教育改革の行方

教育再生会議の提言を検証する1

2007年2月 9日 (金)

 去る1月24日、内閣に設置された教育再生会議の第1次報告「教育再生のための当面の取り組み」(『七つの提言と五つの緊急対応』)」が同会議総会で決定されました。新聞報道によると、安部首相も「今やるべきことを網羅している。ベストの案をいただいた。そういう意味では、100点だ」と、満足げな表情を浮かべたといいます。 

 また、首相は当総会で、「教育再生は待ったなしだ。第1次報告の実現に向けて内閣を挙げて取り組んでいきたい」と強調し、提言を実行に移すために、教員免許法改正案(免許更新制度導入)、学校教育法改正案(ゆとり教育見直し)、地方教育行政法改正案(教育委員会制度改正)の3法案を25日召集の通常国会に提出、成立を目指す考えを表明しました。

 こうして、今国会において、これら3法案が審議されることになったわけですが、これらの法案化をめぐって、今後、以上紹介した政府の教育再生会議(有識者17名、座長野依良治)と、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会(第4期、30名の委員を任命、会長山崎正和)が、教育改革の方向性をめぐって激しいつばぜりあいを演じることになるのではないかと思います。

 ここにおける議論の焦点は、いうまでもなく、私は「教育委員会制度のあり方」だろうと思います。再生会議からは、地方教育行政法改正案に文科相の教委に対する是正指示(勧告)権を盛り込むことなど、小泉内閣下において進められてきた「地方分権」の流れに逆行する意見も出ています。びっくり!だって、文科省の教育委員会に対する「措置要求権」は、地方分権一括法によって99年に廃止されたばかりですから。

 早速、今回の教育基本法改正の効果が現れたか、といった想いがよぎりますが、ともあれ、24日に発表された教育再生会議の第1次報告の提言内容を、この地方分権という観点から検証してみたいと思います。

(1)ゆとり教育を見直し、学力を向上する

 ここでは、授業時間の10%増、土曜スクールの実施、習熟度別指導の充実、地域の実情に留意のうえ学校選択制の導入、などが提言されています。こうした、ゆとり教育の問題点については、市川昭午氏がつとに指摘してきたところであり、その結末も、そこで予測された通りです。(本ブログ「総合的学習のゆくえ」参照

 それにしても、授業時間の10%増については、総合的学習や選択学習の見直しで何とかなるとしても、土曜スクールの予算措置はどうするのでしょうか。教員の時間外勤務は、近年、次々に押し寄せる教育課題のため増える一方ですが、教員の場合は、労働基準法37条が適用除外されているので実績にもとづく時間外勤務手当は支給されないのです。こうした新たな施策に伴う定数改善や時間外勤務に対する手当等、必要な予算措置は確保されるのでしょうか。

(2)学校を再生し、安心して学べる規律ある教室にする

 ここでは、出席停止制度の活用、反社会的行動を繰り返す子供に毅然たる指導などが挙げられていますが、これも、「ゆとり教育」に関わって主張された「個性主義による学校教育改革の帰結」といえる一面があることは否定できません。従って、ここでは、論語にいう「教えなければ禽獣に近し」という教育の原点に立ち返ることが必要です。

 それにしても、「いじめ問題」をめぐって、政府が教育委員会の責任を「一方的に」追及する姿勢を示しているのは、政略とはいえ滑稽さを通り越していきどおりを感じざるを得ません。このことに関し市川昭午氏は次のように言っています。

 「いじめ問題については、それを根絶できると考えるより、むしろ、いじめをしのぐ教育、単純ないじめに耐えられる教育も大切である。一方、犯罪行為に等しいいじめや暴力には厳正に対処することが必要である。そのためには、いじめに対処する具体的な基準を行政当局が作成し専門の職員を配置して対応したり、これらの問題に専門的に対処する教育機関を設置することなどが必要である。要するに『社会で許されないことは子供にも許されない』という規範意識を持たせることが大切である。」(『未来形の教育』市川昭午) 

 また、私見としては、義務教育をめぐるこうした問題点を抜本的に解決するためには、義務教育といえども、「教育をする側」と「教育を受ける側」の権利義務関係を明確にしておくことが必要だと思います。その意味で、「地域の実情に留意のうえ学校選択制の導入」ということも意味を持ってくると思います。(つづく)