者や地域の信頼に真に応える学校」を創ることにはならないと思います。このことは、そのまま次の課題につながります。

(6)教育委員会の在り方そのものを抜本的に問い直す

 ここでは、教委を住民・議会が検証する。教職員の人事権は市町村にできるだけ移譲する。5万人以下教育委員会の統廃合を行う、などが提言されています。
まず、教育委員会を地域の専門的学校経営機関にするにはどうしたらいいか、ということですが、私見では、まず、合議制の執行機関としての教育委員会の機能と、教育委員会事務局の機能を区別する必要があると思います。その上で、前者は執行機関ではなく教育行政の評価・審査機関とし、後者は教育長を中心とする専門的学校経営機関とするべきだと思います。

 そのためには、教育委員会の統合は不可欠です。現行の地方教育行政法でも広域連合による教育委員会が設置可能なのですから、思いきって5万人以上の人口規模の地域に統合し、そこに教職員の人事権や給与決定権を都道府県から委譲すべきです。ただし、現在の単位制免許制度のもとにおいては、採用試験における名簿登載、給料表の作成、服務基準の作成などは、県域の人事調整を可能にする観点から県レベルで行い、その後の採用、昇任昇格、転任や服務監督は地教委で行うこととするのです。

 また、専門的学校経営機関である教育委員会の監督者はだれかというと、それは、その自治体の長とし、その長が教育長をリクルートしてきて地域内の学校経営を任せる。その結果については、評価・審査機関である教育委員会(スクールボード)の意見を参考に長が判断する。

 また、教育予算は当然議会の承認を必要としますが、学校予算の執行はできるだけ学校の裁量に任せる。なを、地域住民の教育に関する民意は、議会及び評価・審査機関である教育委員会を通じて自治体の教育経営に反映されることになります。

 こうした改革に手を付けるのかどうかということが、教育再生会議の今後を占う試金石になると思います。これをやらないで教育委員会の無力をあげつらい、それを根拠に中央統制を強化するなど、まさに「いいがかり行政」という外ありません。

 なぜなら、教育委員会の地域の学校経営機関としての権能をほとんど換骨奪胎したままで、つまり、市町村教育委員会から教職員人事権や給与決定権を奪ったままで、その経営改善努力を期待するなど、できるはずがないからです。

(7)社会総がかりで子供の教育にあたる

 ここでは、提言されている「早寝・早起き・朝ご飯運動」は、蔭山英男氏らの自由で地道な教育実践の中から生み出されてきたもので、これは日本の伝統的教育法を継承するものといえます。ただし、これはあくまで教師や保護者による自主的な取り組みとして推進していくべきだと思います。朝の読書もいいですよね。

 次の、「経済的・時間的に子育て困難家庭への支援」については、私も大変いいことだと思います。老人のケアーだけでなく、こうした厳しい環境におかれた子どもに対する専門的ケアーは必要だと思います。私自身、母や姉の介護で、福祉施設の職員の皆さんに親身なお世話をいただき、心から感謝しています。

 次の、「社会総がかりで子供の教育にあたる」というのは、教育の問題を社会全体で共有するということであって、自分を正義と見立てて他を非難することではないと思います。「美しい日本」とはまず、自分自身を厳しく問う言葉であって欲しいと思います。