教育委員会制度と学校事務

「教育委員会制もう一つの攻防」補説 -小川正人氏の疑問に答えて- 

小川氏の疑問について

 本誌1月号に、小川正人氏が「学校事務論を考える」と題して、私が「教育委員会制もう一つの攻防」(『学校事務』1995.5~6月号)において論じたいくつかの論点について疑問を呈しておられるので、この機会に、先の私の論文に対する補説もかねて、氏の疑問にお答えしておきたい。ともあれ、小川氏には、研究者でもない私の論文について、教育行財政学の専門的見地から真摯な論評をいただいたことについて、心からのお礼を申し上げておきたい。 個々の疑問点に対する私の見解については後の機会に論ずることとして、まず、小川氏の主張の基本的な部分についての私の意見を申し述べておきたい。 氏の、私の意見に対する反論のポイントは、地域における学校経営機能の強化という課題について、「教育委員会事務局の教育行政職員の『専門職』化の確保という方向ではなく、むしろ、政策決定・執行単位としての学校の権限を強めて学校教職員の『専門職』スタップとしての活力を引き出し、学校-教職員の実践に対する地域・親のアカウンタヒビリティ(教育責任)の確立という方向で進める方が適切ではないだろうか」という点にある。

 それと同時に、今後の教育行政と一般行政の関係のあり方について、私の「論法」を、「教育行政専門職の確立=教育委員会の『独立』と権限の強化=教育行政専門事務職員の確保」という流れにおいて整理した上で、今日の「地方の行政が特別に教育委員会事務局職員の教育行政『専門職員』化を要請しているようには思われない」とし、むしろ、そうした教育行政の質や機能は、「地方行政の総合化=総合的政策立案能力の向上」の中でこそ高まっていくのではないか、との見通しを述べている点にある。

 そして結論として、学校組織を、行政・官僚制組織(行政→学校という階層的秩序)とは異った、教職員相互の実践的見識によって「ゆるやかに結合された」組織ととらえた上で、「学校事務職員を行政職員ないし教育行政職員ととらえて、教育委員会事務局と学校を同列の任用、人事交流の場ととらえ、学校経営機能を一元的に教育委員会事務局に掌握していこうとする改革構想には、慎重にならざるを得ない」としめくくっている。